受難 ⑥
「あのですね、そのジークラーさんという方が魔王だったとして、もし戦うことになったとしても、僕はお役に立たないかと・・」
ペーリーさんがキョトンとした顔で僕を見つめた。
「そういえばそうよね。ライスさんにこの話をしても仕方ないわよね?」
「そうですよ、戦いの話しだったら、ガイターさんかファンさんに言うべきですよ。僕はなんの能力もないただの人間ですし」
「フフッ、ライスさんの言うとおりね。ただの人間か~。そう言われるとね、あたしも闇の王の啓示を受けてはいるけど、ファンおねえさまや、ガイターさまと違って、純粋な人間なのよね~」
そこへいきなりペーリーさんが、スカートをまくしあげ、ふとももを露わにした。
「ちょっと!ペーリーさん!スカートなんかめくってなにしてるんですか!」
またも、ファンさんが隠れている場所のカーテンが揺れ動く。
「ライスさん、へんなとこ見ないで!」
変なとこってどこなんだよ!そんなこと言ったらファンさんに勘違いされちゃうじゃないか!
そんな僕の思いなど意に介さず、彼女は太ももに巻いてあった、水晶のステッキのような、短い棒状の物を取り外した。あ~、びっくりした。それを見せたかったのか。
「あたしって人間だから、どうしても魔力が少ないわけ。いくら鍛えても魔力に限界があるの。だから、この水晶のタクトを媒介にしないと魔法がうまく使えないんだ」
「・・・」
「でもね、ガイターさまとか、ファンおねえさまとか、元々魔力が桁違いにある人のそばにいるとね、それが仲介になって、あたしの魔力も増大するの」
いったいペーリーさんはなにが言いたいのだろうか?
「あたしさ、初めてガイターさまに会った時にね、その瞬間、あたしの魔力が自分の限界以上に膨れ上がって気絶するくらい最高潮になったの。まあ、シャワー中のところを見られたから最悪だったんだけどね」
「それ、覚えてますよ。ペーリーさんの裸を見たから結婚しろって詰め寄った件でしたよね」
「・・ライスさん、つまらないところだけ記憶力がいいのね。ともかくあたしね、そのときはこの人だ!って思ったわけよ。闇の魔導士として自分を極めていくなら最高のパートナーでしょう?!」
「・・はあ、それで・・?」
どうも、この話しの終着点がわからず、心の中でも首をひねっている状態だ。
「それはね、闇の魔導士としてのパートナーだった場合なわけよ。でもね、最近こう方向性が分かれるというか・・わかるでしょうライスさん!」
「・・すみません、そう言われてもなにがなんだか?」
いったいなんなんだろうか?ペーリーさん酔っているわけではなさそうだし・・謝る僕を見てペーリーさんはフーっとため息をつく。
「じゃあ、ちゃんと言うね。闇の魔導士としてじゃなくて、人間としての幸せみたいなものを考えたときにね、そのパートナーはガイターさまじゃないなってこと」
「・・あの、それって・・」
「そう、ライスさん、あなたがパートナーだったらいいなってこと」
ペーリーさんは顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を斜めに向けたが、瞳はウルウルさせて僕のほうを見つめたままだ。
僕は石化の呪文でもかけられたかのごとく、動けなくなってしまった。




