僕ができること ④
ジールトン妃が言ったとおりに事がうまくいくかは別として、その話はあまりにも異質であった。
「みなさん、祖母の話しは脅威に感じるかもしれませんが、これには我が国の成り立ちが絡む重大な事実が背後にあるのです。そのことは、今はお話しすることはできませんが・・」
ソシミール陛下が、ジールトン妃をかばうように頭を下げる。
「みなさんは、先ほど我が国の飛行船という乗り物を見て大いに驚かれたことと思います。あの乗り物も、祖母の研究の成果になるのです」
「えっ!あの空を飛ぶ船をジールトン妃が作られたのですか!?」
申し訳ないが、とても発明家のようには見えない妃の能力に驚いてしまった。
「いえ、そうではありません。あの乗り物はある助言者の言葉に基づき作ったのです。祖母はこの国の歴史を研究していて、その助言者を発見したというのが正しいところです。」
どうも、ソシミール陛下の話しがよく分からない。ジールトン妃は歴史の研究家のようだが、飛行船の製作の助言者がどうして結びついてくるのだろうか。
「とえりあえず、これ以上のことはお話しできません。あとはライス様の件になりますが、前にも言ったとおり、厳しい条件があることについて、祖母より聞いて下さい」
そう言ったソシミール陛下は顔を赤くしてうつむいてしまった。いったいなんだというのだろう?
うつむくソシミール陛下を見たジールトン妃は、優しい笑みを浮かべたあと、視線を僕のほうに向けた。
「あなたがライスさんね。あなたには二つの条件がクリアできることが必須となります。一つ目の件ですが、これはあなたが特別な能力をもっていることが必要なのです」
「特別な能力ですか?いえ、僕にはそんな力はありません・・そんな力があるくらいなら、ここに来る必要はないと思うのですが?」
「いいえ、この特別な能力というのは戦う力ではありません。あなたは昨夜、ソシミールと部屋で世間話をされたそうですが、その中で、あなたの能力のことを話されたとか?」
僕は昨夜のことを思い出す。そう、あのときは僕の部屋に陛下が訪ねてきて、それからファンさんやペーリーさんが来て大変なことになったんだ。そう、僕のことで話したといえば、人の心に残る料理が相手に触れると頭にかってに浮かぶと言った記憶がある。
「ライスさん、あなたは虫の知らせという言葉はご存じかしら?」
「ええ、第六感というやつですよね。人間の五感意外にある不思議な能力という」
「そう、それは精神感応力という心の力になるのです。試しに、わたしにその力を見せてもらえるかしら?」
ジールトン妃がそう言うので、僕は彼女の手を握り、頭に浮かんだものの事を話す。
「ええと、あなたの心に刻まれている食べ物は、ブルーベリーパイですね」
僕の言葉に、目を丸くして驚くジールトン妃。
「これはビックリしました。わたしは子供のころから母のつくるパイが大好きで、わたしが作ったパイが縁で、皇帝と結婚するにいたったんですよ!」
こんな能力が戦うためになんの役にたつというのだろうか?しかし、興奮がさめやらぬといった感じで立て続けにジールトン妃は話す。
「これだけの能力を身に秘めているのであれば、精神感応力については、彼もOKをだすでしょう」
いま、妃は彼という言葉を口にしたが、どうやら背後に別な人物がかかわっているようだ。
「では、二つ目の条件を言います。その条件とは、このソシミールと結婚をし、建国以来ミスーレ帝国を守りぬいてきた、わたしたちサダングックの一族になる必要があるのです」
その条件が話された直下、時間が停止したかのごとく、この場が静まりかえった。
僕はジールトン妃が、なにか言い間違いをしたのだろうと思い、ソシミール陛下のほうを見たら、陛下は赤らめていた顔をますます赤くして、視線を避けるように下を向いてしまった。
この作品を継続して投稿してまいりましたが、6月24日に投稿する際に、誤って完結のところを押してしまったようなのです。自分では自覚がありませんでしたが、数時間後にパソコンを見たら、完結作品になっていて非常にショックを受けました。全然人気のない作品ではありましたが、それまで14名の方にブックマークをいただいて、購読もしてくれていたようなのに大変失礼なことをした気持ちになりました。また、未完成にもかかわらず完結として読んでいただいた方にも、お詫び申し上げます。信頼回復には至らぬと思いますが、新規で継続用を新たに作りましたので、もし最後が気になるときは、大変お手数ですが、そちらをご覧いただければ幸いに存じます。ギャグの部分が多い作品ですが、作者の私がこんなお笑いのようなことをしてしまい情けない限りです(T_T)




