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泣いた赤い鬼 ③

 ガイターさんがフーっと息を吐き出すと、巨人の姿だったものが元の身長へと戻っていく。

 とはいえ、元々が2mくらいの身長なので、どちらにしても僕から見たら巨人には違いはないのだが。

 ガイターさんの腕の中にいるペーリーさんの顔色の青白さが増している。よくない兆候だ。先を急がなければ。

 その集落の住宅は、すべて木造で、一本の砂利道の両側に並ぶように建てられているが、どの家も老朽が激しく、今にも崩れてしまうのではないかと思われるありさまだ。

 家屋は全て雑草の手入れがされておらず、最初は無人になった集落なのかと思ったが、砂利道の草は、明らかに踏まれた形跡があり、往来している人物がいることを物語っている。

 とにかく用があるのは先のほうに見えるアカギの群生地。不気味な集落の道を、なん歩か進んだときだった。

 通りの最初の家の戸がバタッと開けられ、ボロボロの服を着た、一人の中年の男が出て来た。手には木の棒を持っている。

 警戒心を持っているのか、こちらを見る目が異常に鋭さを帯びているような気がする。

「こんにちは、僕たちこの先にちょっと用がありま・・」

 かるく挨拶をするつもりで話しかけたのだが、その男は僕が話し終える前に、手に持っていた棒を、自宅の壁にガンガンと打ちつけ、大きな音を鳴らした。

 その音が合図であったのだろうか、先の家々から、続々と人が出てきてこちらを覗いている。

 こういうことを言うと失礼かもしれないが、どの人たちも身なりが汚い。山奥にある村なので、あまり収入もなく貧しいのかなと考えた。

 こういった様相が人のうわさになって、呪われた村なんて名付けられてしまったのだろうか?

 ただ、ここの人たちの存在を、他の村の人たちは知らないようだし、ここの人たちも、ここに来るまでの道が荒れ放題になっていることから、他の村に行っていないことは、想像に難くない。

 とにかくも、僕たちが進もうとすると、その村の者たちはゾロゾロと家を出てきて、僕たちの前に立ちふさがった。

 その有り様は異様であった。身なりはともかくとしても、人々の表情が普通ではなかった。

 みんな血走ったような目で僕らを見てくる。怒りの表情で睨みつけてくる者、薄ら笑いを浮かべる者、呆けた顔でよだれを流す者、それは様々であるが、どうにもまともでないように思われる。

 その中で、比較的前方にいた中年の女が、これまた中年の男の耳に手を当て、ヒソヒソとなにか話しをしているのが見えた。

 そこで、うんうんと、うなずいていた男のほうが、僕らのほうに歩を進めてきて、目の前で立ち止まった。

「そこの、デカい人、あんただよ、あんた」

 その男はガイターさんを指さして話しかける。

「あんたに頼みてえことがある。あんた鬼を退治できるかい?」

 と、唐突に鬼退治を依頼してきた。


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