冒険者に 1
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バルクスタ王国の王室。二人の男が入ってくる。
床一面は赤いカーペットに覆われ、壁には金箔が輝き、所々宝石が輝いている。
座る者の身体が当たるところには赤く金でできた肘掛の王座が、王室の奥にある。王座の後ろの壁には剣を三本交した様な紋章が描かれている。
そこの王座に金色の冠を被る老人が、その王座に腰を下ろした。
「現状を教えてくれないか?アーデン」
髪は完全に白く長い。顔には生きてきた年月を表す様な皺が多く見られ、威厳漂う白く長い顎髭が特徴的だ。
左手に杖を持ち、白いローブを纏い、高級そうな真っ赤なマントを着ている。
彼は、バルクスタ王国の国王――ベラモル4世。
「はい、冒険者から報告は上がっております陛下」
ベラモルの前に、男が跪く。
目つきは鋭く、その金髪は短く切りそろえてあり、身分の高さを強調するような綺麗な黒い服で、派手すぎず地味でもない。
その上に表は黒く、裏は赤いマントを着ていてその腰には細長い長刀が下げられいる。
彼――アーデン・マレンは、バルクスタ王国の冒険者ギルドの管理者。ギルドマスター。段位の最高位、段位十一。
彼より強い剣士はこの国愚か、周辺国家にすらいないと噂される程の腕の剣士。
「魔王を倒したとのことです」
「それは誠か!」
勢いよく立ち上がったベラモルに、アーデンは頷く。
「総死者数28名と、被害は甚大ですが・・・」
「そうか・・・」
ベラモルは何度も口を開けたり閉じたりしている、なにかを言いたそうな顔を見たアーデンが先に口を開く。
「バルサックは無事ですよ、陛下」
「よかった・・・」
ベラモルの顔が安堵に満ちる。ベラモルにとっては一番聞きたかったことだろう。
アウッドを冒険者の高段位にまで育ててきたのは、他ならぬベラモルだった。
元々、魔王城周辺の情報収集だけで問題がでると対処ができる者として高段位者を何人か出すというだけの話だった。しかし魔王城へ行くための森の中に今回の依頼で送り出した30人の内、5人の冒険者の死体が発見された。もしかしたら、見つかってないだけで、バルサックも既に死んでいるかもしれないと危惧していたのだ。前回、魔王城周辺遠征時の被害は1名だけだったので軽視していた。今、魔王城には魔王がいないのではないかと。そこでようやく椅子に再び腰を下ろす。
「次の連合会議で報告できるように、資料の準備をします」
「うむ、頼んだぞ」
「それと、これはバルサックにも口止めをしてあるのですが・・・」
「・・・なんだ?」
「魔王はまだ他に5体存在するそうです、それに魔王城も各国周辺に存在しているとのことです」
ベラモルが目を見開いた。その顔は恐怖に染まっていく。
「もう一度言ってもらえぬか・・・アーデンよ」
「我国の周辺にも魔王城が存在するかもしれないということです、陛下」
「そうか・・・分かったこの件はお前に任せようアーデン」
「承知しました、では早速改めて国の周辺捜索の手配をします」
「アーデンよ、この事は国内、他国共に内密にせよ」
「ですが、陛下・・・」
「もちろん、事実確認ができるまでの間だ」
「・・・承知しました」
そう言うとアーデンが立ち上がり、王室を後にした。
「ああ・・・神よ」
ベラモルは祈るように手を組み、目を閉じた。