第8話 魔法雑貨店
「情報屋」を後にした俺は飯を食い終わると、とりあえず気になる店を見て回ることにした。
『中央広場』⇒『魔法雑貨店』
ちょっとした宝石店のような所だった。陳列棚には飴玉のような物が並べられていて赤、青、黄、緑とそれぞれの色を放っている。
「あの、」
「はいはい何だい兄ちゃん、どうかしたかい?」
俺がヘルプを求めたのは人の良さそうな、恰幅の良い店員。
「この珠はどうやって使うんですか?」
「おや、兄ちゃん魔法も知らないのかい? ハハ、一体どこの田舎から来たのかな。いいよ。教えてあげよう」
そう言って店員は近くの赤い珠を指差す。
「まず、こういう光っている珠のことを魔法というんだ。さすがに『魔法』っていうのは解るよね」
そうして店員はその珠を手に取るとそれを一気に口の中に入れ、呑み込んだ。
「……おいおい」
「ん? 魔法っていうのはこうしないと習得できないんだよ? 良いかい、こうして呑み込んだ魔法は溶けて、体に吸収される。それで魔法を習得したことになるんだ。習得した魔法の名前、効果は頭の中にイメージとしてインプットされ、使う意志さえあれば使えるようになるよ」
へぇ。
「さらに、魔法は使い続けると進化する」
「…………?」
「いわゆる『上位魔法』ってやつさ。たくさん使ってその魔法に慣れることで、その効果は増していく。『火の魔法』だったら火力がアップしていくという具合でね」
おお、早く魔法を使いたくなってきた。
「ただし、習得できないケースも2つほどある」
「習得できないケース?」
「ああ。1つ目は『その魔法を既に習得している場合』。今の僕の場合だね。僕は今呑んだ魔法をもう習得しているから、本当はもう呑み込んでも意味がないんだ。今呑んで見せたのは単なる実演さ。そして――、」
今度は俺を指差し、
「2つ目は『資質のない場合』。今の君だよ」
「えっ、俺、資質ないんですか?」
「うん、全く魔力を感じない。もし魔法を使いたいんだったら転職でもするんだね」
えー。
「以上、今言った2つのケースにどちらか一方でも該当する人は、その魔法を習得できない。呑み込んでも魔法が身体に吸収されず、そのまま排泄物として出てくるんだ」
「ん? ということはあんたがさっき呑み込んだ魔法は……」
「え? ああ、さっき呑み込んだ魔法もちゃんと出てくるよ。それに店の物だからね。ちゃんと元の場所に戻しておくさ」
「誰かっ、店長を! 店長を呼べェ! こいつ、排泄物を再び商品として並べるつもりだぞっ!」
「え、店長は僕だけど……」
こいつが店長だったのか……!
こんな店、もう二度と来ない。
『魔法雑貨店』⇒『中央広場』