魔神 ガイター ①
とうとうアリーダ王国の首都に着いた。
街並みの造りが僕の故郷のマクレチス国とは全く違う。通りには石造りの建物が立ち並び、カラフルな塗装が美しく施されている。
やはり首都だけあって、かなり栄えている。往来をする人達の表情は皆楽しそうで、僕まで心が高揚するようだ。
ほんとなら、使節団員としての入国だったんだろうが、今は忍びの身だ。あまり目立つわけにはいかない。終始、旅の者としてふるまわねば。
それにもかかわらず人々から視線をあびるのは、僕のとなりをファンさんが歩いているからだ。
魔女特有のオーラは消えていないものの、様相を変えているためそれが魔女のオーラと気付く者はおらず、逆にそれが怪しい雰囲気をかもしだし、外見の目を見張る美しさと相まって、どうしても人の目をひいてしまう。心配していたとおりだ。
「ファンさん、ちょっとそこの店でお茶しましょ!」
あまりにも、ジロジロと見られるので、避難の意味もあって強引に近くにあったカフェに入る。
コーヒーを注文し、それをひと口をすすると、やっと会話する余裕ができた。
「いや~、びっくりしました。すごいですね、注目あびてまるで舞台女優みたいですね」
「見た目にひかれるなんて意味のないことよ、中身が大事なの、ね、ライス君」
「あ、ああ、そうですね、そんなもんですかね」
「それよりライス君にちょっとお願いがあるの、言っていい?」
突然、神妙な顔をしたファンさんが、目をウルっとさせて訴えてくる。
「は、はい、怖いことはなしですよ・・」
「そんなビクビクしないで。お願いって言うのはね、この首都から北の方角に10kmくらい行ったところに神殿があってね、一緒に行ってもらいたいのよ」
「し、神殿ですか・・?えっと、なにをしに?」
「そこに友達がいてね、合いに行こうと思うの」
「え?友達なら遠慮なく会ってらしたらいいんじゃないですか」
「ちょっと以前にいろいろあってね。で、ライス君にあいだに入ってほしくて」
え~、なんかイヤな予感がする。
「あの~、その友達って・・?」
「男の人。友達だからヤキモチやかないでね」
思わず椅子からずりおちそうになった。