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グリゼルダの魔法の家  作者: さとう たつき
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第8話 一階最後の部屋と冬の終わり

 ベッドを発見してから、彼らの生活はさらに豊かになった。やはり、床の上よりもベッドの寝心地は最高だ。


「この部屋で一階は最後かな?」


 お屋敷のいちばん奥まったところに、広い部屋があった。村の集会場よりも広かったが、家具は一切無い。そして、いちばん荒れ果てていた。


「何が起こったんだろう? 石造りの床がこんなに削れてるし、その上に敷かれていた絨毯も何だか焦げたようになっているね。ほかの部屋は年月が経ってああなったみたいだけど、この部屋は何だか違うみたいだ」


 きっとここは家人が食事をとる部屋だったに違いない。それにしては、テーブルの一つもないけれど。ハンスはそう思った。この部屋が元通りになれば、とりあえず一階は完成である。あんなに見えていた空も、もう見えなくなっていた。一階のどこもかしこも、壁と天井がしっかりある。この部屋をのぞいて。


 この冬中ハンスたちは、ずっとお屋敷の再生をしてきた。柵の外は雪がしっかりと積もり、柵の外へ行く気はしなかった。一回友好的ではなさそうな獣が柵の向こうに見えたことがあり、柵はすべて再生済みである。


 この頃になると、ハンスたちもお屋敷の再生に関して、コツをつかめていた。再生したいところに対し、念じながら手のひらをかざすと、目に見えて元の形を取り戻していく。


 ただ、再生が速いからといって長く続けると、疲れすぎて途中で気を失うことになる。その場にいるだけでもじわじわと再生されているようなので、二つの方法を使い分けながら、一階最後の部屋へとたどり着いたわけである。


 この部屋は広くはあったが、そこまで苦労することもなく再生を完了した。畑を耕すのは特に時間がかからなかったし、ここの作物の成長はとても早い。空き時間をすべて使えたのも大きかったのであろう。


「お兄ちゃん、次は階段だね。二階に上がると、森の様子がもう少し分かるかな?」


「そうだね、グレーテ。柵の周りの雪が少しずつ溶け出したようだよ。もうすぐ春がやって来る。早くこのお屋敷を元通りにしたいね」


 そして柵の外へ安全に行けるようになりたい、ハンスはそう思った。このお屋敷さえあれば、食べていく分にはまったく困らない。ただ、着ている服はきつくなりだしたし、洗いすぎてぼろぼろになっている。他にも必要なものがあるに違いない。それは物かもしれないし、人かもしれなかった。ハンスはグレーテに、広い世界を見せてやりたかったのだ。

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