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悲しき魔神と魔女 ②

「ライスっちも通って来たマクレチス国の西の草っぱら。あそこには、昔そこそこの大きい国があっただよ」

 ああ、ファンさんが居住としていた大草原のことか。

「オラもファンも昔はそこにあった街に住んでたんだぁ。その時分はまだガキんちょで、二人してよぐイジメられてたべ。オラもファンも、純粋な魔物でなぐて、魔の者と人間のハーフっつうやつで、魔の力なんか使えねえのにいつも悪者あつかいだったべ」

「・・・」

「なにかあっど、二人してよぐ慰めあっただよ。ファンは性根が優しいもんだがら傷つきやすくてなぁ、オラが守んねえどっていつも思ってただよ。そんで、いつもファンのこと考えでだもんだから、オラはファンのことが好きになっちまっただ。誰にもこの事は言ったことがねえけんど」

「・・・」

「オラたちは魔の血が入ってるがら長生きなんだども、子供から大人になるまでの年月は人間と変わんねえだ。ファンは大人に近くなるにつれ美しくなっで、そんで街の男どもが狙いはじめただよ」

 その時だけは、平穏なだったガイターさんの顔が、ギリリと歯をかみしめ怒りの表情を見せた。

「ファンはそんな雰囲気をさっしてが、しょっちゅう山ん中に入り込んであんまり人と出会わない生活するようになってただ。これはファンから後から聞いた話なんだども、ある日、山ん中あるいでだら、毒蛇に噛まれちまって、もう駄目だど死ぬの覚悟してそのまま意識なぐなったらしいだ」

「目えさめたら、山小屋のベッドの上で、助けてくれたのがレーカー・オーモリ―だっただ。レーカーは故郷のラクサ村を出て、あちこち旅しながら薬草の研究をしてたそうだ。あいつは優しいやつだで、しばらく山小屋で療養するうちファンはレーカーのごと好きになっちまったんだ」

「そのうち二人は結婚すて街に住むようになっただ。オラもファンが好きだったんで、最初は面白くなかったけんど、レーカーはホントいいやつなんで、オラは負けたと思って二人を見守ることにしただ」

「そんなある日、オラたちの国と北のほうにある国が戦争することになって、オラもレーカーも兵隊としてむりやり戦場に行くことになっただ。戦場へ出かける前にファンはオラの手を握って、ガイター死んじゃだめよ、あと、できるだけレーカーを守ってねって泣きながら言っただ」

「戦場ではオラたちの街からの兵隊は一つのグループになってて、みんな顔は知ってたやつらだったべ。オラはやつらのこと嫌いだったから、いつもレーカーと一緒にいただ」

「ある日、オラたちは味方にハメられて、敵の真ん中に二人して取り残されただ。オラ必死で頑張ったども、レーカーは敵に殺されちまっただ。オラはレーカーの体を担いで逃げたども、敵に目ん玉やられちまって、失明しちまって、もうダメだと思ったんだども、ひょっとしたことで助かっただ」

 レーカーさんを守れなかったという罪の意識があるのだろうか、ガイターさんの目に光るものが浮かんだ。


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