表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊憑きにつき。  作者: 五月七日 外
死霊憑きはあの夏をもう夢見ない。
15/23

春野瑞希・春野侑希

 〈春野瑞希〉


 私は早く走りたかった。

 自慢の姉でありたかったから。


 次第にその思いは忘れていく。


 ただ、記録だけを求めるようになっていく。

 妹の支えなんて忘れて。


 あの日、私は妹を助けたかった。

 だから勝手に体が動いてしまった。


 そのときに願った。

 妹の無事だけを。

 でも、少しだけ後悔があったのかもしれない。

 最後に走りたかったと。


 気付くと私はいつも走っていた。


 でも私は気付かなかった。

 これが誰の体なのかを。


 だから、私は夢に向かって走り続けた。

 どうやったって、それは間に合わないというのに。


 今ならわかる。


 こんなことは間違っているって。


「────」


 知らない人の声。


 それは、私に救いの手を差し伸べる。


 だから、私はその声に身を委ねた。




 〈春野侑希〉


 私はいつも姉を羨んでいた。

 自慢の姉だったから。


 次第にその思いは忘れていく。


 ただ、姉を嫉むようになっていく。

 姉が誰のために走るのかなんて忘れて。


 あの日、私は気付けなかった。

 だから姉に守られた。


 そのときに願った。

 姉の無事だけを。

 でも、少しだけ後悔があったのかもしれない。

 どうして自分が助かるのだと。


 気付くと私は姉になっていた。


 でも私は忘れていた。

 何が目的なのかを。


 だから、私は恨みを晴らそうとした。

 どうやたったって、それは誰も望まないことなのに。


 今ならわかる。


 こんなことは間違っているって。


「────」


 聞き覚えのある声。


 それは、私に救いの手を差し伸べる。


 だから、私はその声に身を委ねた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ