表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/117

暗黒魔女 ファン・エレート ①

 ここはマクレチス国の西端にある大草原。

 青天白日、見渡す限り緑の草が生い茂る中、僕はこの地を横断し、地平線の先にあるであろう、隣国のアリーダ王国まで歩いて行く途中。

 トラブルがなくても横断に10日はかかると言われる広大な土地なので、それなりの用意が必要となる。

 ロバにひかせている荷車には大量の食糧が積んであって、本当なら三十人近くになる集団の賄いになるはずだった。

 だけど、僕以外の人物は集団を離脱となり、今は2人で隣国へと歩を進めている状況だ。

 いま2人と言ったけど、2人という言い方が合っているのか分からない。僕は、となりを歩く人物?をチラリと横目で見た。

 僕の視線を感じたのか、それとも彼女?が既に僕を見ていたのか、そんなことはどうでもいいが、とにかくお互いの視線が絡んでしまった!

「今日の夕飯はなにを食べさせてもらえるのかしら?」

 僕のとなりを歩く魔女がニコリと微笑み話しかけてくる。

 う~、背中がゾクゾクする。

 そう、となりを歩く人物とは魔女!

 その魔女の細おもての顔は、あまりにも美しく、つややかな黒髪がその美しさを一層際立たせている。

 華奢に見える体つきで、黒いドレスに黒いロングコートを身にまとい、頭にはとがり帽を冠している。

 魔女が持っているはずの杖のたぐいを手にしていないが、彼女いわく、杖は魔女が魔法を使う際の触媒であるが、彼女ほどの大魔女になるとそんなものは必要ないらしい。

 はた目には、ただ美人と同行しているように見えるかもしれないけど、実際彼女からは黒いオーラというのか、近寄りがたい危険な空気が吹き出しているのがわかる。美と闇が表裏一体と化している。

 古来よりこの草原を横断するものにとって、この魔女と遭遇することは、死を覚悟すべき事案であった。

 暗黒魔女、ファン・エレート。彼女の名前だ。

 隣国のアリーダ王国との交流が鈍化しているのは、ひとえに彼女がこの地を所在場所としているのが原因なのだ。

 現に僕のいた集団は、アリーダ王国との親善を図るための使節団だったのだが、母国を出発し、この大草原を横断中に彼女と遭遇。おおかたは逃げ出し、それ以外の者は石に変えられ、シェフの僕がただ一人残った次第である。

 そう、僕の職業はシェフ。アリーダ王国へ向かう使節団の賄いを担い、現地の交流会では我が国の料理を晩餐に添える役をすることになっていたんだ。

 でも、彼女に遭遇してしまった。

 だけど、なぜ僕は厄災を受けず、こうして生きていられるのだろうか?理由はよくわからない。・・それは・・2日前のことだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ