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○街路灯

 街路灯を部屋に連れ込んでダンスするとき

 あなたの瞳に映った私の顔はがらんどうで

 うつろう意識がさらさらと消え去っていく

 宝石なんてもう要らないと言っても聞いてはもらえなくて

 今夜は月が出ないからと手を取り合うのを

 一条の光が静かに見つめていた




○爆ぜていきたい

 有り得べからざる誤謬というものが有り得ないのと同じように

 有り得べからざる成功というものもまた有り得ないのだとするのなら

 私は生き返った小魚のように息を吹き返し

 朝は太陽のように大地を照らし

 夜は月のように人々の心を照らし

 最期は堕ちていく天使のように爆ぜていきたい




○海と川

 海に入っていくことに死を感じるよりも

 川に入っていく方がずっと死を感じさせるのは何故だろう

 海が死そのものであるから?

 川が死に至るための道であるから?

 私はもうずっと海を見ていない




○夏一篇、削がれた意匠

 いつかは待ち焦がれた夏も

 今は酷暑がただ憎くて

 秋の到来を待つばかり

 あの日あのときの思い出も

 今では違う世界の夏のようで

 時の流れの鋭さに

 ただ息を呑むだけ


 プールの底に足がついた夏

 汗疹ができるまで走り回った夏

 甲子園の面白さが分かるようになった夏

 ひぐらしの物悲しさを知った夏

 静かに頭を垂れた夏


 そうした夏はどこへ行ったのか

 夏を探しに出かけたまま

 溶けかけた秋が私を待っている




○燃え残った星屑の同胞よ

 この夜の中で


 きっと虚空を睨んだ先には


 放射線状に広がるミラーボールの光を浴びながら


 高速道路を走る車のライトや夜通し点きっぱなしのマンションの明かり


 僕が求めるものは何であってもあそこにあるようなものでは決してないはずなのに


 僕はそこに夢を見るんだ




 燃え残った星屑の同胞よ


 生きていくということの辛さや虚しさを知りながらそれでも生きていくことを選んだ者よ


 きらびやかで華やかなその世界に実態のないことを知っているだろう


 夢を見ることの難しさを知りながらそれでも夢を見続ける


 そんな君を助けることはできないけれど


 帰る場所はここにあるんだよ

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