戦士 2
真っ暗な森の中、二人が並んで歩いている――
「壊滅・・・」
「ああ・・・」
アウッドはどこか遠い目をしてながら歩き、お互い質疑応答を繰り返す。
――
現在五カ国が存在している。
バルクスタ王国、ブリアムキルス帝国、ラーイロ共和国の三カ国が大きく領土を占領していて、全体の約3分2の領土を誇る。
そして他二つの国が、ジウリクタ王国、ヴァールジウス王国である。
この五カ国は冒険者の連合を作っている。理由は2つ、国家間同士での表立った争いを無くす為。
もう一つは、モンスターに対抗できる冒険家の人材を見つけ、育成する為だ。
これには、昔、大きな被害が幾重にも渡って起こり続けたからだ。
最も大きい被害は、10年程前、かつて最小国家のグリアルス国という国が膨大な数のモンスターの群れによって壊滅させられたからだ。
そのモンスターの群れが、グリアルス国の近くにある魔王城から送り込まれたことを知った各国では、連日ともに話し合いが続いた。
結果、再び国が攻められる事を危惧し、冒険者ギルドの拡大をし、先手を打つために魔王城を攻め落とすことを目標として連合が作られた。
冒険者ギルドは競って強くなる事を重視し、冒険者同士で競い合い、腕を上げていった。
冒険者は各12の段位の元でランク付けされていて、高い段位であればあるほど、難易度と報酬が高い仕事が回される。
そして、なにより魅力的な話で、国からの支援を受けることができるというものだ。
そして今回の魔王城への遠征はバルクスタ王国でも高位段位のアウッドとハイットが中位段位の冒険者達を引き連れ、情報収集及び可能なら魔王討伐という物だった。
「ハイットさんは、その・・・」
「子供の頃からの馴染みで、一番の友人だったんだがな」
アウッドは眉一つ動かさなかったが、握る拳の力が強くなっているのが分かる。
その拳にどういう意味を持つのかロットは理解ができた。
「それにしてもその、白衣は・・・?」
ロットの着ているこの白衣は500円ガチャの大当たり品を最大強化してあり、最高位の英雄クラス防具である。
「まあ、趣味というか・・・」
見た目もかっこよくて好きだったが、自分がいざ着てみると恥ずかしい。
他にいい装備あったかな・・・
思い返してみる。
「それと、あのエッジサーペントをあんなあっさり倒すとは、御見逸れした」
「いえ、あの程度大したことありませんよ」
アウッドが改めてロットの顔見て、口元を緩ませる。
「世の中は広いんだな――」
空気が変わる。森の奥から何者かが走ってくる音が聞こえ、アウッドが剣を構える。
見えてきたのは先ほどの射手の一人、ヘンリー・フルールだった。
その姿を捉えたアウッドが声を掛けようとし、言葉を飲み込んだ。
「アリソン・・・」
仲間のアリソン・マキロイだったと思われるものが、雄叫びを上げて此方に向かってくる。
体はあちこち傷や噛まれた跡があり、血にまみれている。左目は無く、残る右目は白く濁っている。
ゾンビ――
生者を食らうモノで、ゾンビに死体を食い荒らされるとその者はゾンビになってしまう。しかし、動きは遅く、対処は難しくない。
かつて仲間だったものに襲われそうになっているヘンリーに声をかける。
「ヘンリー!お前は無事か!」
「アウッドさん!?無事だったんですか!!」
息を切らしながらこちらに走ってくるヘンリーの顔に安堵の色が浮かぶ。
そんな中でヘンリーにアウッドは強く問いかける。
「何があった!説明しろ!」
「も、森にもとんでもない化け物がいて!!それで、アリソンが、私を庇って・・・」
アウッドの傍で足を止め、
ヘンリーの後ろからついてくるアリソンだったものに、アウッドが剣を向ける。
「ヘンリー、下がれ」
「はい・・・」
目に涙を浮かべ、今にも消え入りそうな声でアウッドの声に応えた。
アウッドがアリソンの首に目掛けて一瞬の迷いなく頭を切り落とした。
「アウッドさん、急いで平原に戻りましょう」
その声を聞いてヘンリーが顔上げ、ロットを見る。
「あんた、生きて・・・」
「そうだな、急いで森を抜けよう、また化け物に遭遇しても困る」
そういうとアウッドはロットを見る。
「でも君がいればなんとかなりそうだ」
「保証しませんよ?」
「それは困る、もう逃げられないんだが?」
周囲からは生き物の荒い、呼吸が聞こえてきた――




