表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/117

暗黒魔女 ファン・エレート ⑤

 草原を抜けると小さな町が現れた。

 ここでファンさんとお別れできるかな~と淡い期待をしていたが、

「あら、ライス君ったら!か弱い女性をこんな場所に置いてきぼりにする気なの!」

 と、突っ込みどころ満載の言葉を吐かれた。

 同行を断る勇気もなく、もう流れにまかせることにするしかない。

 町の人に聞くと、アリーダ王国の首都はそれほど遠い場所ではないとのことなので、一気に首都まで行くことにした。

 その前にやることが二つ。

 まず、ファンさんに服装を変えてもらうことにした。ファンさんの装いでは、あからさまに魔女だと分かってしまう。少しだけでもごまかさねば。

 僕は町の洋服屋で、白地に赤い花柄のワンピースと女性用の麦わら帽子、かわいらしくて歩きやすそうな靴を買い、ファンさんの元へ持っていく。

「どうしても着替えなくちゃだめ?」

 小首をかしげ、甘えたような声をだしたがこれは譲れない。

「お願いしますよ!そのままだと正体がすぐ分かって大騒ぎになりますよ~」

「そう、ライス君がどうしてもって言うなら着替えるわ」

 ふ~、わかってくれたか・・って、

「わーー!ファンさん!ここで服を脱がないでください!人目につかないとこで着替えてー!」

 僕の目の前で黒いドレスをまくしあげ、白くて細い胴が見えているファンさんを必死に制した。

「もう、注文が多いのね」

 そうポソっと言うと、ひと気のない木陰のほうへ行くファンさん。

 あ~つかれる・・

 着替えて戻ってきたらきたで、

「胸の周りが少しだけキツいのだけど、わたしそんな無いように見える?」

 なんてことを言う。

「すいません、すいません、女性の服なんか買うのはじめてでよくわかりません!」

「いいのよ、そんな赤くならなくて。ライス君のプレゼント、大切に着るわね」

 はぁ、もうかんべんして。でも、ファンさん元々美形なのが服と相まって、女優みたいな雰囲気だ。別な意味で目立っちゃいそうだ。

 まあ、いいか。気をとりなおし、次の作業だ。

 次は、荷車の食材を軽くすることにした。そもそも30人分の食糧を積んだ荷車だ。僕たち2人だけでの消費なので、まだまだ大量に食材が残っている。

 僕は残りの食材で軽食を作り、人の往来が盛んな通りを見つけ、そこで売ることにした。

 ファンさんが、「通行中のみなさん!安くておいしい軽食がありますわよ、よかったらお買い求めください」と呼び込みをしてくれた。

 その効果は絶大で、男どもの群れが僕たちをとりかこみ、あっという間に売り切ってしまった。

 これで身軽になったし、いよいよ出発して首都をめざそうと思う。

「ファンさん、おかげさまで、食材を売り切ることができました。アリーダ王国の首都に行ったら、このお金で一緒に食事をしましょう!」

「そうね、楽しみにしてる」

 ファンさんはニコリと笑みを浮かべた。

 暗黒魔女ファン・エレートか。最初はよくよく怖かったけど、少しは慣れてきたような気がする。町での夕暮れ、ちょっとだけそう思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ