第9話:Aランク試験と、初めての「本気の無双」――もう誰も俺を止められない
ルミエルのギルドは、朝から異様な熱気に包まれていた。
掲示板の前には冒険者たちが群がり、俺の名前が飛び交う。
「新人の佐藤太郎がAランク試験を受けるってマジかよ?」
「Cランクから一気にA? アイスウルフのアルファを一人で倒したって話だけど……」
ギルドマスターが俺を奥の部屋に呼んだ。
厳つい顔のマスターは、珍しく笑みを浮かべている。
「佐藤。お前、特別試験だ。Aランクは通常、S級モンスター討伐か複数Aランククエストのクリアが必要だが……お前の実力なら、特別に『模擬戦』で決める。」
相手は、ルミエル支部のNo.1冒険者――Aランク剣士の「雷鳴のガルド」。
40代半ば、雷属性の剣技で知られるベテラン。
「若造、俺を本気で倒せばAランクだ。だが、甘く見るなよ。」
試験会場はギルド裏の広大な訓練場。観客席は満員。リリアも最前列で手を握りしめて見守っている。
ガルドが大剣を構える。剣先に青白い雷が走る。
「いくぞ!」
ガルドが突進。雷撃を纏った大剣が俺の頭上を狙う。
普通の冒険者なら一撃で炭化する威力。
俺は動かない。
剣が直撃――するはずだった。
バチバチッ!
雷が俺の体に吸い込まれるように消える。
ダメージゼロ。
【業火耐性Lv2】+【全耐性統合パック】で、雷属性も「地獄の業火に比べりゃ可愛い」判定。
ガルドの目が見開く。
「なんだと……!?」
俺はゆっくり短剣を抜く。
「悪いな。俺、もう死なないんだ。」
反撃開始。
棍棒を軽く振るだけで、衝撃波が発生。ガルドの体が後退する。
「くそっ!」
ガルドが雷の嵐を召喚。訓練場全体に雷雲が広がり、無数の落雷が降り注ぐ。
観客が悲鳴を上げる。
俺は真ん中で立ったまま。
落雷が体に当たるたび、ジリジリと煙が上がるが……痛くない。
むしろ、心地いいくらい。
「雷? 焦熱地獄の溶岩に比べりゃ、シャワーだな。」
一歩踏み出す。
地面が割れ、俺の体が瞬時にガルドの懐へ。
短剣を首元に当てる。
「終わりだ。」
ガルドの剣が落ちる。
訓練場が静まり返る。
「……負けだ。完敗。」
ガルドが膝をつく。
ギルドマスターが立ち上がる。
「佐藤太郎、Aランク認定! これより、お前は『地獄の覇王』と呼ぶに相応しい男だ!」
観客が沸く。拍手と歓声が鳴り響く。
リリアが駆け寄ってきて、俺に抱きつく。
「太郎さん……すごい! 本当にすごいよ!」
俺は彼女を抱き上げ、くるくる回す。
「これで、もっと大きなクエスト受けられるな。一緒に世界見て回ろうぜ。」
その夜、Aランクパーティの特典として、ギルドから豪華なマンションを貸与された。
バルコニー付きの広い部屋。ルミエルの夜景が一望できる。
リリアと二人、ワインを傾けながら話す。
「太郎さん……これからは、どんな冒険になるのかな。」
「魔王討伐とか、王都の陰謀とか……全部片付けて、スローライフもいいよな。」
リリアが頰を赤らめて、俺の胸に寄りかかる。
「私、ずっと太郎さんのそばにいる。地獄の記憶が辛くなったら、いつでも抱きしめてあげるから。」
俺は彼女の髪を撫でる。
「ありがとう。もう、地獄の苦しみは過去だ。
今は、お前とこの世界を楽しむだけ。」
ステータスを確認。
【名前:佐藤太郎】
【レベル:20】
【ランク:A】
【スキル:地獄周回者(9/100)】
【業ポイント:4600(使用可能)】
【耐性一覧(統合後)】
• 全属性耐性+50%(地獄由来)
• 物理攻撃耐性+40%
• 精神攻撃耐性+60%
• ……他多数
【地獄の覇王 解放条件:残り91回達成】
【現在の無双度:大陸最強クラス(推定)】
翌朝、ギルドに新しいS級クエストの依頼が届く。
「大陸北方の『氷の魔王』復活の兆し。討伐パーティ募集。Aランク以上推奨。」
俺はリリアと顔を見合わせる。
「行くか?」
「もちろん! 太郎さんとなら、どこだって!」
俺たちは馬車に乗り、北方へ向かう。
道中、魔物が襲ってくるが……全部一瞬で片付く。
狼の群れ? 短剣一振り。
ドラゴン級のワイバーン? 棍棒で頭を叩き落とす。
リリアが笑う。
「もう、本当にヌルゲーだね……太郎さん。」
俺も笑う。
「そうだな。地獄を制覇した代償だよ。」
でも、心の奥で思う。
残り91回の地獄。
いつか、100回達成して「地獄の覇王」スキルが完全解放されたら……
この世界は、どうなる?
今は、そんなこと考えなくていい。
リリアの手を握り、俺は前を向く。
異世界は、俺の庭。
これからは、ただ楽しむだけだ。
(つづく)




