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第4話 水晶の間
今回はとても短いです。
「ああ、ようやく『獲物』がやってきたようね。待ちわびたわ、いったい何年ぶりかしら?」
お屋敷の本館の地下深く、周囲とは隔絶された部屋にそれはあった。抱えきれないほどの大きな水晶の中に、一人の女性が入っていた。引きずるほどの黒く長いローブを着た彼女は、口元を少し緩めた。
「まったくこのわたくしを閉じ込めるなんて、あの男ときたら……」
勇者と言ったかしら? 端正な顔を歪めて毒づいた。目を開けないだけで、表情はくるくると変わっていく。見た目は若いが、実際の年齢は彼女、グリゼルダにも分かっていなかった。彼女が「人間」だったのは、はるか昔のことだったから。
「わたくしを優先するのもいいけれど、ここから出たとき住むところがないのは不便ね。このまま家を優先させましょう」
そう言うと、グリゼルダはニヤリと笑った。この目を開くとき、それは彼女の復活のときである。はるか昔に勇者が封じた古の魔女は、若い獲物の登場に舌なめずりをしながら、そのときを待つことにした。待つのには慣れている、もう散々待っていたのだから。