コボルトの襲撃
翌朝クランチの姿はどこにもなかった。
生きていたことを喜ぶべきか、逃がしたことを悔やむべきか。
まあマップで確認できるんだけどね。だが奴の冒険者人生も終わりだろう自分より上の冒険者に媚をうって生きていこうとしてた奴が、こんな不手際を起こしちまったんだからな。
この商隊のリーダーであるフリタスは昨日の件には絡んでいない。
一人でスヤスヤ寝ている。
あれだけ騒いだのに起きないとは、さすがに冒険者失格だろ?
部屋の中を見るとメリリとクリリはまだ寝ている。
口を聞かなきゃかわいいな。
『カオス様朝食の準備ができました』
『手際が良いなケバ子ちょうど腹が減ったところだ』
「おい、起きろ」
俺は二人の体を揺り動かした。
「キャー」
油断した。平手打ちを食らいました。なぜあんなスローモーな平手打ちを避けられなかったのか。
多分お約束の神様が居るんだろうな。
「俺だ、もう朝だぞ」
「あ、ごめんなさい」
まあ、昨日の今日だ殴ったことは許してやろう。
だが次はないからな、次に殴ったら許さないんだからね!
二人は俺の後を離れずについてくるやはり怖いのだろう。
「クランチならいないぞ、逃げたようだ」
「そうなんだ」
その顔には安堵の表情がうかがえる。
気が緩んだせいかメリリのお腹がキュ~とかわいい音を立てて空腹の意思表示をする。
『ケバ子、朝食こいつらの分ある?』
『はい余分に作ってあります』
「朝食あるけど食べるか?」
俺は二人を朝食に誘った。二人は昨日馬鹿にした件もあり戸惑ったが俺が手を取り無理矢理つれてくると美味しそうにパクついた。やはりあんな携帯食じゃ腹へるよな。
朝食は芋と鶏肉だ。
あれ、鶏肉なんて捕った覚えないんだが。
『私が先程狩ってきました』
ケバ子は受付をやる前は採取や狩りがメインの冒険者だったらしい。
なのでこう言うのはお手のものだと言う。
よく見るとお手製の弓矢まである。
なんなのこいつ、なにげにケバ子のスペックが高くて悔しい。
俺はケバ子からお手製の弓を取り上げるとアイテムボックスかにしまった。
戸惑うケバ子をよそに俺はメニュー画面を開く。
接着剤を使い魔物の素材を弓につける。
素材は最適解を押すと自動で最良の素材を選び出す。
ただこれは極振りには向いてない、あくまでもバランス型なのだ。自分で選べるよう素材の研究もしないとな。
完成した弓をアイテムボックスから取り出すと、伝説級の武器に仕上がった。
◆豪雨ノ弓
(レジェンダリーウエポン)
品質スコア:8/10
最大同時に3本の光矢が敵を撃つ。
製作者ラディア&カオス
品質が微妙だな、それにラディア? 誰それ、まあ良いか俺はそれをケバ子に渡した。
どうよ俺の方がお前よりすごいんだぜ。意地である飼い主としての意地である。
ケバ子はそれを抱き締め喜ぶ。
親愛度が150%越えた……。
「ごちそうさまでした」
「……ありがとう」
メリリとクリリが食事を終え俺にお礼を言う。
気持ち悪い奴におごられる飯はさぞかし不味かろう。
だから気にするなと言ってやった。
ざまぁである。
昨日キモいと言った男に助けられた上に飯おごられてざまぁなのである。
朝食が終わってほどなくしたら出発することになったがクランチが居ないことにフリタスが気がつく。
俺に事情を聴いてきたがむしろザコルフ達の方が知ってるんじゃないかと言ってやったら。何か勘違いして納得したようだ。
ザコルフってそっちもOKなのか、注意しとこう。
出発してからも二人が俺のそばを離れない。
さすがに任務中で暴行するほど、あいつらもバカじゃあるまいし。
「ねえ、あなたの名前教えてくれない?」
クリリが俺の名を聞いてくる、まあ今はクランチがいないので俺の名前を知らないと不便だからだろう。
「俺の名前はカオスだ、A級冒険者になる男だ覚えておいて損はない」
「カオス、カオスね分かったわありがとう」
名前を教えてありがとうと言われるとは思わなかったですわ。
もしかして俺の名前変なことに使う予定ですか? 政治家のあれですか? それとも宗教のあれですか?
怖い、名前を教えたあとのあの頬を染めるあたり童貞を誘惑して高い商品を買わせるあれな感じですわ。
その後もカオス、カオスと俺のことを根掘り葉掘り聞き出そうとする。
ヤバイこれ完全にロックオンされてる。
お高い買い物くらいならデートと交換で買ってやっても良いが、宗教は入信しないからな!
しかし、生まれを聞かれた時は答えに詰まった。
取り敢えず孤児と言うことにしてやり過ごしたがそう言う設定を煮詰めといた方がいいなと思い知らされた。
こういう世界には、きっと東方の方に俺に似た人種がいるんだろうと思ってケバ子に聞いたら、黒髪の人種は南方に多いそうだ。
東方の国ないのかよ!
と突っ込みいれてたら犬の顔をした魔物がクリリに襲いかかった。
かなり前から把握してたので二人に俺の方ばかりみないで周り注意しとけよと忠告してやっていたのに無駄になった。
俺はその犬顔の魔物にコークスクリューパンチを食らわせた。
まあ、そんなパンチのやり方なんか知らないから早い話マンガパンチだ。
何となく捻りいれて体のバネ使って殴れば強そうじゃん?
その犬の魔物は頭部を一瞬で吹き飛ばしあっという間に草むらの中に飛んでいった。
″極烈破砕拳″とか叫べばよかったかな。
死体は当然回収しておいた。
犬顔の魔物はコボルトだった。群れをなす魔物で単騎で向かってくるのは珍しいと言うことなのだが。
囲まれてる、先程のは先走った尖兵だったのだろう。
クリリが礼を言うがまだそれは早い。
『ケバ子、コボルトの群れに囲まれている攻撃の準備をしとけ』
『かしこまりました』
俺は全ての荷馬車を止めさせ魔物に囲まれていることをフリタスに伝える。
ケバ子は弓を構え辺りを見回す。
俺はクリリとメリリを側に引き寄せる。
「必ず守ってやるから俺のそばを離れるなよ?」
「ありがとう」「うん」
二人は俺をじっとみる、いや、周り見た方が良いからね? 俺の顔が気持ち悪いからってそんな見ないでね?
″わおぉぉおん″と言う声と共にコボルトが襲ってきたゴブリンより動きが早い。
とは言え俺からしたらスローモー欠伸が出るほどなのだが。
ケバ子が弓でバシバシコボルトを狩る。
一度に3発出るとは言え中々の早打ちだ。
俺も負けてられないな。
「レイン・オブ・ストーン」
その極大呪文を唱えると空から大量の石がコボルトめがけ降り注ぐ。
隕石落としみたいな魔法の簡易版か?
だがその攻撃は簡易版と言うには強力で一瞬でコボルトを鏖殺した。
「すごい、カオスって大魔法使いだったの?」
「すごいです!」
二人が俺に惜しみ無い称賛の麗句をのべる。
ベテラン冒険者達も新人達も俺を取り囲みスゴイ、スゴイのオンパレードだ。
正直、気恥ずかしい。
『さすがカオス様です』
『いや、もうほんと良いから』
俺は喜ぶみんなを落ち着かせ出発を促した。
二人が言うにはコボルトに囲まれたら普通はB級以上の冒険者じゃないと生きて帰れないらしい。
あの程度でB級推奨とかB級ってレベル低いんだな。
A級の確約もらえばよかったかな
と後悔しつつも貿易都市サラメスに到着した。




