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恐怖の一夜 ②

 ひっ!幽霊!

 この真夜中になんてことをファンさんは言うんだ。み、見間違いだよ・・

 ちがう、ちがう、絶対ちがう・・と僕は心に言い聞かせているが、白いかたまりはちゃんと存在していて、距離をつめてくる。

「どうやら思念体みたいね・・」

「思念体?」

「ええ、でも、あの子の場合は残留思念じゃなくて、本体はちゃんとどこかにいる。生霊に近いかんじね」

 い、生霊・・

 ファンさんがあの子と言ったその白いかたまりは、間近にくると確かに若い女性だが、半透明で発光した姿だった。

 うつろな表情で歩きながら、なにかをつぶやいているように唇が動いているが、声が出てはいないので、なにを言っているのか分からない。

 そこへ、ファンさんが水筒の水を口に含み、フーとその発光する女性に、霧のように吹きかけた。

すると、少しづつ聞こえてくる声。

 ・・して、  か・ほ・して、 か・ほうして、 かいほうして・・

 解放して?確かにそう聞こえる。

 僕たちの目の前を横切ったその女性は、近くに見える森の中へ消えていった。

 初めて見るそのような存在に、歯がガチガチとなり、寒気までしてきた。

「ガイター、わたしに付き合ってくれる」

「オラそのつもりだべ」

 と、会話する二人。

「あのー、どこかへ行くつもりなんですか?」

「ええ、ライス君は危険だからここにいて」

「あの・・僕ひとりでですか?ちょっと怖いですよ!どこに行くんですか?」

「さっきの女の子が入っていった森へいくの。けっこう厄介なことになる気がするの」

「ファン、ライスっちも連れてったほうがいいべ。ここにいて、なんかあっても助けられねえべ」

 二人から若干緊張のような空気が感じられる。この先になにがあるというんだ・・

「そうね、ライス君、じゃあ一緒に行きましょう。でもね、わたしが逃げてと言ったら一目散に走るのよ。いい?」

「はい、そうします」

 なにが起きるかわからないけど、逃げてと言われなくても逃げてしまいそうだ。

 準備をするのでちょっと待っててね、と言ったファンさんは、幌馬車の幌へ入っていった。間もなくしてでてきたその姿は、黒づくめの服にとがり帽、暗黒魔女 ファン・エレートの正装だった。

「この姿が魔力を使う際に一番集中できるのよ、じゃあ行きましょう」

「んだな。ライスっち、できるだけオラの近くにいんだど」

 言われなくても近くにいるつもりだ。ファンさんが魔力を使うような事態になりませんように。そう願った。


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