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野党

「兄貴、ガキ共はこの先で野宿をするようです。キャンプの準備を始めていました」


 媚びたような声音で報告をする小柄な男。小男に兄貴と呼ばれたのは、その頭をつるりと剃り上げたスキンヘッドの大男。鋭い眼光と、服の上からでもわかる隆起した筋肉が、見るモノに彼が只者では無い事を悟らせる。


「この先ね・・・・・・っふ、ハンターとはいえ所詮ガキか。こんな見通しの悪い場所でキャンプをするなんて、まるで襲ってくれと言わんばかりじゃねえか」


 大男の言葉に、取りまきのゴロツキたちが下卑た笑い声を上げた。


 彼らは所謂盗賊というやつだ。自身のテリトリーに入った哀れな獲物達に情け容赦なく襲いかかる獣。


 それに、今回はとある人物から依頼も受けている。


 その人物曰く、「今からこの場所を通るトレジャーハンターのガキ二人を殺害しろ。報酬はお前達の見たことも無い額を用意する」と。


 普段ならそんなふざけた依頼は受けない。


 そんなふざけた依頼をしたヤツを八つ裂きにして、金をふんだくるだけだ。


 しかしその人物は、彼らのような裏の人間にとってはかなりのビッグネーム・・・・・・恩を売っておいて損は無い人物であった。


(・・・それにガキを始末するだけ大金が手に入るんだ。おいしい話じゃねえか)




 草木も寝静まった深夜。野党達は静かに行動を開始する。


 粗暴に見える彼らだが、深夜の襲撃に関しては慣れたもので、一切の物音を立てずに目的地まで移動する。


 各々の手には武器を持っており、ナイフや手製の棍棒、また安ものではあるものの銃器を持っているものまでいる。


 殺意を剥き出しにした集団は、やがてその場所やがて目的の場所にたどり着いた。


 うっそうと木々が生い茂った森の深く、その少し開けた場所に簡易的な布テントが張ってある。


 ターゲットはテントの中だろう。リーダー格の大男は、背後の部下に目配せをした。指示をだされた部下は、懐から薄汚れた小瓶を取り出すと、テントの周りにその中身をぶちまける。


”ガソリン”


 文明が廃れたこの時代にはかなりの高級品で、売ればかなりの値段になるこの化石燃料を、男達はターゲットを殺すためだけに惜しげも無く使用する。


 それは、相手が子供とはいえ、トレジャーハンターであるという警戒心の現れだった。


 男達は粗暴ではあるが、馬鹿では無い。トレジャーハンターがどういう存在なのかは知っている。


 テントの周囲にガソリンをまき終えた事を確認したリーダーの男は、小さな声で指示を出した。


「燃やせ」


 擦られたマッチが、たっぷりとガソリンの染みこんだ布テントに着地する。一瞬の静寂の後に、ボッという短い音を立てて一気に炎が燃え広がる。


 煌々と闇を照らす炎を見つめながら、リーダーの男は油断なく武器を構える。


 しかしいくら待ってもテントの中から人が出てくる様子は無い。炎に巻き込まれて死んだのだろうか?


 こんなに呆気なく?


 疑問を覚えたその時、背後から馬鹿にしたような少年の声が聞こえた。


「よお、オッサン達。こんな時間から大の大人が首をそろえてキャンプファイヤーかい? 可愛いとこあんじゃねえの」



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