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泣いた赤い鬼 ②

 だが、僕たちには選択肢などない。そこに呪われた村があろうがなかろうが、フイラの根を絶対に見つけなければならない。

 それに、ファンさんとガイターさんの二人がいる。この二人がいれば百人力どころか千人力だ!

 さて、アカギの樹木が生えている山頂までは、4時間はかかりそうであるが、ガイターさんが1時間で皆をつれていくという。

 ガイターさんの指示で、馬車の中からハンモック3張を取り出した。


「うおーーー!」

 

 遠くまで聞こえそうな野太い雄たけびをあげたガイターさん。体中の筋肉が膨れ上がり、その体は二回りほど巨大化した。推定5~6mの巨人だ。

 真の魔神の姿を現したガイターさんは、置いておいたハンモック3張を自分の首にかけ、そのうちの一つにペーリーさんを、そっとしまい込む様に入れた。

「さあ、ファン、ライスっち、ハンモックに入るだ!この姿はそんな長時間もたねえだ」

 僕は急いで馬車に行き、フイラの根をするオロシ金と、それをとかして飲むための米酒を入れた竹筒を布袋にしまい、腰に結わえ付け、あわててガイターさんのところへ戻り、空いているハンモックに潜り込む。

 呪われた村という言葉が気になったのだろう、ファンさんは、黒い魔女の服と、とがり帽という出で立ちに着替えている。

「じゃ、立ち上がるど」

 むくりと身を起こすガイターさん。3張のハンモックが吊り上げられていく。 

 ハンモックから首を出してみると、結構な高さがあって、まるで展望台のようだ。

「走ると酔うべから、早歩きで行くだ」

 ズンズンズンっと地響きを立て進む巨人。

 首に下がったハンモックに入っている僕たちを、腕をまわして押さえてくれているので比較的揺れは少ないが、木の梢あたりの位置を進む恐怖心は相当のものがある。

 ガイターさんはやみくもに歩いているわけではない。

 山のほうに続いている、樹木のない道のような場所を進んでいる。そこは草が伸びきって、道としての様相は呈していないが、あきらかに過去に道があったことは見た目から明白だ。

 やはり、あの村人が言ったとおり、この先にはなんらかの集落とかはあったのだろう。

 それにしても移動が早い。ガイターさんが1時間程度で到着すると言っていたのもうなずける。

 それなりに時間が経過すると、だんだんと傾斜が厳しくなってくる。「近道するだ」と、たまに、崖を登ったりしているが、崩落したら命がないなとハンモックの中で身をすくめる。

 そんな状況がしばらく続いたが、突然動きが止まった。

「このあたりがそうだべ」

 ガイターさんがそう言うのが聞こえると同時に、ハンモックに入っている僕たちはゆっくりと降ろされる。

 そこで僕たちが目にしたものは、ゆるやかな斜面に、20戸ほどの古い家が集まっている集落と、その先に見えるアカギの樹木の群生地であった。


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