7分で読める異世界転生
私は、しがないOL。32歳。
完全に婚期を逃してしまっている。
今日も今日とて、合コンに参加してみるも、男を捕まえることは出来なかった。
私
「(*´Д`)はぁ。今世は結婚出来そうにないなぁ……」
そんなことを呟いているとき、信号無視のタクシーに轢かれた。
私、死亡。
ああ、世界よ。さようなら。
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私
「ん、ここはどこだ?天国か?」
イケメン男子
「こんな道端で倒れて、どうなされたのですか?」
私
(きゃ、イケメンだー。変な恰好だけど)
私
「ええ、大丈夫です。ここはどこでしょうか?」
イケメン男子
「此処は ”ログルス王国”の領土で、カラバスの町です」
私
「なるほど(何言ってんだこの人)」
イケメン男子
「怪我は無さそうですね。この町に来るのは初めてですか?」
私
「はい、絶対初めてです」
イケメン男子
「そうですか。この町はいい街ですよ。是非楽しんでいってください」
私
「はぁ」
イケメン男子
「では、私はこれにて」
私
(逃すか、未来の旦那)「ちょっとお待ちを!」
イケメン男子
「どうなされました?」
私
「私、右も左も分からなくて……良かったら町を案内していただけませんか?」
イケメン男子
「そうなのですね……うーん、私もこれから用があるものですから。あ、そうだ。私の付き人に ”トルネ” という若者がいます。その者に案内させましょう」
私
「その人はイケメンですか?」
イケメン男子
「イケメン……とはなんでしょうか?」
私
「いえ、すいません。とりあえず トルネさんに会いたいです。候補は多い方がいいので」
イケメン男子
「?分かりました。それでは紹介しましょう。トルネ、来なさい」
トルネ
「は、如何なされました、アルバス様」
私
(うわ、急に現れた。手品かな?)
私
(おお、トルネもかっこいい……けど、子供すぎるかなぁ……多分10代でしょうねぇ……)
私
(ここはご主人狙いだな)
イケメン男子
「この子に町を案内してあげて欲しいんだ。頼めるかい?」
トルネ
「御意、お任せください」
私
「あのー、やっぱり町の案内は大丈夫です……替わりにアルバス様の用事に私も付いていきたいのですが」
トルネ
「……!?この女。なんと無礼な……!」
イケメン男子
「抑えなさい、トルネ。……その申し出はありがたいけれど、用事というのが恩人の元に出向くというものなのです。ですから、出会って間もない貴方を同行して参るのは、相手方を困惑させてしまうで……」
私
「大丈夫です。私、アルバス様の傍に居たいだけなので」
トルネ
「……アルバス様。この女斬りますか?」
イケメン男子
「冗談はよしなさい、トルネ。……それにしても困った子だな。仕方ない、付いてきなさい」
私
「わーい、やったー」
トルネ
「いいんですか?アルバス様」
イケメン男子
「いいよ、見た限り、害を為すつもりはなさそうだ。こういう縁にも何か意味があるのだろう。これから会う私の師ならば、きっとそう言うにちがいない」
トルネ
「……貴方がそう仰るなら……」
私
「さあさあ、そうと決まれば早く行きましょう」
トルネ
「チッ……女、あまりはしゃぐなら、本当に斬るぞ」
私
「貴方、年下のくせに生意気ね」
トルネ
「年下?はん、どう見ても同い年くらいだろうが」
私
「は?自慢じゃないけど、私32歳だから」
トルネ
「あん?まじかよ。どんだけ若作りしてんだよ」
私
「殴るわよ」
トルネ
「殴れよ。だが、代償にその腕を切り落としてやる」
イケメン男子
「ほら、二人とも早く行くよー」
トルネ&私
「あ、はーい」
こうして私は、イケメンと生意気なガキに出会った。
この出会いが私の壮大なる旅の始まりとなるのだった。
向かった先で、イケメンの師たる男から、私は自分が異世界にやってきたことを教えてもらった。
100年に一度くらい、別の世界から凄まじい力を持つ若者がやってくるそうだ。
私もどうやら、その一人みたい。
その異世界人達は、皆 ”勇者”か”魔王”になるのが、セオリーらしい。
(過去作 【3分で読める異世界転生】 【5分で読める異世界転生】 を参照。すごい。なんて、さり気ない宣伝なんだ。)
トルネ
「この女は絶対 ”魔王”になりますよ。ここで倒しましょう」
私
「あんた、ほんとに口が減らないわね。私は 勇者にも魔王にもならないわよ」
トルネ
「じゃあ、何になるって言うんだよ」
私
「お嫁さんよ」
トルネ
「誰の?」
私
「アルバス」
トルネ
「やはり、ここで斬る」
イケメン男子
「こら、二人とも。まだ、師匠の話は終わってないよ」
そっからの師匠の話は、大して面白くなかったので割愛。
イケメン男子
「実は、僕も勇者の末裔なんだよ」
やった、アルバスも地球人の血を引いていたらしい。
これは、血のつながり的な意味でも、二人は結婚するしかないかもしれない。
いや、血が繋がってると結婚できないか……いや、異世界だし大丈夫か。
私とアルバスとトルネ。あと、途中で変な占い師の女も仲間になって、なんやかんや複雑な事情とかもあって、この世界で暴れているという ”魔王” を倒しにいくことになった。
見事、魔王を倒すことに成功したけど、その後、アルバスはその変な占い師の女と結婚することになってしまった。
私
「。゜(゜´Д`゜)゜。うえーん。私が先にアルバス狙ってたのに、ネコババされたー」
トルネ
「そりゃ、誰だって、アニス(占い師の女の名前)を選ぶだろ。性格も、スタイルもいいし。何より美人だ」
私
「もう、最悪……折角、異世界に来たのに何もいいことなかった……」
トルネ
「俺は、そうでもないけどな」
私
「へ?」
トルネ
「俺は、お前がこの世界に来てくれてよかった……と、思わないでもない」
私
「何それ?ツンデレ?流行らないよ、今どき」
トルネ
「うるせぇ、ほら、さっさと帰るぞ」
私
「帰るって……私帰るとこないし……」
トルネ
「……俺ん家に来ればいいだろ」
私
「え……いいの?」
トルネ
「アルバス様の付き人の任も終わったしな。暇で仕方ないから、お前と一緒に居てやるよ」
私
「ありがと……トルネ」
私たちは半年後、無事に結婚した。
というわけで、異世界に来たおかげで結婚することができました。やったぜ。
ちゃんとイケメンだしね。
終わり