表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/117

泣いた赤い鬼 ⑥

 二人の大男が対峙している間に、僕はこそッとファンさんの元に行き抱き起こした。

「大丈夫ですか?」

 鬼に気付かれないように、できるだけ小声で話す。

「ええ、なんとか」

 ファンさんは、けがをしている様子はないが、うしろ手の状態で、植物のツルのようなもので胸の周りを縛られているので、立って歩くのは危ない。

「ファンさん、ちょっと移動しますので、少し我慢してください」

 と断ってから抱きかかえ、大木の陰のほうへ避難する。その場所にはハンモックに包まれているペーリーさんがいる。早くフイラの根で処置してあげなくては。

 とにかく、この位置から勝負を見ることにした。


「おぬしには恨みもないが、どうにも心に火がついて止まらぬわ。これも運じゃ!尋常に勝負を願いたもうぞ」

 と、ガイターさんより頭一つ分大きい鬼が、勝負の口上を述べる。

「オラ難しいことは分かんねけど、ケンカってことでいいだな?久々に腕がなるっていいてえとこだが、ちょっと済ましておきてえことがあるだ」

「ほう、なんだ、言ってみるがよい」

 鬼の言葉に、ガイターさんはここに来た理由を簡潔に鬼に話した。

 その理由を聞き終えた鬼は、

「なぜ、そのことを早く言わん!この馬鹿者が!」

 と怒り出し、ドスドスと僕のほうに歩いてくる。

「これ、そこの小僧、ワシの家にはフイラの根を砕いたものがしまってある。今からとって来るから、その間にその魔女のツタを切りおとしておくがよい」

 と言い、小型の包丁を僕の前に置いた。

 そして、しっかりしろと言わんばかりに僕の肩をポンポンと叩くと、家のほうに向かった。

 実は、鬼が僕の肩に触ったときに、僕の能力である「心の味」が発動していた。ああ、この鬼は、これが心に刻まれているのか。

 だが、今はそのことに触れているときではない。

 僕は、鬼が置いた包丁を使い、ファンさんにまとわるツタを切断し、いましめを解いていく。

 家に行った鬼は、植物の粉のようなものを器に入れて戻って来た。その粉の匂いをファンさんがかぐと、

「ええ、これで間違えないわ」

 と、太鼓判が押されたので、その器に、持って来た米酒を注いでしぼり、薬草液が出来上がった。

 僕とファンさんとで、横になっているペーリーさんの口を開いて、薬草液を流し込む。ケホケホっとむせたペーリーさんではあったが、とりあえず処置はできたようだ。

 ペーリーさんがよく休めるように、今まで包んでいたハンモックのひもを周囲の木の枝にかけ、本来のハンモック使いかたで、ペーリーさんをそこに寝かせた。

 若干、苦しさの険しい表情が消え、クークーと寝息をたてて寝ている。たぶん、これなら大丈夫だろう。

 その場にほっとした空気が流れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ