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Route Of Elsion  作者: 世界史B
忘れられた爪痕の世界の中で
13/53

痛み、傷み、悼み

カントは生まれてこの方女の子に殴られた経験は無い。ミサキとは口喧嘩こそすれど手が出たということもなかった。しかし今、カントは初めて女の子に殴られた、しかもグーで。

「何で逃したの?」

エルシオンから出た途端にメイリンの鉄拳を食らったのだ。カントとしては訳がわからない。逃げる敵を追えばこちらがやられるリスクも高まるし第一戦う意味が無い。カントはそう考えていた。

「わからない?」

ここで張り合っても仕方がないとカントは素直に頷いた。

「ここで敵を逃したらボクたちの場所が敵全体に知られることになる。この危険さはわかるでしょ?」

カントははっと息を呑んだ。宇宙に、ソディアに乗っている時、カントは常に追いかける側だった。しかし今は違う。カントの後ろにあるのは戦艦でも軍人でもない、戦う力を持たない一般人だ。その上エルシオンの情報も持って帰られてしまった。

今度は大部隊を差し向けてくるだろう。だがこのトレーラーにいる人たちを守ることができるのはカントとメイリンしかいないのだ。しかしメイリンのバイクの小型ミサイルでは牽制程度のにしかならない。実質戦えるのはカントだけということになる。

そうなった時自分は果たして全員を守りきれるのだろうか、カントは先程の戦いを思い出した。

「ごめん」

「君が宇宙でどんなに緩い戦いをしてきたか知らないけどここでは通用しない。覚えといて」

そして踵を返してトレーラーに入ってしまった。おそらくまた移動しなければならないということを伝えにいったのだろう。カントは以前にも増してトレーラーに入りづらくなり、エルシオンに戻ることにした。

「はあ、さっきの敵のデータは採れてるか?」

[肯定。メインモニターに表示します]

全天モニターにLAと戦車の情報が表示される。

「[コヨーテ]、武装は推定180ミリ滑腔砲……滑腔砲って何だ?」

滑腔砲とは回転エネルギーを抑えて威力を上げた砲弾を打ち出す兵器である。と、エルシオンが答える前にトレーラーからメイリンが出てきてカントに手招きした。一緒に来い、ということにらしい。



「……というわけだからまたここを離れなきゃいけない」

メイリンが先程の戦闘報告と経緯を皆んなに話した。

「てめぇふざけんな!どうして逃したりしたんだ!」

メイリンの報告が終わるや否やカントはライナに壁に叩きつけられる。大柄なライナに襟を捕まれてカントの足が宙に浮いた。

「やめんかライナ!カントさんがいなければわしらは全員死んでおったかもしれんのじゃぞ!」

「でもこいつが来なけりゃ俺たちは逃げる必要も無かった!違うか?」

確かに最初にコヨーテを破壊し、トレーラーに転がり込んだのはカント自身だ。カントに言い返す言葉は無かった。

「でもカントがいなければボクは死んでた」

メイリンが割って入ってやっとカントはライナから解放された。長い間気道を圧迫されていたため咳と共に肺が忙しなく酸素を要求する。

「大丈夫?」

メイリンがカントに駆け寄る。それをさも面白くなさそうにライナは睨みつけ、トレーラーの運転席に向かった。

「じゃ、俺はエルシオンに戻るわ」

トレーラーの中の空気も微妙なものになってしまった。カント逃げるようにトレーラーを出ようとすると、

「これ!」

アデルに服の裾を引っ張られた。振り返ると水の入ったボトルを抱えている。

「ありがとう!」

カントがあげたボトルだった。この時ばかりは空気の読めない子供が羨ましく、かつありがたかった。

「俺はいいよ、飲みきれなかったらお母さんにでもあげるんだな」

そう言って頭を撫でた。カントはてっきりそのまま母親のもとに走っていくかと思いきやアデルは目を大きく見開いて、言った。

「お母さんはいないよ?」

周りを見渡すと人々は一様に顔を伏せた。

「この子の両親はハイエンに殺された。他にもここにいる人は誰かしら家族を失ってる……ボクもね」

メイリンがぼそりと言った最後の一言はカントには聞こえなかった。しかし自分が何で無神経なことを口走ってしまったのかということは理解できた。

「何か……ごめんな」

「口先だけの同情も憐れみもいらない。コロニーでぬくぬくと暮らしてた君には絶対にわからないから」

カントとしては本心からの言葉のつもりだったのだがどこかに残っていた『可哀想』という気持ちをメイリンは嗅ぎ取ったのだろうか。メイリンはアデルの頭に手を乗せ、微笑んだ。自分より年が下にもかかわらずまるで本当の母親のようだ、とカントは思った。




「ボロン3機にコヨーテ3機だと?たかがルミナスアート1機にか!?」

プラヴァスティの首領、ハイエン ブルニスクは部下の不甲斐なさに対する怒りよりもこの死んだ大地にそんなLAが、パイロットがいたことに驚愕すると共に激しく興味をそそられた。何としても自分のものにしたい、そんな欲望が彼の頭の中を渦巻いていた。

「……奴らの居場所は掴めているんだろうな?」

「はい」

部下からエルシオンと交戦した座標を聞くとハイエンは自分のLAが置いてあるドックへ向かった。

「ち、ちょっとお待ちください。敵は未知の機能を備えているやもしれません。ハイエン様が行くのは危険では?」

「ならばリー、他の雑魚共が太刀打ちできる相手だとでも?」

ハイエンの後ろを片足が義足の小男がせこせことついていく。プラヴァスティ随一のメカニック、と呼ぶにはあまりにお粗末だが合衆軍からの投機材料でコヨーテ78型やボロン、そしてハイエン専用のLAである[ガーボン]を作り上げた。その実績からハイエンに最も買われている人物だ。

「それは……」

リーが口ごもっている間にハイエンはガーボンに乗り込んだ。真っ黒な機体色がハイエンの別名、『黒い悪魔』を際立たせる。

「わかったらお前は下がれ、おいお前ら、行くぞ!」

ハイエン以下2機のボロンがプラヴァスティのグレンダイン基地を出発した。


「あそこか」

砂嵐の奥にトレーラーとそれに追従する1機の機影が見えた。ガーボンにも足底に陸戦機動用の車輪が付いている。だから通常のLAでは出せない速度が出すことができる。

その上レーダーの使えない土地での戦闘をハイエンは何百と戦ってきた。そのハイエンにとって無防備なトレーラーに追いつくことなど造作もなかったのだ。

「まずは小手調べだ」

左手のロケットバズーカを構え、発射する。弾頭は真っ直ぐエルシオンに向けて直進、その背面にヒットし、爆炎が上がる。しかしエルシオンはうまく姿勢を立て直し、ビームブラスターをガーボンめがけて撃った。ハイエンはそれを素早く横に躱す。ビームはガーボンの横を通り、やっと追いついたボロンの1機を撃ち抜いた。

「なるほど、確かに威力はあるようだ。だが……」

エルシオンは更にブラスターを撃ち続ける。ハイエンはひそれをものともせず右へ、左へガーボンの機動力を十二分に発揮して距離をどんどん詰めていく。そしてエルシオンの脚部にロケットバズーカを撃ち込み、マシンガンを掃射する。しかし今度は盾で防がれてしまった。盾にも目立ったダメージは見られない。

「チッ、銃口が見えてりゃビームは躱せなくもないが……バズーカもマシンガンも効かないとはな」

300ミリのロケットバズーカはガーボンが持つ最高火力の兵器だ。貫通力こそ弱いものの面制圧に適した武器である。それとマシンガン、そして近接戦用のコンバットナイフで今までは事足りてきた。しかし今ので内2つが効かない事が分かった。

「面白くなってきやがったなァ!」

マシンガンを投げ捨て、右腕を空ける。そして回避運動をしながらバズーカを立て続けに撃った。1射目は脚部に、2射目も脚部に、そして3射目は頭部を狙った。

ハイエンの予測通りエルシオンは盾で脚部をガード、しかし3射目に反応できずに頭部に直撃を食らう。宇宙製のエルシオンであろうとジャンクLAであるガーボンであろうとメインカメラ等の重要なセンサー類があるのは頭部だ。そこを狙うことによって計器類の故障、最低でも爆炎で視界を塞ぐことはできる。

案の定エルシオンは視界を奪われ盾でコクピットのある腹部を守る。しかしハイエンは素早くエルシオンの背部に回りこみ、コンバットナイフで背部の推進装置を狙った。しかし今度はガーボンの頭部にミサイルが命中、ハイエンの方が視界を奪われることとなった。その隙にエルシオンはブラスターでガーボンに狙いを定める。流石に0距離では躱すのは不可能だ。

「この……」

ブラスターの銃口をコンバットナイフで斬りつける。しかしこれはブラスターを破壊することが目的ではない。エルシオンとガーボンではパワーの面でもエルシオンが圧倒的だ。ハイエンはそれを利用して腕が押し戻される力も利用して後退する。

ハイエンの技術と機転の賜物でガーボンは右腕を失ったもののそれ以外のダメージは最小限に抑えることができた。ロケットバズーカを投げ捨て、そのまま後退してマシンガンを拾う。そして先程ミサイルを撃ち込んだバイクに弾の雨を降らせた。しかしバイクも左右に素早く動き、弾丸を躱す。だがその間にビームがガーボンの隣を掠める。

「クソ!クソ!クソ!」

ハイエンは車輪をフル回転させ、両足で円を描くように機体を回した。地面の砂が大量に巻き上げられる。それが一時的にガーボンを、バイクを、エルシオンを覆い隠した。



「うわっ!何しやがる!」

エルシオンの視界をがまたも砂で覆われた。前回に学び、次の攻撃に備えて盾を構える。しかし不思議なことに敵の攻撃は無かった。しかし砂煙が治るとカントはその理由を思い知ることとなった。

「こいつがミンチになるのを見たくなきゃコクピットから降りて両手を上げろ!」

機体にスピーカーでも付いているのか低い男の声が聞こえた。メイリンのバイクは無残に転がり、本人はガーボンの手に捕らえられていた。LAのマニピュレーターならば人を握りつぶすなど造作もない。

今ブラスターを撃てばガーボンを破壊することができる。しかしそれは同時にメイリンを殺すことになる。顔は見えずともメイリンが自分もろともこいつを殺せと言っているのがわかった。

「なあ、俺はどうすればいいと思う?」

無駄だとわかりながらエルシオンに尋ねてみる。

[当機にそれを判断する権限はありません。しかし当機はパイロットの判断を全力で支援します]

意外な回答だった。今まではカントに対して事務的な回答を示すだけだったが今回はそれに加えてまるで激励ともとれる内容が付け加えられていた。

「……」

[どうかされましたか]

「いや、なんでもない」

カントは軽く深呼吸し、コクピットハッチを開けるボタンを押した。



LAからパイロットが出てきた時、ハイエンは内心胸を撫で下ろした。正直賭けだった。このパイロットが仲間を見捨ててビームを撃つ可能性も十分にあった。ハイエン自身が同じ状況に立たされたら間違いなく撃っていただろう。そもそもハイエンに仲間だと思っている人間などいないのだが。リーでさえガーボン等の整備に使えるから側に置いているだけであって少しでも反抗的な態度を取るようなら容赦なく殺すつもりでいた。



カントとメイリンはプラヴァスティの基地らしき場所に連れて来られた。基地と言っても合衆軍の月面基地のように立派なものではなく粗末な建物が数軒あるだけの簡単なものだったが。その一角、地面を掘りぬいて作られた牢にカントとメイリンは後ろ手に縛られて入っていた。

「どうして撃たなかったの」

メイリンが厳しい目つきでカントを睨む。

「どうしてって、あのまま撃ってたらお前も死んでただろうが」

「死神と心中できるんだったらボクも光栄だったよ。さっきも言ったけど君は甘いんだよ、殺せる時に殺さなきゃ今度やられるのはこっちなんだよ」

メイリンはぶっきらぼうに言い、そっぽを向いた。メイリンも言葉にこそ出さないものの内心感謝はしているらしい。

「まあ今こうして生きてるってことはすぐに殺すつもりは無いんじゃないか?」

カントが言うとメイリンも頷いた。

「そうだね、奴らの目的は君の乗っていたルミナスアートみたいだしね」

「エルシオンが目的なら多分奴らは俺を殺せない。あいつは俺にしか起動できないからな」

「でも逆を言えば『殺さない程度に』なら君を尋問できる。腕の1つや2つ覚悟した方がいいかもね」

メイリンはびっくりするほど淡々とした調子で言った。思わずカントに鳥肌が立つほどに。

「や、やけに詳しいな」

「ボクの父さんもされたからね」

「……そうか」

つい1年ほど前、メイリン達が住んでいた集落はガーボン率いるプラヴァスティに襲われ、殺戮と略奪が起きた。

その中でこの死の大地内での通信技術の研究をしていたメイリンの父親は捕らえられ、尋問された。この土地はコロニーが落下した影響で磁場が乱れ、通常の通信機は機能しない。

メイリンの父親の研究はあと1歩のところまで進んでいたようだったがもしプラヴァスティに通信技術が渡れば今まで以上に手がつけられなくなる。それを危惧したメイリンの父親は技術の受け渡しを拒否した。そこで拷問が行われたというわけだ。

結果何も話さず、見せしめに殺され、その間にメイリン達はトレーラーで逃げた、とメイリンは話した。

「何でそんなことを俺に話したんだよ」

「……さあ、ボクにもわからない」

その時だった、おもむろに牢のドアが開かれ、

「パイロット、来い」

数人の仲間を引き連れたハイエンが牢前に立ち、カントに言った。

「この……!」

ハイエンを見た途端、目の色を変えたメイリンがカントの静止より早く、ハイエンに飛びかかった。しかしあっけなく取り巻きに手首を掴まれ地面に叩き伏せられた。

「よくも……よくも母さんを、父さんを……」

メイリンがいくらもがけども筋骨隆々な大男の拘束は解けない。

「お前らの目的は俺だろ、そいつは離してやってくれないか?」

カントはハイエンの正面に立って言った。ハイエンはしばしカントの目を睨みつけ、離せ、と命じた。

案の定カントはエルシオンの前に連れて来られ、

「こいつはどう動かす?」

ただひと言、ハイエンは言った。低く、ドスの効いた声。言わなければ間違いなく殺される、そう思わせるだけの迫力があった。しかしカントは震える舌と顔の筋肉を懸命に動かし、

「さあな?」

と、言っても笑って見せた。その瞬間、カントの腹部に鈍い痛みが走った。思わず膝をつく。それがハイエンの拳だと気づくのに暫しの時間がかかった。

「もう1度聞く。これの動かし方を教えろ」

喉元まで出かかっていた答えを飲み込み、再びカントは答えた。

「し、シラネ」

「そう答えたこと、後悔するぞ。『応接室』へ連れて行け」

ハイエンがそう言うとカントは牢があったのとは別の建物へも連れて行かれた。その狭い建物の真ん中には粗末な椅子と机、そして壁には何に使うか考えたくも無い器材が沢山ぶら下げてあった。まずカントは粗末な椅子に座らせられ、後ろ手に縛り付けられた。

「早く吐いちまった方が楽だと思うがな」

屈強な男が手の関節を鳴らしながら言った。そしてまずはご挨拶とばかりにカントの左頬に強烈な痛みが走る。唇からは血が流れ、脳が揺さぶられて視界がグラついた。

エルシオンの動かし方を教えればカントも、ひいてはメイリンも用済みだ。問答無用で殺されるだろう。確かに死はこれから始まるであろう拷問に比べれば圧倒的に楽なのは間違いないのだが。

もう1度、今度は逆の頬に男の拳が飛ぶ。そして間髪入れずにカントの腹部に拳が深々と突き刺さった。

「っ……」

苦しさのあまりまともな声も出ない。喉が激しくえづくが幸か不幸か何も吐き出すものが無く、気持ちの悪い胃液の味が口に広がった。

「早く吐いちまえよ!」

そしてダメ押しの顔面へのストレート。カントにはもう男の声もまともに聞こえない。視界が霞み、頭がぐわんぐわんと揺れている。

「ったく、強情な奴だな……」

男は無造作に壁の器具を1つ掴んだ。しかしその時、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

「物資が投下されました。今すぐ回収に向かうとのことです」

「わかった。お前はこいつを牢に戻しておけ」


ガシャン、と大きな音を立てて乱暴に鉄の扉が閉められた。

「イテテテテ……」

「大丈夫?」

カントの隣にメイリンが駆け寄ってくる。

「大丈夫じゃない」

幸か不幸かここには鏡が無いからカントは自分の状況を確認せずに済んでいる。だがきっと顔面は酷いことになっているだろう。それでもまだ殴られただけで済んで良かったと思うべきか。

「冗談言う元気があるなら大丈夫だね」

「ひでえなぁ……」

「でもその程度で済んで良かったよ、運が良かったね」

メイリンはしれっと恐ろしいことを言う。そういえばメイリンの父親は拷問の末に殺されたのか、とカントは思い出した。

「そういや物資がどうのこうのって言ってたがどういう意味なんだ?」

男がカントの拷問をあっさりやめた辺り、かなり重要なことらしいが。そんなカントの予想は大当たり。それを聞いたメイリンは目の色を変えた。

「ここには合衆軍が産業廃棄物を棄てていくって言ったよね、それが多分そう。あいつらきっと総出で血眼になって探してるよ。逃げ出すなら今だね」

メイリンは手の縄を少しでも緩めようと腕を動かすがきつく縛られた結び目は一向に解けそうにない。カントも同じことを試みるがやはりだめだった。

「だめだね。何か切るものでもあれば……」

メイリンが肩を落として辺りを見回すが当然牢にそんなものが転がっているわけがない。そんな時、カントは胸に何か違和感を感じた。思い返すと初めにメイリンと会う直前、エルシオンに渡された銃を胸のポケットに入れておいたままだったのを思い出した。かなり小型のものだったので運良く気づかれなかったのだろう。しかし両手を後ろで縛られている現状では胸ポケットに手が回らない。そこでメイリンに頼むことにした。

「そんなものがあるなら早く言って」

そうは言っても唯一見えた脱出への希望の光だ。カントの体に自分の背中を密着させ、後ろ手のままカントの体をまさぐる。

「おい、ちょ……どこ触ってんだ」

「しょうがないでしょ、変な声出さないで!」

「んなこと言っても……」

傍から見れば何のプレイだと疑われる光景だが当人たちは必死である。なぜなら自身の生死がかかっているからだ。

「……取れた!」

「よし、じゃあそれで俺の縄を切ってくれ」

「ちょっと待って、これどうやって使うの?」

メイリンが手にしてる銃は手の平に収まるほどのサイズで弾数も3発と少ないが高威力の熱線を飛ばす為威力は折り紙つきだ。ただ今回はその威力が仇となり、そのまま撃てばカントの腕もろとも消し炭にしてしまうので威力を落とさなければならない。しかしメイリンは宇宙製の銃など扱ったことは無いしカントだって同じだ。その上メイリンは銃を直接見ることができない。つまり手探りで威力を調整しなければならないのだ。

「どこかに威力を落とすスイッチがあるはずなんだけど……無いか?」

「ん……あった、これ?」

「気をつけてくれよ、ミスったら俺の腕まで黒焦げになるんだからな」

「わかってる」

メイリンとカントは背中合わせに座り、メイリンが銃口をカントの縄に押し当てる。

「……行くよ」

カントが頷く。高温の熱線が発射され、カントの腕を縛っていた縄を焼き切った。

「イテテ……うわ、痕残ってる」

カントの手首には青く縄の縛り痕が残っていた。

「早く私のも解いて」

メイリンがカントに背中を向ける。カントは銃を受け取ると注意深く縄の真ん中に銃口を合わせ、引き金を引いた。


2人は見張りがいないのを確認し、牢の扉を最後の1発で破壊して無事脱出に成功した。

「早くここから離れよう、もう奴らが戻ってくる」

しかしカントは出口とは真逆の方向に走った。

「ちょっと、なにやってるの、奴らが戻ってきたらまず間違いなく殺されるよ」

「だめだ、エルシオンが無いと」

「今はルミナスアートより命を優先すべき」

メイリンはカントの腕を掴み、すがるような目で見つめる。

「あれが無いと俺がここまでやってきた意味がなくなる」

そう言ってメイリンの手を振り払い、建物の方へ走って行った。


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