魔神 ガイター ②
「なんで僕がやきもち焼くんですか!別に男でも女でもいいですけど、その友達ってどこのどなたなんですか」
「魔神ガイター」
「・・・」
ま・・魔神ガイター?
なんかうわさで聞いたことがある。なん百年か前にどこかの国を一人で壊滅させ、それ以降は今もどこかにこもっているって話だったような。まさかそれか?
「そう、たぶんいま、ライス君が思ってる人よ」
手のひらを合わせ、ニコッと微笑むファンさん。
「無理、無理、無理、無理、無理ですっ!」
「え~、どうして?悪い人じゃないわよ、ちょっと乱暴なところもあるけど」
あのね、暗黒魔女にはちょっとかもしれないけど、僕はか弱い正常な人間です!魔神の乱暴なんて火山が噴火するより怖いじゃないですかー!
思いっきり言葉にしたいのをグッとこらえ、
「あの~、ほんと無理ですよ、今回はぜひお二人で旧交を温めていただいてですね・・」
「マリュフ食べてみたくない?」
僕の言葉をさえぎり、いきなりの提案をかけられる。
マリュフっていうのはキノコの一種で、伝説の食べ物と言われている。このうえない極上の味がするというが、実際のところ実在した記録はない。
「ははは、マリュフですか。あんなものウソですよ。あくまでも伝説であって、誰かが実際に食べたって話は皆無ですもん」
「わたしは食べたことあるわよ」
「!!!」
「ガイターにね、2回マリュフをもらったわ。なんでも地下10mくらいのところに育つキノコで、深すぎて匂いではわからないし、やみくもに掘っても絶対とれないらしいの。彼に言わせるとね、マリュフとりってコツがあるらしいのね」
「あの~・・美味しかったですか?」
「もちろん!芳醇な香り、この上ない旨味、あれこそ極みって感じね」
くそ~、そんな恍惚に身を任せたような表情させて!僕も一度でいいから食してみたい!調理人の悲しい性!
「あ、あのですね・・」
「うん、大丈夫よライス君。一緒に行ってくれたら、マリュフをとってくれるよう、わたしガイターに頼んであげるから!」
またも僕の声をさえぎるファンさん。うれしそうに僕のうでをつかみ、じゃ、行きましょっとテンション高めでカフェを出る。
もういい、どうにでもなれだ。幻のマリュフを心に抱き、しぶしぶ歩くのであった。