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とりあえず包帯を返してください  作者: 勇者ああああ
1/1

俺が妹の理由

「レイスお兄ちゃん!!」

この世で一番。可愛いと思われる妹の声が聞こえる


「・・・ユキ。・・に・・げ・・・ろ・・・・」


自分の腹から出ている醜いほどに紅い血を眺めて、自分の最期を知る

そして、自分を襲った破壊を楽しむ執事の格好をした悪魔の狂喜を帯びる目を・・・睨む


「あなたは大鎌の使い手にしては強かった・・しかし、そこそこの剣士のほうがまだ戦えますよ?よくそんなに弱くて何かを守れると思いましたね」


狂喜の目は、俺からユキへと変わる


「私は『虚飾』を喰って『傲慢』の悪魔としてもっと強くなるのです。逃がしませんよぉ」


傲慢?虚飾?

そんなことはどうでもいい

俺は、悪魔の足を掴む


「ユキに・・・手を出したら・・・・・殺す」

「あなたのほうが『虚飾』に向いてると思いますよ・・・惨めでね。ふははははあははははは」


悪魔の笑い声が、脳内を震わす


「ん?なぜ効かない?まさか・・・ふふふふはっはははははは、まさか本当に『虚飾』だったとは。本当にあなたより『虚飾』が似合う者はいないだろう。何もかもがね」

「ユキに・・・だけは・・・・手を・・・出すんじゃねぇぞ。」

「目的は、あなたを喰らうことだけです。あんな小娘、食ったら私の素晴らしい口が腐りますよ」


そうして、俺の人生で最後に見たものは悪魔のでかく変形した口と俺に向かって手を伸ばす妹の姿だった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


とある街にて

「おい、あれ見ろよ」

「あれが噂のミイラ女か」

「わかりやすいなー。体は女でも声は男みたいなんだってな」

「どうでもいいだろ」


大鎌を持った包帯を全身にぐるぐる巻きにした冒険者の少女が歩いていた

街の住民たちは、その気味の悪い冒険者を見た目通りミイラ女と呼んでいる


「おい、また噂されてるぞ。ユキ」

『レイス兄のせいですよ。なんで、包帯だけつけて服着ないんですか。私の体だってことわかってますか?』


ユキが脳内に直接話してくる


俺らは、いわゆる二重人格者

いや、すこし違う

俺らは元々、それぞれの体を持っていた

ある日、俺は悪魔に殺されてしまい、死んだ俺の魂を俺の妹であるユキが体内にとどめた

一つの体に二つの魂が入っていると言えばわかりやすいだろうか


それゆえの二重人格

どちらかと言うと『体の共有者』だ


ユキが言うには死霊術の一種らしい

死体などに魂を与える。ゾンビ作成法の応用

ユキは、自分の体に俺の魂を入れたのだ


しかし、ユキはその術を失敗してしまい

ユキの体の主導権が、肌が光るにあたるの面積で決まるようになってしまった

簡単に言うと、包帯をつけていると主導権は俺が持ち、裸になると主導権をユキが持つ


普通の服を着ると微妙に肌が出てしまい、体の主導権が分散される

つまりは、2人で体を動かさないといけないため

ものすごく疲れる

だから、俺が主導権を握る場合は、包帯を全身巻き肌を晒さないようにする


妹が主導権を握る場合は、全裸なので

街中を歩かせるわけにもいかず

ミイラ女と呼ばれつつも、俺が外で冒険者としての仕事をやっている


『っていうか、この間、また受付の看板娘さんのこと口説こうとしましたね』


どこでそれを、確かにお前が寝ているのを確認してから口説きに行ったはずだ

※魂は寝る


『だから、男声の気味の悪いミイラ女って言われるんですよー』

「ってか、なんで声は俺のまんまなんだ?」

『多分、魂から声を出してるんですよ』


声が少し震えている

嘘だな


俺が嘘だと判断したことを察知したのか

ユキがあからさまに話題を変える


『私の体なんですから、着替えてくださいー』

「おいおい、着替えたいだなんて嘘つくなよ。体は正直だぜ」

『兄さんが体を動かしてるからでしょうっ』


大声を脳内で出されたため、頭が痛む


「じゃあ、ここで全裸になればいいのか?」

『服を着てくださいってことです』

「包帯巻いてるからよくね?どうせ見えないし」

『それでもですっ』

「わかったから、大声でしゃべるな」


ユキの奴

痛みを感じるのが俺でも

傷ついてるのが自分の体だってことわかってるのか


俺は仕方なく宿に戻り、包帯の上から服を着る

しかし


すっごくダサかった

なんというか、髪の毛のないのっぺら坊が服を着たような感じだ


『やっぱり、着なくていいです』

「オシャレのためなら、羞恥心を捨てるなんて。お兄ちゃん、妹の将来が心配だよ」

『気持ち悪い』


あ、はい


「とりあえず、依頼受けに行くか。」

『私が寝てる間、無駄金使うからいけないんですよ』

「すまんすまん」


ユキが寝ている間、俺がカジノにでも行ってると思っているらしい


冒険者ギルドに入り、手ごろな依頼を探す


「見ろ、あれが男声のミイラ女だ」

「男なの女なの?」

「いい体してるが、声が男じゃあなー。もったいねー」


あの三人は、丸焼きにするとおいしくなりそうだ

豚みたいな顔してるし


『不穏なこと考えてませんか?』

「いや、べつに」

『知ってますか?兄さんが嘘をつくとき腕を組むんです』


ユキに言われて、自分のいや、ユキの腕を見ると

豊満な・・・いや、見事にがっちりと組まれた腕があった


「よし、今日はオークの討伐に行くぞ」

『話をそらしましたね』





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