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新たな旅へ

 この大陸の東にあるミスーレ帝国。僕たちはその国に向かうべく旅をはじめた。

 旅の一日目の夜、今夜は周囲に自然しかないため野宿である。

 林のそばの河原に幌馬車を止め、たき火をおこして簡易なテーブルを設置し、皆で夕げをいただく。

「うわー、なにこれ!見た目もきれいだし、味もビックリするほどおいしい!ライスさんってシェフみたい!」

「はは、シェフやってるって前に言いましたよ」

 ペーリーさんは、僕が作った夕食を子供がぱくつくように食べている。

 いま、子供がぱくつくようにと言ったけど、実はペーリーさんは僕より年上であることがわかった。僕が16歳になったばかりで、彼女は22歳、一回りお姉さんだ。あまりにも見た目が若すぎるのでとてもそうは思えないのだが。

 この旅では僕の意見でもあるのだが、必要以外は私服にしてほしいと言ってあったので、ファンさんは水色のワンピースを着ており、それにならってペーリーさんも、エリなしのシャツにサスペンダーのついた作業ズボンを身につけている。

 ペーリーさんを仲間に入れるのに、どうして僕に託したのかファンさんにこそっと聞いたら、

「ライス君、ごめんなさい。あのペーリーって子、なにか魂胆があるのかと思ったら、純粋に恋してるものだから・・わたしも昔そんな時期があったから、そういうの見てると弱くて・・」

 と、うれいを帯びた目で言われてしまった。

 僕は、以前ガイターさんに、ファンさんは昔、結婚していたことがあるって聞いていたから、そのことを思い出しているのだろうなと解し、なにも言えなくなってしまった。

 さて、話をもどそう。

 マヒワリ国まで、わざわざマリュフ採りに来た僕たちは、今後どうしようかと話し合った。

 なんかここまで遠くに来ると、故郷に帰ることよりも、いろいろな外国をめぐって、その地域の料理を学ぶことが楽しくなってきている。

 実際、マヒワリ国では、他国にないスパイスがいっぱいあったので、それらを買い込んで勉強中だ。

 そして、僕たちが目指すミスーレ帝国。実はその国に行きたいと言ったのは意外にも僕なのだ。

 そもそも、ミスーレ帝国は、ペーリーさんが聖護院の騎士団から逃げ行くゆえの目的地にしていたところだったのだが、僕はその国の名を知っていた。そして、会いたい人がその国にいるのだ。

 僕が故郷でシェフの見習いをしていたときのことだが、勤めていたホテルの厨房で、一人で魚の切り方を訓練していると、そこに中年のおじさんが入ってきた。

そのおじさんは、僕が切った魚の切り身を手でもって眺めると、そのほかに、僕がつくっておいた寸胴のスープを試飲した。

「ほう、ぼうず。おまえはまだ10歳くらいに見えるが、あきらかに天賦の才が見える。わしがその才に花を添えてやろう」

 と言って、一本の包丁をくれた。

 その刀身が黒光りする包丁は、今でもメインで使っているが、数年使った今でも刃こぼれがなく、鋭い切れ味を保っている。

 その包丁をくれた人物は、国際交流事業で僕の住む国に来ていた、ミスーレ帝国の帝国第一ホテル総料理長、ブレッド氏だった。

 数年も前のことなので、記憶の引き出しにしまいかけた出来事だったが、ペーリーさんからミスーレ帝国の名が出たときに、当時のことが思い出され、ここまで来たのだから会いに行ってみたいというと、面白そうだから皆ついていくとなった次第だ。


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