すり傷だらけの箱
新たなスキル接着剤と次元注型。
接着剤はアイテムの補修、改造用で周りの素材と同化して接着する。
なるほど、これは人体には関係ない生産系だな、と言うかむしろこれが一番模型製作っぽいよ?
そして、次元注型あらゆるものを溶かして一つの型にする。
これは良く分からんな、おいおい調べていくか。
HP、MP共に回復したので俺は次の階層に向かった。
◆60階◆
この階層は広いドーム状の広場で何もなかった。
ただ中央に一人の少女が立つ。
冒険者? いや、人形の魔物だ、常闇ノ不死王名前からしてアンデット系なのは間違いないだろう。
だがそのステータスは異様な高さを誇る、と言うかこいつ魔物なのにレベルがあるぞ。
しかもレベル999、カンストしてるのかこれ。
「よぐぎ……ん、んっ。ごめんね喋るの久々だから。んっん″っ!」
魔物が喋った? て言うかあれかニートか? こいつニートなのか。
「よく来たね冒険者君、私がダンジョンマスター|常闇ノ不死王《エイジリアのエミリよ」
俺が躊躇しているとさらにまくし立てる。
まるで久々のおしゃべりが楽しくて止まらなくなってる感じだ。
「あ、今魔物が喋ったとか思ったでしょ。失礼ねこう見えても元は人間よ。今は魔窟ドミニティのダンジョンマスターやってるけどね」
「ダンジョンマスターつまりここが終点か」
「そうねここが終点、あなたの最終目標地点でもあるわね。それにしても古代竜がやられるとはね」
そう言うと嬉しそうにクスクス笑いだした。
俺はアイテムボックスから先ほど古代竜からドロップした槍を取り出した。
神槍 グラビオン
俺は槍を構え髪に魔力を流し身体強化をした。
「ちょ、あなたまず何か着なさいよ」
そう言えば真っ裸だった。
アイテムボックスを探したが汚い布しかないあとは鎧か、サイズ会わないだろうなこれ。
いや待てよ? 部位交換はサイズ調整出来るだろ、増加形成も調整できる、つまり造型師自体に調整機能があると言うことか?
試しにアイテムボックスから俺のワイヤーフレムモデルを思い出して取り出す。
見た目はちょうど良さそうだ。
まずはインナーを着てみる。
色が白で聖域の守護と言う上下セットの服だ。
そしてその上に鎧を装着する。
これは黒色の鎧で冥王ノ鎧と言うらしい。
白と黒でまるで葬式の鯨幕だな。
「そうそう、それで良いのよレディの前では気を使ってよね」
ヒーローの変身を待ってくれるとか好感度が上がるわこいつ。
だが。
「御託はいい、いくぞ」
俺は渾身の突きを放った。
「ちょ、待ってよもう少し話そ?」
このごに及んで話すことなどない。
全開攻撃の槍の矛先が常闇ノ不死王を襲う。
槍は常闇ノ不死王を貫いた、しかしまったくと言って良い程に手応えがない。
何度やっても常闇ノ不死王にダメージを与えることができないHPが全く減ってない。
「不思議でしょ? 私の実体はそのやり方じゃ殺せないんだなこれが」
実体? つまり今見えてるのは虚構のものと言うことか。
良く見るとマップの光点もない。
「ちなみにこちらからはいくらでも攻撃できます」
「はぁ? ズルくね? 無敵じゃんか」
その言葉に口に手を当てクスクスと笑う、そのしぐさが不覚にもかわいいと思ってしまった。
まあ、見た目は黒髪茶眼の少女で日本人らしい顔立ち……。
日本人らしい……。
「お前もしかして日本人か?」
その問に彼女は体をビクッと振るわせコクりと頷くと空間から一つの箱を取り出した。
それはすり傷の入ったHRGガンダロンの箱だった。