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暗黒魔女白書 ②

 わたしはそれからしょっちゅう山の中に入るようになっていった。

 その時分はとうに父親は病死していたので、自分の生活のため、山で採った産物を行商の方に売り、なんとか暮らしているような状態だった。

 それで十分だった。

 必要最小限なお金が得られれば、あとは山の中で心の平穏を楽しむ。それだけでよかった。

 そんな日々の中、ある日、山菜を採ろうと木に手を近づけたところ、手首のあたりに激痛が走った。

 見た瞬間には、もう離れていたのだけど、毒をもつ緑ヘビが逃げていく姿が視界に入った。

 咬まれた!

 一瞬、空白となった心が、激痛で元に戻る。

 咬まれた手首を押さえ、山を下る。緑ヘビは猛毒ではないものの、手当が遅れれば死んでしまうだけの毒素はもっている。

 心のあせりのせいか、毒のせいか分からないが、心臓がドキドキして痛い。

 懸命に歩くが、次第に自分の意思どおりに体が動かなくなってくるのが分かる。

 ハアハアと口からでる息に震えが生じ、足が動かなくなってしまった。

 もう、動けない・・死か・・

 死を考えた瞬間、わたしの意識がスパッと切れた。


 「・・・」

 「こ、ここは・・」

 少しずつ、ほんの少しづつ、わたしの意識が覚醒する。まだ霞がかかったような感じではあるが、どこか建物の中にいて、横に寝ている感覚があった。

 次第に目の霞がとれていく。どこにいるかは分からないけれど、天井が目に入った。

 少しだけ首を傾けると、石の壁に窓がついていて、外の景色が見える。そこには木々があって、陽の光が差し込んでいる。

 今は、昼間・・どうやら山の中にいるようだ・・

「ああ、目が覚めたようだね、よかった」

 いきなり足元のほうから男性の声が聞こえてきて、体がビクッとしてしまった。

「ごめん、驚かせちゃったね。体調はどう?あと2~3日は静養が必要みたいだね」

 近づいてきたその男性は、心配したような表情ながら、柔和な笑顔でわたしに話しかける。

 ごめんね、と言いながら、水を絞ったタオルでわたしの顔をふいてくれる。寝汗がひどかったのだろう、顔に冷たい感覚がし、ベタっとした汗が除かれるのが心地よい。

「あ・・あの、あなたは・・?」

 おずおずと声をだすわたしに、目の前の男性は少しニコッと笑う。

「ぼくはレーカー・オーモリ―、薬草の研究のため世界中あちこち旅してるんだ。この山小屋に3日前に来て、少しのあいだ、ここに世話になる予定だったんだ。それで、昨日の昼間、薬草を探していたら、倒れていた君を偶然発見してね、ここに連れてきたんだよ」

 彼はそう言いながら、ヤカンから竹でできたコップに水をそそぎ、わたしに差し出した。


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