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グリゼルダの魔法の家  作者: さとう たつき
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第5話 本館

 たとえ何らかの犠牲を払ったとしても、ハンスはここで生きていくことを決めた。お屋敷の外でグレーテと二人で暮らしていくのは、難しいと判断したからである。そして、自分たちの拠点を、小屋からお屋敷の本館へと変えた。どういった基準で小屋や道具が再生されているかは分からないが、小屋はもうこれ以上再生しないだろうと思ったのだ。あのみすぼらしかった小屋は、それほど真新しくなっている。


「ねえグレーテ、お屋敷のほうへ行ってみようよ。多分ぼくたちがいつもいるところが新しくなっていってると思うんだ」


「うんいいよ。ドアがないところがいいな」


 無邪気に答えるグレーテとともに、ハンスはお屋敷の本館へと向かった。本館は小屋よりもずいぶんと広く、上の階もあるようだった。


「ここが玄関ってやつだよね。村長さんの家で見たことあるけど……」


「うわあ、すごいねお兄ちゃん! こんなに広いと、みんなで住めちゃうね!」


 玄関は広いホールになっていた。正面にある上階への階段は途中で行き止まりになっていたが、その先にはお屋敷の二階部分が見えた。もっとも二階の床まで残っているのは少しだけで、一階からは青い空がよく見えた。


「いきなり天井が崩れたりしたら困るから、しばらくは屋根のないところで寝よう。きっと再生された部分は、ちょっとやそっとじゃ壊れないよ」


 実際はどうだかまだ分かってはいなかったが、グレーテを安心させるためにハンスはそう告げた。


「わあ、お星さまを見ながら眠るのってすてき! 何だかお姫さまみたい!」


 楽しそうにはしゃぐ妹を見て、ハンスは安堵するとともに「代償」について考えることにした。こんなお伽話の魔法のようなことが、何の犠牲もなしに起こるわけがない。このグレーテの笑顔を守るためにも、できる限りのことがしたかったのだ。


「ぼくらの生気? でもここに来てからベリーをいっぱい食べて前より元気になったし……」


 ハンスは瓦礫の上に座り込んだ。グレーテも、真似して座る。


「若さとか? でもぼくらが、いきなり大きくなったってこともないし……」


 考えても分からなかった。もともと考えることが苦手なうえに、考えるための材料も少なかった。まだ幼いグレーテにいたっては言うまでもない。


「……とりあえず、今どうこうというわけでもないし、しばらくは様子を見てみよう。再生されたところが増えれば、何か分かるかもしれないし」

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