瘴気病
宿に着く頃にケバ子が俺に病気の妹にお別れをさせて欲しいと言い出した。
てっきり命乞いの為の嘘だと思っていた俺は妹のことを失念していたことを詫びてしまった。
ケバ子に謝ってしまったくそが。
俺は妹に会いに行くにを許可した、だがその前に寄る場所があると言う。
ついていくと朽ち果てた教会の中に入っていった。奥の部屋に行くと隠し扉がありその中に皮袋があった。
袋の中は金で、今までに裏家業で稼いだ金だと言う。
「これを妹に渡していただけませんか?」
ケバ子は俺にこの金を妹に渡すように懇願する。
俺はその金を受けとると教会の窓を開け周りにいる孤児達にお金を渡した。
ケバ子はその場で泣き崩れ身もだえる、俺を殺したいほど憎いのだろう、だが知ったことか。
かなりの孤児がいたのですぐに袋の金はなくなった。
「なにか言いたいことはあるか」
「こ、殺してやる」
地獄の苦しみを味わっているのによく言う。
「お前は人殺しに荷担した汚い金を妹に渡すのか」
「それでも、それでも生きて欲しいの」
ふん、他人の命は簡単に奪うのに身内の命は大事かワガママなものだな。
俺はアイテムボックスから金貨を30枚取り出し袋に詰めケバ子に投げた。
「渡したければ自分で渡せ。それとその金はお前の今後の給料の前渡しだ」
「な、なんで」
「気まぐれだ気にするな」
「でもこの姿じゃ」
俺は部位交換でケバ子をもとの姿に戻した。
「別れの挨拶をしてこい。もう会えることはないだろうからな」
「はい」
答えたケバ子が暗闇から姿を表す。
そこに居たのは清楚さんよりも清楚な女性だった。
え? 誰これ?
どういうこと? よく見るとケバ子の面影がある。
ケバ子は化粧を落とすと清楚系美人だった。
詐欺かよ。
まあ良い、美人だろうが俺がやることは変わらん。
アイテムボックスから服を取り出しケバ子に渡す。
「俺はここで待つ、はやくいけ」
まあ十中八九逃げるだろうな。
自分の運命だ自分で決めさせよう。
従属体は俺から命令無く10km離れると、体を破裂させて死ぬ。
この街は半径5km程の町だ、妹がいる家までは10kmを越えない。
だから家に向かっただけでは死ぬことはない、だが逃げ出せば確実に死ぬ。
しかしなんでケバ子の奴化粧が落ちたんだ?
俺はアイテムボックスからオーガの腰巻きをとる出した。
それはまるで新品のようにきれいで臭いにおいなど微塵もしなかった。
なるほど、アイテムボックスはその製品毎にちゃんと分けてるから汚れはその製品の一部じゃないから取り除かれてるのか。
つまりケバ子も化粧は汚れ認定されて落とされたわけだ。
洗濯機いらずだなこれ、女神様が現代人の俺のために用意してくれたんだろうな、ありがとうございます女神様。
ケバ子の動きが止まった、あそこが家か。
一応マーキングしておくか。
妹のステータスチェック
瘴気病:魔物の出す瘴気に汚染された肉を食べると毒素が体を汚染し死に至る。
解毒魔法ジャマナルで回復することができる。
ジャマナルか。俺は魔法を一つ一つ調べた。
あった大魔法クラスの魔法だ。
このレベルの魔法になると覚えられる魔法回路持ちも希少だし魔法自体も高い。かけてもらうために大金を請求されても仕方ないか。
ケバ子が家を出た、妹は家に残っている。
妹を連れて逃げると思ったんだが……。
俺は教会を出るとケバ子の妹がいる家に向かった。
家はバラック屋でみすぼらしかった。
鍵はさすがにちゃんとしていた。だけど、魔法の鍵解除の前では無いに等しい。
俺が中に入ると少女がベットで寝ており鼻をすすり泣いていた。
息も荒く苦しそうだ。
「だ、だれ? お姉ちゃん? ひっ」
俺の姿を見たケバ子妹が必死に壁際に逃げる。
そりゃ鍵閉めてたのに鎧兜を被った人が家の中にいたらびびるわな。
「怖がるな、俺はお前の病気を直しに来た女神様クトリスの使いだ」
女神様ごめんなさい。名前使わせていただきます。
女神クトリスはこの世界神で神の名を語る人間存在しない。
それほど崇拝されている。
そしてそれを聞いたケバ子妹は服をただし教徒がする神を崇めるしぐさをする。
宗教にはまってる奴を騙すのはちょろいな。
「汝の苦しみ、今ここで解放せり」
頭に手を置きジャマナルをかける。
ケバ子妹の体から毒素が消え失せみるみる顔色がよくなる。
「これで汝は苦しみから解き放たれた、妹思いの姉に感謝するのだな」
「御使い様。姉を、姉もお助けください」
話を聞くと、姉に別れを告げられ大金を渡されたと、多分身売りをしたのだろうというのだ。
あながち間違っていない。
「安心するが良い彼女の身の安全は我が保証しよう、今は心安らかに眠るが良い」
俺は催眠魔法をかけケバ子妹を眠らせた。
俺は部屋を出て鍵を閉めると教会に戻った。
俺が教会に戻ってから暫くするとケバ子も戻ってきた。
その頬を涙に濡らして。
「逃げないのか?」
「あなたからは逃げられる気がしませんしお金をいただきました、あのお金で妹は救われるでしょう」
ただあの子がちゃんと生きていけるか心配だと言う。
心配事っていくら消してもなくならないものだな。
「安心しろ、妹の瘴気病なら俺がさっき魔法で治してやった、それに今後の事も俺が気にかけておこう」
その言葉を聞くとケバ子は土下座して俺に頭を下げる。
俺はケバ子を元のゴブリンに戻して宿に戻った。




