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暗黒魔女白書 ④

 一週間もすると、わたしは完全に回復していた。

 でも、ここの生活が好きでたまらなくて、あと一日、あと一日と、街へ帰るのを先延ばし、とうとう一か月が経過していた。

 ある夜のこと、レーカーがしんみりした顔をしながらわたしに話しかけてきた。

「ファン、君がここに来てから早や一か月だ。いつまでもこんな山小屋で暮らしているわけにもいかないだろう」

「・・・」

「君がこれからどうすべきか、考えていかなければいけないと思ってね」

 唐突に今後のことを話すレーカー。なにを言われるのかと心配になって、涙が流れてくる。

「ファン、どうしたの?急に泣き出して、イヤな話しだったかな?」

 わたしはコクッとうなずく。

 レーカーはわたしの気持ちが分からないのかしら・・でも、わたしもこの気持ちはひた隠しにしてきた。言いたい、言ってしまいたい。

「あ、あのね、君がよければだけど、これからもずっと一緒にぼくと暮らさないか?いや、まわりくどい言い方はやめよう、ファン、ぼくは君のことが好きになってしまった。結婚してくれないか」

 わたしのその時の気持ちは誰にもわからないだろう。

 ともかくも天にのぼって神様にお礼を言いたかった。ありがとうございます。こんなわたしに、こんな素晴らしい人生を与えてくれてと。

 レーカーの首に抱きつき、うれし涙を流すことしかできなかった。

 彼は、わたしが思っていた以上のことを言ってくれた。うれしい!うれしい!ただうれしい!

 

 こうしてわたしたちは、結婚し生活をともにした。まずは、わたしの住まいがある、ふもとの街でしばらく暮らし、あとはレーカーが薬学研究したいところに行って、わたしがついて行く。そんな道を歩む予定だった。

 レーカーは、わたしの住む街で薬草の販売をはじめた。しばらくぶりの街での暮らしで疲れているようなのに、そんなことはおくびも出さない。わたしの前ではいつも笑顔でいてくれる。早く資金がたまって、薬草研究の旅に出られることを祈るばかりだ。

 心配なのはレーカーとガイターの仲。

 わたしは二人に仲良くして欲しいのだけれど、どうもガイターがレーカーに対して突っかかるような態度をとっている。レーカーは周りの人達とは違うのって言っているのだけど、なかなか思いが届かない。

 そんなある日、わたしが買い物から家に帰ると、レーカーとガイターがお酒を飲み交わしていた。大声で、それは楽しそうに笑っている。帰って来たわたしに、「おお、ファン、君もどう?」と、ワインを勧めるレーカー。「すまねぇ、ファンの言う通り、レーカーはいいやつだっただ」と、長年の友のように会話をしているガイター。

 わたしは嬉しくて、普段は飲まないアルコールを、その時だけはいただいた。

 

 ありがとうございます。わたしの人生ががだんだん丸く穏やかになっていくようで、とても嬉しいです。感謝いたします。心の中で祈りをささげた。


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