魔王城からの出立 2
――血腥い。
魔王の部屋を出るとろくぶきの魔王の城とは違った。ここは三階の様で、目の前には相当大きい階段があり、大きい階段の下りる途中に道ができている。階段を下りきった先に、緑色の鬼のような顔や身体があちこちに転がっている。
その死体のようなものの周囲には血溜まりが出来ている。
その光景に、ロットは目を惹かれる
「大丈夫か?」
横に居たアウッドから声が掛かった。
「入ってから早々に、襲われてしまってな」
「これは・・・?」
「コブリンの死体だが・・・見るのは初めてか?」
アウッドがそう言うと、ロットの腰に下がっている剣に目が止まる。
「冒険者ではないのか?」
首を左右に振って否定を表した。23にもなる無職にこんな事が出来るわけない。
確かにろくぶきの中では冒険者をしていたがでもそれはゲームの話であって現実の世界では高卒無職だ。
「そうか、ではロット殿はどこの国の者で?」
「国・・・」
ろくぶきでは剣の国であるラールレント王国だったが、どう答えていいか分からない。
「・・・其方は?」
「我々はここから50km程北にある大きな森を抜けた所にあるバルクスタ王国だ」
「バルクスタ王国・・・」
聞いたことがない、そもそもろくぶきの中ですらもないのか・・・?
ともかく、ここは・・・
「田舎の小さい村からの旅の途中でして、どこの国に属していたかどうかは・・・」
「そうか、では一旦我々の国に来ないか?こちらとしても聞きたいことが――」
ドン!
魔王の部屋と反対にある扉が強く開かれた。
先ほどアウッドが言っていた、ゴブリンのようなものが数え切れない程入ってくる。
「ッチ!俺とバルが先行する!他は俺らの援護とそいつを守れ!」
最初に俺に剣を向けたやつが、剣を抜いて構える。それに合わせて、横に居たアウッドも盾を構える。
ゴブリン達も気づき、持っていた棍棒を振り上げ走ってきた。
それに合わせて二人が階段を飛び降りる。
結構な高さがある階段を飛び降りて、ゴブリンに斬りかかる。
それに続いて、剣や盾を持つ4人が階段を駆け下り、ロットの後ろで弓を装備した男女の二人が矢を取り出していた。残りの二人はロットの傍で剣を構えている。
金属を叩く音や金属同士が当たる響くような音が響く。アウッドが盾で攻撃を受け流し、タイミングを見計らってその盾で殴り飛ばす。
「右!」
「ああ!」
上手く連携が取れているようでゴブリンに囲まれていても、対応している。
他に戦闘している冒険者達も攻撃を上手く躱し、斬りかかる。しかし次の瞬間、後ろにいたゴブリンからの攻撃を受けそうになる。
これは間に合わない――
「危な――」
ビュン!
何かがロットの頭の横を飛んでいく、そしてゴブリンに矢が刺さり絶命した。
振り返ると、女が弓を構えていた。
「下がって」
「あ、はい」
なんか情けなくて申し訳ないな、と思いつつも弓を構えている二人の後ろに隠れる。
――結構な時間が経ち、ゴブリンを殲滅し終える。皆ボロボロだ。
先ほどまでにあった血溜りに拍車がかかるように広がっていく。
「外に出るぞ、急げ!」
アウッドの声を聞き、冒険者達も急いでアウッドの元に駆け寄る。
身体がとても軽い、というか動きやすい。普段の自分との身体に差を感じた。
ゴブリン達が入ってきたドアを開け魔王の城を後にした。