初依頼 3
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深い森。日差しは薄らとしか届かない森の中をジェミリを先頭にして歩く。
大分歩いた気がするが、まだしっかりと日は照っている。時間はあまり経っていない。しかしながら、振り返っても街が見えるわけではない、距離だけは十分歩いた様だ。
「結構歩きましたけど・・・」
「そうだな」
「どこまで行くのですか?」
「さあな」
ロット――ロトのジェミリへの問いかけは、素っ気なく返された。先ほどから此方を気にも止めずに、スタスタと歩くジェミリ。
「ロット様そr」
ゴツン、という音が響く。
ロトが、ベリア――リーアの頭を手刀で叩く。
ジェミリの足は止まり、此方を強く睨めつけた。
「余計な音を出すな」
「す、すいません・・・」
ジェミリに頭を下げたロト。
怒られてしまった。
軽めに叩いたつもりだが、当たりが良かったのか綺麗な音が出てしまった。
リーアは目元に涙を浮かべ、頭を押さえている。
「様をつけるなとあれほど・・・そんなに痛かったか?」
「はい・・・めちゃくちゃ・・・」
そんなつもりはこれっぽちもなかったのだが、力が入りすぎたのだろうか。
(もしかすると・・・)
あまり考えたくのない答えが頭を過る。もしロトの予想が的中していれば、確実に生活に影響がでる。より身の振り方を考えていかないとまずい。
少しだけ心拍数が上がるのを感じながら、歩き出したジェミリの後ろ姿をひたすら追いかける。
「3・・・いや4体か・・・」
何やらブツブツとつぶやき始めたジェミリは、マントの隙間から細いレイピアのような剣を出す。
ざわざわと揺れる木々が薄気味悪い森の中、強い風が吹いた。
「ッチ」
不意にロトの足元に大きな影ができる。
顔をあげると、そこには不思議な生き物が宙を舞っていた。
大きな体に真っ白な頭、茶色い立派な大きな翼や鋭利に尖った爪と長い尻尾。どれも別の生き物の特徴をくっつけたような悍ましいモンスター。
「キメラか、まずいな」
キメラと呼ばれたそれは、ゆっくりと地に足を付けて此方に顔を向ける。すると大きな鳴き声で雄叫びを上げた。
耳を抑えたくなるような音量で、木々の揺れがより一層激しくなる。
それを察していたのかジェミリは耳を抑えていた。
「はー・・・」
両手で持つレイピアを腰を下げてしっかりと構えたジェミリは、キメラの動きをじっと観察している。
「後ろにもいるぞ」
「え?」
振り返ると同時に、左から強い衝撃を受けて体が吹き飛ばされる。数メートル先の木に体を叩きつけられる。
(二度目か・・・)
エッジサーペントに後ろから吹き飛ばされた時の事を思い出す。その時と同じで、体にダメージはない。
ロトを吹き飛ばしたのは、キメラと呼ばれたモンスターと似たような姿だが、体のパーツの色や形は違う。
どうやらキメラというのは様々な種類があるようだ。
ロトはゆっくりと体を起こす。
(驚く程ちょうどいいタイミングだ、先の件を確かめる良いチャンスだ)
先の件とは、リーアを手刀で叩いた時の事だ。魔王である彼女が、あれだけ軽く叩かれただけで、それほど苦痛に感じる程の痛みがあったという事に疑問を持ったのだ。
特別な弱点を正確に打ち抜いたとは考えづらい。とすると、やはりロト本人に問題があるとしか思えないのだ。
ロトはモンスターに向かって歩き出した。
「それにしても、初依頼にしちゃ手荒い指導だこと」
ロトは戦うジェミリを見つめながら、ボソリと呟いた。
――――
短い




