嫌われたくない女神は理を覆す
貿易都市サラメス、人口10万人この街は商人が優遇されており、商取引に関するあらゆる税が免除されている。
俺たちは商隊と言っても商人ではないので入場税を払わなけなばいけないのだが、お互いの町の取り決めでギルドの商隊は無税、更に商人よりも優先して門を通れる取り決めがなされている。
これは都市の魔道具が魔物の魔石で賄われておりギルドが送ってくれる魔石がないと街の運営が立ち行かなくなる為だ。
都市が発達すればするほど魔石の消費が増え需要を満たすために魔窟を管理するギルドに便宜を図らなければいけなくなるのだ。
あれ? デジャブ?
俺達は門を通り荷馬車をサラメスにある冒険者ギルドに預けると街を散策するために外出した。
ギルドを出た俺をメリリとクリリが追いかけてくる。
一生懸命追いかけてくる姿が愛らしくて自然と笑みが出る。
追い付くと息を整えて身だしなみを整える二人を手扇子で落ち着かせる。
「カオスはこの後どうするの?」
「俺は街の中を散策かな、おみやげも買っていきたいしね」
「おみやげ? カオスって結婚してるの?」
なんで結婚ってなるんだ?
って、この世界じゃ結婚適齢期早いにかもしれないな。
俺、たぶんおっさんだわ。
「してないよ。昔馴染みの子にね、殺風景な部屋だから何か良いものがあればと思ってね」
「部屋……。そ、その子と付き合ってるの?」
しつこいなこいつ、そんなにキモ面の俺が誰かと付き合ってたらおかしいのか?
だが俺は嘘はつかない主義だ!
いないものはいない!
「ん? いや、そんな事ないけど?」
「そうなのね? そうだよね!」
そうだよねって地味に傷つくらやめて、おっさんのHPは0よ。
地味に傷つきながら露店商を散策するとキラキラ光る髪止めを売っている露店商の前で足を止めた。
それは貝殻を磨いて宝石のように光らせて細工された髪止めで、とても美しかった。
その時、面前にメールマークが点滅した。
おう、女神様今日はやに積極的。
メールをクリックして展開する。
◆◇◆◇◆
未婚の男性が貝の髪飾りを未婚の女性にあげるの行為は結婚してくれと言うことです。
気をつけましょう。
by 鬼道兵器ガンダロン、ズオン公国派の女神クトリスより
◆◇◆◇◆
危ない、まじか。
髪飾りあげると結婚したことになるとか異世界常識知らない奴にはトラップすぎるだろ。
でもこれ綺麗だなこう言う製品好きなんだよな。
とりあえず買っておいてコレクションしとくか。
俺は一番好みにあう髪飾りを選び購入した。
形は妖精を模したもので、胴体がミスリルで羽が貝殻を磨いたものがはめられていた。
「え、うそ。カオス結婚するの?」
「しないよ、観賞用に買っただけ」
そっか。普通、男の人は自分用に買わないけど。となんかブー垂れてたので、近くの露店でりんご飴みたいなものを買ってやったら機嫌がなおった。
単純なやつだ。
「ねえ、カオス知ってる? このアメは好きあった男女が買って一緒に食べるんだよ?」
そう言って食べかけを俺の口に向ける。
おい異世界、馬鹿な風習ばかりつくってんじゃねぇぞ。
と思ったがなにげに地球も馬鹿げた風習あるよな、いやあれはジンクスか。
異世界常識トラップこわいわ。
「御一人でお食べください」
俺はそう言って口の前に手を置いて、食べさせようとするのを防いだ。
我ながら最低だが、この位やらないとこの子達いつまでも付きまといそうでな。
いつまでもついてくる二人がわずらわしいので、マップを使い人のあまり来ない場所を探すと海辺の崖があったので、そこへ二人を連れていった。
″助けた美人姉妹が実は凄腕の殺し屋、油断した男を崖下に突き落とす鬼畜外道の女達、窓際刑事が事件の真相に迫る、貿易都市殺人事件。″
なんて題名が出そうな崖に来たわけだが、とても景色がよく二人とも喜んでいる。
『ケバ子、こいつらいつまで着いてくるんだ?』
『カオス様に助けられて惚れちゃったとかですかね?』
『さすがにそれはないでしょ』
っていつの間にかケバ子と普通に喋っていた、くそが死ね。
「嫌なこと思い出させて悪いけど二人はクランチのことはどうするんだ?」
「彼とはただの臨時パーティーよ?」
「いや、クランチは凄いとか、剣をクランチにあげろって言ってたじゃんか」
「あれはカオスがいけないんだよ」
先輩冒険者に挨拶はしない、新人なのにゴブリンは連れてるわで規格はずれな行動をするから虚勢を張ったらしい。
それに最初のゴブリン戦は本当にピンチだったらしい。
それで戦わない俺に怒って剣を渡せって言ったのだそうだ。
「しかも途中で仕事放棄してどこかいっちゃうし」
一応魔物倒しにいくって言ったよね?
あ、言ってないわ、クランチにだけ言ったんだった。
「そうか、なら構わんかな?」
「おいクランチ出てこいよ」
物陰に隠れて襲うタイミングを計っていたようだが、俺にはマップがあるバレバレだ。
「俺の女を返してもらうぜ」
「お好きなように。と言いたいところだが」
俺は一瞬で距離を縮めクランチの首を切り落とした。
メリリとクリリが叫び声をあげる。
まあ普通に考えたら人殺しだもんなこれで嫌ってくれれば万々歳。
だが。
「おい、悪魔さんよ。このくらいじゃ死なないんだろ?」
「ふははは、良く我輩が悪魔だとわかったであるな」
そう言うと背中からはコウモリのような羽、頭部からは羊の角尻からは尻尾がニョキニョキと生えてきた。
「テンプレ通りの悪魔だな」
「テンプレ? なんのことであるか?」
「ああ、気にするなこちらの話だ、で逃げるなら今だぞ? お前が連れてきた仲間達のようにな」
「人の身で我を殺すと言うのか? 滑稽、滑稽。虚勢もここまで来ると笑いしか出ないわ」
「悪魔と分かってお前の正体を暴いた俺が、お前を倒せないと思ってるのか?」
「ブラフだ! 我輩は魂だけの存在、それを倒すことなど不可能である」
「おい、俺に本気を出させるなよ。どうなっても知らんぞ」
「ふん、ならば此度は貴様の口車にのってやろう。我が名は悪魔軍曹デオルフ覚えておくが良い。では去らばだ」
そう言うとウルトラ◯ンのごとく空を飛んでいった。
危なかった。ブラフに乗ってくれなかったら、やられてたぜ。
魂だけの存在とかエミリかよ!
エミリ殺す方法見つけたら、お前で試し切りしてやるわ!
俺は心の中で高笑いをして、空を飛んでいく悪魔を見送った。




