表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/117

暗黒魔女白書 ⑤

 それは突然だった。

 ある日の朝、街にラッパの音が鳴り響き、「開戦、開戦―!」と大声が聞こえてきた。

 事情を確認しに行ったレーカーが帰ってきたので、今あった出来事を聞いた。

 わたしたちが住むこの国と、国境を接する北の国で戦争がはじまるとのこと。北の国に近いこの街からは、若い男性は全て徴兵され戦争に臨まなければならないとのこと、だった。

 そんな争いなど、わたしたちには関係ない。せっかく平和に暮らしているのに、そんなものに巻き込まれたくなどない。ましてやレーカーなど、ついこないだこの街にきたばかりだ。なんの関係もない。

 彼とわたしとガイターの3人で、街を抜け出せないかしらとレーカーに言ってみたが、既に大勢の兵隊がこの街に駐留していて、脱走者を見張っているらしい。

 しかし、ほんとうに戦争などおこるのだろうか?

 そんな疑義を吹き飛ばすように、家の玄関がバタッ!っと開けられ兵隊が怒鳴ってきた。

「ここに、レーカー・オーモリ―はいるか!」

 わたしと食卓で話していたレーカーが立ち上がり玄関へ向かう。

「僕がレーカーですけど、なにかご用でしょうか?」

「おまえがレーカーか。街の青年団から、おまえが逃亡を図ろうとしていると情報があり、確認にきた次第だ」

「そんなこと、ありませんよ。こうして家にいるじゃないですか」

「そうです。逃亡なんて考えてません。もう帰っていただけませんか」

 妙な雰囲気に、わたしはたまらずレーカーの元にかけよる。それにしても、街の青年団の人達はひど過ぎる。昔から意地が悪かったけれど、ここまでとは。

「帰るわけにはいかん。軍のほうで逃亡対策のため、お前はすぐに徴兵に応じてもらうことになったのだ。今すぐ一緒に来てもらおう」

 えっ!わたしは自分の耳を疑った。

「そ、そんな、今すぐなんてひどいです。まだ心の準備も・・」

 レーカーが連れていかれてしまう。こんなにも急にあんまりだ。

「ほう、応じてもらえぬのか。国に対する反逆ということで、逮捕及び強制連行ということで処理を進めてよろしいのか」

「わ、わかりました。ではとうざの着替えだけ詰めますので10分だけお待ちいただけますか」

 レーカーはあわててそう返答する。

「よろしい、では外で待つ故、急いで支度するがよろしい」

 バタンとドアが閉められた瞬間、わたしたちは抱き合った。

「レーカー、わたしイヤ!」

「ファン、ぼくもだよ。君を一人置いて行きたくなどない」

 なぜ、こんなことになってしまうのだろう。

 わたしの中で、小さいけれど、やっと丸く美しくなってきた人生。そこに小さなヒビが入ってしまったようで、それが割れてしまわないように祈るしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ