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悲しき魔神と魔女 ①

 旅路の食料を調達し、南のマヒワリ国へと歩みを進める。

 この旅は遠距離になるため馬車を購入し、交代で手綱を握ることにした。幌がついている馬車なので、荷台で休むに適している。

 まだ出発して10日。まだまだ先は長い。

 アリーダ王国とマヒワリ国は、かなり遠い道のりにもかかわらず、古くから交流がさかんだったようで、その道のりはジュエリーロードと名付けられている。宝石の流通商売が繁忙している証だ。

 なので、要所要所に宿場町があり、お金があれば野宿はそれほど多くなくてすむ。

 今日はちょっと贅沢をし、温泉が入れるという宿に泊まることにした。

 部屋は、ファンさんが一人部屋、僕とガイターさんで二人部屋ということになった。

 風呂に入って食事をとって、こんなゆったりしたのは久しぶりだ。

 ベッドに横になって優雅な気分を味わおうかと思った矢先、ガイターさんが

「ちょっと、いいべか?」

 と、話しかけてくる。

「どうしたんですか?ガイターさん」

「そのなんだ、ライスっちと、ちぃーと話したい気分なんだぁ」

 と、大きな体を、窓際にある籐の椅子にしずめる。僕も向かいの椅子に座った。

「どうしたんですか、あらたまって?」

「なにから話していいんだかよぐ分がんねえけど、あ~、ライスっちはラクサ村の出身だべ」

「ええ、そうですけど」

「名前はライス・オーモリ―つうんだべ」

「はあ・・」

「オラ、ライスっちと初めて会ったとき、な~んか見たごとあんな~って思ったけんど、あの人に似てんだべ」

「あの人?」

「レーカー・オーモリー、ファンの旦那さんだったひとだぁ」

「え~!ファンさん結婚してたんですか?」

「んだ。300年くれえ前の話しだども。レーカーは人間だったがら、どっちにしろもう生きてねえけんど」

 魔女も魔神も長生きの系譜だ。ちょっと前の話しが百年単位ででてくる。

「レーカーもラクサ村の出身だったがら、オーモリーつう苗字からして、どっかでライスっちとつながってる血筋なんだべなあ、ファンは子供いねがったから、子孫ではねえべけど」

 そういえば初めてファンさんと会った時、僕のことじーっと見てたっけ。

 そうか、僕の故郷のフライドチキンの味付けをファンさんが分かってたのも、レーカーさんがラクサ村の出身だったからか。

「今から話すことはファンには内緒にしてけろ。ただ、ライスっちはこのこと知っといた方が、オラいいと思っただ」

 ランプの灯りがチラッと揺れて、それを合図にしたかのように、ガイターさんが話し出した。魔神と暗黒魔女の悲しい話を。


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