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暗黒魔女 ファン・エレート ③

「いただいても?」

 魔女が横目で僕に問いかける。彼女の力をもってすれば、こんなものたやすく僕から奪えるだろうに。もっとも僕の方も断るという選択肢はないのだけれど。

「よければ温めますけど」

「いいわ、このままで。遠慮なくいただくわ」

 僕から受け取ったフライドチキンを手にした魔女は、それをじっと眺めたあと、僕に背を向けた。どうやら食べているようだ。

 しばし間をおくと、魔女の肩が小刻みに震えて、手の甲を顔に当ててぬぐっているようにみられる。

 後ろから見てるからよく分からないけど、泣いているみたいだ。

「あなたの出身地はどこなのかしら?」

 くるりと振り向いた魔女はなにかを訴えるような顔をして僕に聞いてきた。少し目が赤い。このときだけは、黒いオーラのようなものが無くなっていて、悲しんだ表情の女性って感じだった。

 でも、僕がじっと見返し、その視線を感じたとたん、その表情を打ち消すようにニコリと微笑んだ。すると一変して魔女のオーラが戻ってきた。

「え、えっとですね、マクレチス国の一番東にあるバークロー州のラクサ村です」

 僕の返答を聞いた魔女は、目を閉じなにかを考えているようだった。しばしののち目を開く。

「そう、このチキンの味付けはバークロー州の一部地域の独特の方法ね、ただ、チキンが冷めても味と食感が落ちないよう工夫されてるわね。あなたの名前、絶対味覚を持つという天才シェフのライス・オーモリーじゃなくて?」

 いきなり自分の名を言われドキッとしたが、それよりもこの魔女がバークロー州の味付けと言い当てたことにもっと驚いた。

 つまり、この魔女はこの味を知っていた上で、僕の布袋から微かに匂うチキンの匂いを嗅ぎ取っていて同じ系統の味と判断した。すごい!ただ者じゃない!

「天才なんておこがましいです。でも、僕がライス・オーモリ―です」

「ふふっ、先ほどはごちそうさま。わたしがファン・エレートよ」

「あの、どこで僕の名前を・・」

「あら、あなたが思うより、あなた有名なのよ。でもね、ホントの理由は内緒かな」

 こんな初々しく自己紹介なんかしてる場合じゃないと思うんだが。

 ドギマギしている僕をしり目に魔女は会話を続けてくる。

「ライス君はこれからどうするのかしら?」

 ラ・・ライスく・・ん・?そう、これからって言われてもどうすればいいのか・・

「とりあえずマクレチス国へ帰るしかありませんよ・・」

 そ、そうだ、帰れるもんなら帰りたい。もちろん目の前の魔女が僕を解放することがあればだけど・・


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