表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

野党 2

 振り返るが背後には誰もいない。キョロキョロと周囲を見回す野党たちに、さらなる笑い声が降りかかる。


「上か!?」


 声は頭上から聞こえてきた。


 見上げると、少し高い木の枝に腰掛けた少年の姿。何がおかしいのか、目尻に涙すら浮かべながら爆笑している。


 額にかけられたゴーグルと、右手には金属製の義手・・・。少年の特徴から、ターゲットのハンターだと判断した大男は、右手に握っていた安ものの銃を構えた。


 会話などする気は無い。その素早い行動に、少年・・・トレジャーハンターのカイトは少し驚いたように目を開く。


「シネ」


 そして男が引き金を引くその刹那、カイトは靴の踵を打ち鳴らして ”歩み続けるもの”を発動した。


 靴の踵部分から飛びだした排出口。吹き出した大量の空気による推進力を利用して、カイトはフワリと宙に浮く。弾丸を回避したカイトは、そのまま地面に降り立つと、驚いた様子を見せている手前の男を、鉄の義手で強かに殴りつけた。


 子供とはいえ、ハンターとしてあらゆる苦難を乗り越えてきたカイトの攻撃は鋭く、殴られた男は一撃で意識を失った。


 仲間をやられて動揺している他の野党達。しかし、流石というべきかリーダー格の大男だけは冷静に銃口をカイトに向けた。


「はっはぁ! こんな狭いとこで安ものの銃が役に立つと思ってんのか?」


 華麗なステップを踏むカイト。銃を構えた大男は舌打ちをする。味方が邪魔になってカイトを狙えないのだ。


 相手がもたもたしている間に、続けざまに野党達をノックアウトしていくカイト。正式な武術を学んだような効率的な動きではないものの、数々の修羅場を生き延びてきたカイトの動きは、動揺している野党が捉えきれるようなものではなかった。


 その様子を見て、リーダー格の大男は深いため息をつく。手にした銃を投げ捨てると、何故か耳栓を取りだして両耳につめはじめる。


 その奇妙な行動を、戦闘中のカイトは見ておらず、故に対策をとることができなかった。


 大男は懐から何か銀色に光る球体を取り出すと、部下達とカイトが戦闘をしている場所に向かってそれを放り投げる。


 緩やかな放物線を描いて飛んでいく銀色の球体。それは地面に触れた瞬間に起動した。球体から発されるは、その小さな球体からは想像もできないほどの爆音。まさに音の爆弾と称するに相応しいほどのその爆音は、耳栓をしていた大男を除いた、周囲の人間すべてを行動不能に陥らせる。


「!?・・・ッカッは??」


 ぐらぐらと揺れる視界と気分の悪さに、思わず膝をつくカイト、先程の爆音の影響で耳が全く聞こえない。


 どこからか取りだしたナイフを手に、カイトの元に近づいてくる大男の姿。いかにカイトとはいえ、この状況から反撃の術は残されていない・・・大男は静かにナイフを振り上げ・・・・・・。

 乾いた銃声が森に鳴り響いた。


「・・・・・・そうか、ハンターは二人組だった・・・な」


 悔しそうにそう言いながら、ゆっくりとその巨体が倒れる。その背後には、旧式のリボルバーを構えた少女・・・カイトの相棒であるカナミの姿があった。


 カナミはその可愛らしい顔をニヤリと意地悪く歪めると、地に膝をついているカイトを嘲った。


「あーら、一人で十分じゃなかったのかしらん? ダッッサ!!」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ