恐怖の一夜 ⑦
それよりも!
「ファンさんー!」
テーブルの上に横たえられたファンさん。気絶をしているせいか顔が青白い。
僕は肩をゆすったり、ほほをなでたりし、意識を戻そうとあれこれ試みる。
少しのあいだそうすると、いきなりガバッと上半身をおこして、腕を防御の姿勢にし、身構えたファンさん。ハァハァと息があらい。彼女の意識の中では、まだ吸血鬼との戦いが続いているようだ。
「ああ、よかった、ファンさん!けがはありませんか!」
いきなり目の前に心配をする僕がいたので、思考がついていっていないようだ。目をきょとんと丸め、面食らったような顔をしている。
「ファン、だ、大丈夫だったみてえで、よかっただ、ライスっち、すまなかっただ」
吸血鬼に10日は動けまいと言われたガイターさんが、少しふらつきながらも、ゆっくり歩を進めてくる。
「ガイターさんも大丈夫なんですか?」
「ん、だいじょぶだぁ、もう、なんともねえべ」
どうやら吸血鬼はガイターさんの体力を見誤っていたようだ。
ボ~っとするファンさんに、ことのあらましをガイターさんが説明する。
「ニンニクで?・・そうなの・・」
あっけにとられたような顔で事態をのみこんでいく。
机の上に座ったままのファンさんが、すぐそばにいる僕の顔をのぞく。と、同時にガバッと抱きつかれた。
「ありがとうライス君、おかげで助かったわ。でもね、もう危ないことしちゃ駄目よ」
「は、はい・・」
いきなりの抱擁で、やわらかな胸に顔を包まれ動転する僕。ホントに無事でよかった。
少しそうした彼女は、僕にまわした手をはずすと、
「じゃあ、早いうちかたつけましょうか」
と、机からサッとおりた。
「これでいいべか」
ガイターさんが広間にあった帽子掛けのポールをボキッと折りファンさんに見せる。
「ええ、それでいきましょう」
その言葉を合図に、ガイターさんは吸血鬼を蹴とばし仰向けにして、その心臓に折ったポールをグサッと突き刺した。
グワッと見開く吸血鬼の目。
がああああぁぁ!!
森中に聞こえるのではないかと思うくらいの怖ろしい雄たけびをあげた吸血鬼は、体が粉のように崩れていった。
「吸血鬼さ殺すのには、寝てる吸血鬼の心臓に木の杭を打ち込むんだべ。ただ・・」
ガイターさんは周りを見回した。




