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闇の魔導士 ペーリー・カーン ④

「あたしは元々は、聖護院の聖職者として法力を行使する立場の人間で、勇者の率いるパーティに参加し、悪い魔物の退治を専門としていました」

 先ほどの騒ぎが落ち着いたので、ファンさんが事情を話してみてとペーリーさんに促し、それに従い彼女は語り出した。

「自分で言うのもなんですが、あたしたちの名は世間に広がり、魔物退治にいとまがないほど多忙を極めたのです」

「あるとき、国家の威信をかけていたという魔王征伐の依頼を受けました。ところが、魔王の居城に潜入したさなか、リーダーである勇者があたし達を裏切ったのです。必死で逃げたあたしは幸運にも無事でしたが、魔法使いと戦士はその後、ようとして消息がわかりません。たぶんもう・・」

 そう語る彼女は、つらそうにうつむいた。

 その様子を見たファンさんは、無理に話さなくてもいいわよと言ったが、ペーリーさんは、いえ、どうか最後まで聞いて下さいと応えた。

「その魔王退治の失敗という醜態により、あたしは聖職者の任を解かれ、聖護院を追い出されたのです」

「どうしてという憤りと、こんなものかという空しさで自暴自棄となり、あたしは悪の組織、闇の女神に入信し、法力をベースとした呪法術を創り上げ、魔に傾倒していったのです」

「魔の世界を学ぶ段で、ガイターさまとファンおねえさま、お二人の名はそこで覚えました。お二人ともその世界では無二の存在で、敬服の対象だったのです」

「あたしは努力のかいあって、闇の王の啓示を受けることとなり、闇の魔導士として名が知られることとなりました。ただ、闇の女神という組織は、聖護院の騎兵によって壊滅へと追いやられ、あたしは逃げる毎日を過ごしていました」

「逃げるあたしは、この大陸の東にあるミスーレ帝国を目指している途中でしたが、今日、奇跡がおきたという訳なんです」 

 ペーリーさんは、ここまで話すと、顔を上げニコッと笑った。

「奇跡?」

 首をかしげ、ファンさんが聞き返す。

「そう、奇跡です。その、一目ぼれというやつで、あたしの生まれたままの姿を見た人物に心を奪われてしまったのです。さらに、その人物の名を聞いたら、なんとあの偉大な魔神ガイターだっていうじゃありませんか。これを奇跡といわず、なんとよべばいいのでしょう」

 どうもそこのところが僕には理解できないが、恋の形は人それぞれだから、あえて言うまい。

「もうこうなったら、なりふり構わずです!ガイターさまと一緒にいたいんです!あたしは魔の世界に足を踏み入れるとき、愛欲に溺れるというのも魔の世界の一環だと言われましたが、それは絶対に拒否してきました。でも、ガイターさまとだったら溺れてもいいんです。魔の世界で名をはせたファンおねえさまなら、きっと愛欲に溺れまくっているでしょうからこの気持ち分かりますよね?」

 かわいい顔をして、えげつないことを言う闇の魔導士に対し、

「そんなの分かりません!人を、いん乱みたいに言わないでくれる!?」

 と、恥ずかしそうに顔を赤らめるファンさんがいたのであった。


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