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アップデート  作者: うー
10/17

冒険者に 2

今回から内心描写に()をつけます。今まで気づかなくて申し訳ないです。

――

バルクスタ王国のスタノフ城郭都市

アウッドの家。


ガチャ


ドアが開く。部屋には木製のテーブルとイスが並んでいる。

その真ん中のイスに座っているロットはドアを開けた人物を確認する。


「アウッドさん、もう体は・・・」

「問題ない、それより決めてくれたか?」


部屋に入ってきたのはアウッドだった。薄く白い洋服を着ていて、紺のズボンを履いている。

どうやらこないだの傷は癒えているようだった。

そう言うとアウッドはロットの前のイスに座った。


「まだ、決めかねてます」

「そうか、ところで・・・」


ガチャ


またもやドアが開く。立っていたのは女性だ。

美人、体型はスリムで胸は大きい。長く垂れている赤い髪はサラサラしている。瞳の色は赤く、顔立ちはとてもいい。歳は18~19くらいだろうか、とても若いよう見える。

煌びやかな白い洋服がよく似合っている。ロットの近くまで来ると両手を後ろに組んで立ち尽くす。


「お待たせしました」

「ベリア、これからどうするか聞いても?」


この美人は魔王の一人、ベリア。

降参したベリアは、ロットの下僕に自ら名乗り出た。意図は分からなかったが、こちらとしては情報得るにはうってつけだったので了承した。

今自分がどういう状況なのか理解する必要がある。それに降参した相手を斬る訳にも行かなかった。

結局それが功を奏し、様々な事を聞くことができた。

まず、ろくぶきの名前は出さなかったが、ろくぶきとこの世界自体は全く関係ないということはないらしい、というのも実際に最強の武器と呼ばれるものが存在しているというのだ。

噂や言い伝え程度の話らしいが、誰かが持っている可能性もあると、ロットは考える。

それと魔王について、魔王は現在この世界に6人いる。どの魔王も強力な能力持ちで一国を潰すことが容易な程の強さだと言う。

ベリアの場合はモンスターを使役することができるという能力がある。

ベリアの装備がろくぶきの魔王と全く同じ装備だったので気になっていた所だったが、ただのベリルの趣味というだけで、全員同じ装備ではないというのだ。

未だに情報は足りないが、今後の行動方針を決めるのに助かる。

(これは他の魔王にも会ってみる必要があるかもな・・・)

そして、最後に魔王達はこの世界の人間を滅ぼす計画を立ていて、その前段階として10年前にベリアがグリアルス国を滅ぼしたという事だった。

それを聞いたアウッドは血相を変えて、バルクスタ王国に帰ってくるや否や直様自国のギルドに報告した。ロットとベリアの事については、内密にしてもらっている。


「私はロット様の下僕ですので、付いていきます」


その声には裏表のないように聞こえるが、自分から下僕になりたいと言ってきた女をどこか信用しきれないロットだった。


「改めて聞くけど、なんでわざわざ下僕に・・・?」

「そのお力を目の当たりにして・・・」


下を俯いて、もじもじしながら口を小さく動かしている。


「ロット様に・・・惚れました」

「え!?」


(先日聞いたときは、その力にこの身がどうのこうのとか、敵である私を斬らないでいた慈悲がどうのこうのとか言ってたよね!?)

ロットの顔に明らかな焦りを見るとベリアが微笑みかけてきた。

アウッドの顔は表情を何一つ変えない、当然だろう美人といえども、彼の仲間を殺したモンスターを差し向けた張本人だ。

その顔を見たロットは少し冷静になり、話題を模索した。


「あ、アウッドさんところでフルールさんは?」

「ああ、あいつは冒険者から手を引くそうでな、故郷に帰るそうだ」

「そうですか、その方がいいでしょうね」

「ああ、全くだ」


そう言うと初めてアウッドは口元が緩んだ。


「そういえばアウッドさん、もうそろそろ店が開く時間ですよね?武器屋を教えてもらいたいんですが」


ロットがこの街に入ってから既に2日経っているために、街については少し知っていた。

この街の大通りの並びは商店街になっており、毎朝同じ時間にギルド本部の鐘が鳴り、全ての店が一斉に開くというのだ。


「ああ、構わないが武器によっては置いてある所が限られてくる、なにが欲しいんだ?」

「刀が欲しいんです」

「あれほどの一級品の刀を持っているのにか?」

「あれほどの一級品の刀だからこそですよ」

「なるほど、ならば――」


――


スタノフ城郭都市のギルド支部


受付にはヘンリー・フルールが冒険者ギルドからの脱退手続きをしている。

この脱退手続きは、段位三を超えた冒険者が脱退するとギルドが受け入れることができる依頼などの受注数が変わるために、届出が必要になる。

これを書かずに、一年間依頼を受けないとギルドから通達が来て依頼を受けなければならなくなる。

もちろん例外はあり、行方不明者や、大きな傷を負ったものだったりする場合はその限りではない。

ヘンリーは心の中で一刻も早くここをでて、田舎に帰りたいと思っている。当然だ、いつ魔王達が攻めて来るか分からないのだから。

(バルサックさんもあの変な男を信用しすぎ・・・)

ヘンリーはロットを別の魔王なのではないかと疑っているのだ。

(大体、目が覚めてあんな所にいたなんて、おかしいじゃない)

ヘンリーは脱退届を書く手が止まった。

(調べてみるべき・・・?それともバルサックさんに報告するべきなのかしら?)

ヘンリーは少し考えてみるが結果がでずに、首を振った

(とっとと故郷に帰ろう・・・)

再び筆をとり、書き続ける。

書き終わった脱退届を受付嬢に提出し、自分の段位――段位四の証である緑の指輪を渡す。

全12の段位は指輪の色によって分けられている。

初段ならば色は白、段位一ならば赤、段位二ならば黄色となっていて最後の段位十一は黒である。

しかし付ける義務などはない、身分の証明程度には使える物で、なくしても困るので大体の冒険者は装備はせずに、持っていることの場合が多い。

それからヘンリーは冒険者ギルド本部を出ると、偶然にロットの後ろ姿を捉えた。開店直前の店が並ぶ大通りの中に見つけたのは本当に偶然だ。

先ほどの疑問が頭に浮かび、無意識にヘンリーはロットの後をつけて行く。




段位についてはストーリに追って説明します。

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