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特別な能力 ①

 明日にはマヒワリ国へ着くだろう。

 ちょっと規模は小さいが、きれいな宿場町にたどりついたところだ。2日間野宿が続いたので、相談の結果、今日はバスルームがある宿に泊まることにした。

 前から思っていたのだけれど、自分はちょっと人とは違う能力があることが、最近になって特に顕在化してきた。

 マクレチス国にいたときも、人から絶対味覚を持つシェフなどと言われ、基本の味が分かれば、どんな組み合わせや調理をしても、頭に描く味どおりになっている。だから味見というものを一切しないといのは皆が知っている事実だ。

 だけど、そのようなことは物理的に説明できること。

 このこととは別に感じていたことがあった。

 それは、漠然とした感覚なのだが、人の味の好みが分かるのだ。

 どう説明したらいいのか分からないが、ずっと感覚としてはあったので、それが普通だと思っていた。

 対象となる人をじっと見つめているとその人の好みの味が伝わってくる。

 勤めていたレストランでは、同じメニューであっても甘くしたり、しょっぱくしたり、はたまた辛みを強くしたり、人によって少し味付けを変えていた。

 だから、他のシェフが誰に対しても同じ味で料理を出しているのを見て、なぜこんな横着をしているのだろうと思った。

 でも、ある程度料理人をやっていると、それは特別なことと気付く。ああ、これはなにか得体の知れない能力なんだなと。

 ところが、最近になってある異変に気がついた。

 それは、対象となる人を意識してさわると、頭の中にその人の心に残っている料理が残像のように頭の中に浮かぶのだ。

 このことに関しては、以前は絶対になかった能力だ。

 よく分からないが、魔の能力をもつ2人と同行するうちに、僕の能力が感化向上したなどと思うのは考えすぎであろうか。

 実はファンさんやガイターさんで、この能力を試してみてあるのだ。

 ちょっとした理由をつけて握手などをし、頭に浮かんだ映像は、ファンさんはフライドチキン、ガイターさんはバナナが出て来た。

 ファンさんのフライドチキンは以前に亡くなった旦那さんとの思いでからきていると思われる。

 ガイターさんのバナナについては、試しに食事のときにデザートに出してみた。するとガイターさんは、それをじっと見つめ、目に涙を浮かべた。

「オラ、バナナみるとガキのころ思い出しちまうだ。オラのうちではよく飯抜きにされちまうことがあっで、そんときファンがこれ食べてってバナナさくれただ。オラあの味は絶対忘れられねえだよ」

 と、やはり心に深く刻まれたような食べ物だったのだ。

 旅路なので、なかなかこの能力を使うこともないだろうが、故郷でも戻って料理人を再開するときにでも役にたつのだろう。そう思っていた。

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