第3話 純白
辿り着いた場所は、天国のようだった。
白い装飾品、白い壁、白いベッド、兎に角、白ばかりだった。稀に薄っすらと、金色の装飾が施されている程度だった。
「お召し物を、こちらにご用意いたしました。これに着替えていただきます。」
シスターは、白いテーブルの上に服を置くと、部屋から出て行った。
用意された服を、手にとって見る。
白いフリルのワンピースだった。裏側には、金色で彩られた天使の羽がデザインされている。
「ママ...」
置かれた服を、ギュッと握りしめて、私は家に帰りたい気持ちで、いっぱいだった。
__帰りたいよ。
そうだ、帰ればいいんだ。 誰も帰っちゃダメなんて言ってない。きっと、ママが私を待ってる。だから、帰ろう。
そう考えると、私は握りしめたワンピースを手放し、ドアをそっと開けて、誰かいないか見渡した。
「誰かいますか?」
小声で、問いかけて、何も反応が返ってこないのを確認してから、小走りで部屋を抜け出した。
小走りで出口を探すも、見つからなかった。
一旦部屋に戻ろうと、諦めかけると、話し声が聞こえた。
「...?」
誰かが、お話してる?
気づかれないように、息を潜めて、両手で自分の口を塞いだ。
「今度は、あの娘か、よく見つけてくれたな。アメリア。」
「私には、勿体無いお言葉でございます。神父様。」
見つかるのが怖くて、部屋は覗けなかったけれど、女性の方は、聞き覚えのある声だった。最初に私をここに連れてきたシスター。
「しかし、今回は手こずったようだな。」
「些細なことです。世界の為に、たかだか数人の犠牲など、安いものでしょう。」
「決して、あの娘には情報を漏らすな。この事を知られれば、暴走しかねない。」
この話を聞いた後、私は自分の部屋に走った。
神父が嬉しそうに、会話を続けるなか、アメリアは、シエラのいた、扉をじっと見つめていた。
「はあ、はあ、」
用意されたベッドに、倒れこむ。
「ママが、帰ってこなかったのは、私のせい?私のせいで、ママは、居なくなったの?」
幼い思考回路でも。あの会話が何を意味するのか、シエラは分かっていた。
「ごめんなさい、ママ。」
シエラは、この世にはもうすでにいないであろう、母親に、泣きながら謝った。
「うぜえな、死んだモンは仕方ねえだろ、いちいち泣いてんなよ。」
「誰?」
一人だと思っていたはずの部屋に、響いた声に戸惑った。
「あたしは、エルマ。あんたと同じ、神の祝福を受けた、哀れな少女さ。」
聞こえてきた声の方向を見れば、同い年くらいの少女がドアの前に立っていた。