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泣いた赤い鬼 ⑦

「赤鬼さん、フイラの根を持ってきてくれたおかげで、処置が迅速にできました。どうも有難う、彼女も持ちこたえそうです」

 と僕は、一緒になって様子を見ていた鬼に礼を言うと、

「そうか、ならよかった。では仕切りなおしで」

 と、ガイターさんに告げ、二人は障害物のない草地へと移動した。

 鬼の真意は分からないけれど、なぜにこんな親切な対応をしてくれたのだろうか。最初に、なんだとーと声を荒げて向かってきたのとは、正に別人だ。

 

 さて、草原にてじっとお互いをにらみ、いつ勝負がはじまってもおかしくない二人。

 そんな状況下でファンさんがガイターさんにむかい叫ぶ。

「ガイター!少しこっちを向いて。いま、一時的だけど、パワーが向上する魔法をかけるわ!」

 その声に、ガイターさんが振り向き、魔法をかけようするファンさんを制した。

「ファン、気持ちはありがてぇが、その魔法はいらねえだ。ここはオラの力だけで、やらしてけろ!」

「でも、あなた、ここに来るまでに能力を使っているで・・」

 食い下がったファンさんのその言葉に、ガイターさんが怒ったような声をあげた。

「しつこくするでねえ!これは男と男の勝負だ!」

「・・・」

「オラも弱くはねえだで、黙って見てるだ。それに、心配するでねえ、この鬼はいいやつみてえだ。仮にオラが負けたとしても、おめ達に悪さしねえべ」

 そう言葉を残すと、ガイターさんは鬼のほうに振り向き戻る。ファンさんは一瞬悲しそうな表情を見せたが、その顔を払しょくし、勝負を見届けるべく二人をじっと見つめた。


「またせただな、んでは、始めるべ」

「おぬしの名はガイターというのか。魔神ガイター、覚えておこう」

 二人の間に、これは闘気というのだろうか、すさまじい威圧を持つなにかが流れ、渦巻いている。

 お互い徐々に腰を下げ、右手をググっと握りしてた。

「そやーーー!」

 赤鬼が先制の一撃を放つ。

 その一撃のパンチは、バゴン!という鈍い音をたて、ガイターさんのほほを確実にとらえた。

 パンチの勢いでガイターさんの顔は横を向いたが、ぐらつく様子もなく、その攻撃に応じるかのごとく「うおーーー!」と咆哮し、反撃のパンチを繰り出す。

 その拳は、お返しとばかり、ズシンと音を響かせ鬼のホホに命中し、そのまま顔を横にむかせた。

 まるでハンマーで殴り合っているような、すさまじい攻防だ。だが、鬼のほうも、ぐらつく様子はない。

「このような一撃、はじめて喰ろうたわ。心が躍るようじゃ」

「オラもだ、なんかワクワクするだ」

 両者とも、口のはしから血が流れているが、そんなことは微塵も気にせず、互いにニヤッと笑っているのだった。


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