第2話 ベリーの実
ハンスとグレーテの兄妹は、水と食べ物を求めて小屋の周りを歩いてみた。寝床は確保できたが、昨日の朝から何も食べていないのだ。
しばらく歩いてみて分かったのは、ここはもとは大きなお屋敷だったということだ。寝床とした小屋は、よく見ると自分たちの住んでいた小屋よりも大きかったし、所々に残る塀の跡をつなげると、町長の家なんかよりもまだ大きいくらいだ。村が一つ、すっぽり入るのではないだろうか? ただ、何とか住めそうなのは、屋根が半分ほど残っているこの小屋ぐらいではあったが。
「お兄ちゃん、あれを見て! 実がなってるよ!」
そう言うと、グレーテは走り出した。小屋とお屋敷の本館との間ぐらいに、実がなっている茂みがあった。ベリーのような、小さな赤い実がなっている。
「グレーテ、転ばないように!」
そしてハンスも走り出す。食べられる実かどうかは分からないが、そんなことを言っている余裕はない。二人でどんどん実をちぎっては、口に運んだ。
「おいしいね、こんなおいしいもの食べたことないわ!」
「そうだね、村のみんなにも……お父さんたちにも食べさせてあげたいな」
しばらく実を食べていた二人だが、ようやくお腹がいっぱいになったのか、また元の小屋へと戻っていった。そして二人で床の上で丸くなった。口の周りには、ベリーの赤い汁がついたままだ。
次に起きたときには、辺りは暗くなっていた。少しお腹が空いていたので、またベリーの茂みに向かった。
「あれ? あんなに食べたのに……」
月明かりに照らされたベリーの茂みは、昼と変わらず多くの実をつけていた。いぶかしがるハンスを尻目に、グレーテは気にせずベリーを口に運ぶ。
「うん、やっぱりおいしいね。お兄ちゃん」
無邪気な妹を見て、ハンスもまた、ベリーを食べ出した。しっかりと見たわけではない。もしかしたら昼にはもっとたくさんのベリーがなっていたのかもしれない、ハンスはそう思った。そしてお腹いっぱい食べると、また小屋に戻って眠りについた。そんな二人を、月が優しく照らしていた。