≪漫才≫八百屋
ボケ...「ボ」、ツッコミ...「ツ」と表記しています。
二人「どうも~」
ボ「突然だけどさ」
ツ「なんでしょう」
ボ「俺漫才やめるわ」
ツ「突然すぎるだろ。ちょっと今リアクションに困ってるよ。こういう時って普通◯◯をやってみたい、とかじゃないの?」
ボ「だから、漫才師やめて八百屋を開きたいなって」
ツ「あぁ、そういう感じね。八百屋?野菜とか果物売るってこと?」
ボ「そう。でもさ、今ってスーパーマーケットとかがあるせいで、野菜だけ、とかお肉だけ、って売ってるお店って難しいらしいの」
ツ「なるほどね」
ボ「だからさ、今やってみたいんだよ」
ツ「勿論良いよ」
ボ「あー!でもちょっと待って!」
ツ「な、なに?」
ボ「俺昨日ツナ缶買ったんだよね...」
ツ「...ごめん関係がわからない」
ボ「俺も分からない」
ツ「なんだよそれ!始めるぞ。俺が客として店に行くから」
ボ「わかった」
ツ「さて、今日も野菜を買おうっと。この店の野菜は新鮮でおいしいからな。よし、すいません、ニンジン3本ください」
ボ「 」
ツ「あの、すいません」
ボ「 」
ツ「何か言えよ!」
ボ「えっ!?俺キャベツ役じゃないの!?」
ツ「なんでだよ!店の人やって!(少し間)すいません、ニンジン3本」
ボ「ごめんなさい、ニンジン無いんですよ」
ツ「えぇ...。じゃあ何があるの?」
ボ「クリとか、トウガラシとか、モモとか...あとシンタマ...」
ツ「新玉ねぎ?その前までだいぶ特殊だったけど、いいじゃん。じゃあ新玉ねぎ3つ」
ボ「え?いや、牛肉の話ですけど」
ツ「いや分からねぇよ!そんな部位あるんだ、おもしろいな。ていうかここ肉屋じゃないだろ!」
ボ「そういえばそうだった」
ツ「自分で八百屋やりたいって言ったんだからな?すいません、ニンジン3本」
ボ「ニンジン3本ですね。1本50円で、150円になります」
ツ「はい500円」
ボ「はい。では3本と、ニンジン7本のお返しですね」
ツ「待て待て待て!なんでお釣りをモノで返すんだよ!勝手にお金使わないで」
ボ「あぁ、そうか。ごめん、もう一回戻ってもらっていい?」
ツ「ちゃんとしてくれよ?すいません、ニンジン3本」
ボ「(間)えっ!?俺キャベツ役じゃないの!?」
ツ「どこに戻ってるんだよ!折角いい感じだったのに...」
ボ「かのイエス・キリストは仰られました。汝の隣人、いいえ!ニンジンを愛せと!」
ツ「言ってねぇしキャラおかしいよ」
ボ「キャラ?そのキャラとやらは所詮お前から見た俺だろ?それを他人に押し付けていいのか?」
ツ「ど、どうしたんだよ急に」
ボ「急じゃないさ。今話してるのはこの日本という国ひいては世界にとってとても重要なことだ。自分という人間を他人から見た自分に合わせる必要はあるのか?いいや違う!断じて違う!自分とは自分の思い通りにできる世界で唯一のものだ。その権利を他人に渡してはならない!そうだろう!?」
ツ「た、確かにそうだな」
ボ「人類はこの問題から目を背けすぎている。自分という人間を確立するのに必要なのは、自分がどのような人間になりたいかという理想像。そしてその理想に対する行動だ。努力だ!」
ツ「理想への、努力...」
ボ「理想を持たずに、いや仮に持っていても、他人の価値観に自分を合わせる必要など絶対ににゃっ」
ツ「いや噛むなよ」
ボ「噛んではいけないと誰が決めた!これこそが俺という人間ならばそれで良いだろう!」
ツ「なるほど...たまには良いこと言うな」
ボ「ということで俺はキャベツだ!キャベツとして生きていく!」
ツ「いやそれは違うだろ。いい加減にしろ」
二人「どうも、ありがとうございました~」