第4話:街で出会った少女と、五回目の地獄は熱湯の釜だ
街の名前は「ルミエル」。中規模の交易都市で、冒険者ギルドが活気づいているらしい。ギルドの受付でFランク登録を済ませ、薬草採取の簡単クエストを受注した。報酬は銅貨20枚。異世界通貨のレートはよくわからないけど、飯代くらいにはなるはずだ。
ギルドの外に出ると、陽光が眩しい。石畳の通りには商人たちの呼び声が響き、馬車がガタガタと通る。ファンタジー世界の典型だ。
「まずは装備を整えようか。棍棒だけじゃ心許ないし。」
業ポイントは今、450+今回のポイントで……待てよ、四回目の叫喚地獄でボーナス入ったから、700近くあるはず。
交換所を開く。
【業ポイント交換所】
• 体力ポーション:50ポイント
• 鉄の棍棒(強化版):150ポイント
• 革の鎧(基本防具):300ポイント
• スキル強化(耐性系):200ポイント
• 情報開示(地獄次層ヒント):100ポイント
• 新規:地獄の鬼の短剣:400ポイント(業火属性付き)
「お、地獄由来の武器か。短剣買おう。」
400ポイント消費。手元に黒い短剣が現れる。刃が赤く熱を帯び、触るとジリジリするけど、俺には痛くない。
「これで戦闘力アップだな。」
街を歩きながら、クエストの薬草を探す。街外れの森に入る。
森は静か。鳥のさえずりだけ。
薬草は「青葉草」らしい。葉が青くて星型のやつ。
一本見つけて摘む。よし、順調。
でも、油断した。
背後から気配。振り返ると、巨大な蜘蛛。体長2メートルはありそうな魔物。
「マジかよ……薬草採取でこんなの出てくんのか!」
蜘蛛が糸を吐く。避けるが、足に絡まる。
【黒縄耐性Lv1】のおかげで、糸が少し緩む。短剣で切る。
蜘蛛が飛びかかる。牙が肩をかすめる。毒? 痛いが、地獄の痛みに比べりゃ……。
棍棒で頭を叩く。ガツン! 効いてる。
短剣で腹を刺す。緑の体液が噴き出す。
蜘蛛が暴れる。糸で体を巻かれる。
「くそっ!」
短剣で糸を切り、反撃。蜘蛛の目を突く。
最後に棍棒で頭を潰す。
【経験値獲得。レベルアップ!】
レベル6。息が上がる。
「勝った……。でも、死ななくて済んだ。」
薬草を10本集めて、街に戻る。
ギルドでクエスト完了。銅貨20枚ゲット。
「これで飯食えるな。」
近くの酒場に入る。安い宿も兼ねてるらしい。
カウンターでパンとスープを注文。異世界の味。意外と美味い。
隣の席に、少女が座ってる。
銀色の髪、青い瞳。10代後半くらい。服はボロボロだけど、綺麗な顔立ち。
「えっと……あの、隣いいですか?」
少女が話しかけてくる。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。……私、冒険者なんですけど、お金がなくて……。」
彼女の名前はリリア。Cランクの魔法使い。パーティが解散して、金欠らしい。
「一緒にクエストやりませんか? 私、回復魔法使えるんです。」
面白そう。
「いいよ。明日からで。」
リリアが笑う。初めての仲間っぽい。
でも、心のどこかで思う。
この世界で仲間ができたら、死ににくくなるかも。でも、死んだら……また地獄。
リリアを巻き込むわけにはいかない。
夜、宿のベッドで横になる。
業ポイントはクエストと戦闘で少し増えた。交換所で耐性強化を考える。
でも、今日は寝よう。
……夢を見た。
地獄の門。次は「大叫喚地獄」。
熱い鉄の釜に落とされる予感。
翌朝。
リリアと合流。クエストは「森の狼退治」。5匹倒せばいい。
森に入る。リリアが後ろで魔法を準備。
「火の玉、準備OK!」
狼の群れが現れる。7匹。
「来い!」
棍棒で先頭の一匹を殴る。短剣で二匹目を刺す。
リリアの火球が飛ぶ。狼が燃える。
順調。レベル7に上がる。
でも、最後の狼が俺の背後を取る。
牙が首筋に。
【HP:0】
五度目の死。
暗転。
今度の地獄は、巨大な釜が並ぶ空間。熱湯が煮えたぎる。
「大叫喚地獄……五番目。」
鬼が俺を掴み、釜に放り込む。
熱湯が体を包む。皮膚が溶ける。肉が剥がれる。
「ぎゃあああああ!」
叫び声が止まらない。肺が焼ける。目が煮える。
再生しても、また落とされる。
熱湯の中で何度も溺れ、焼かれ、叫ぶ。
痛みと絶叫の連鎖。
前世の妄語? 嘘をついたこと? そんなんでここかよ……。
でも、耐える。ヒント通り、耐え時間を伸ばす。ポイントボーナスを狙う。
叫びながらも、心で数える。
1分、2分……耐えろ。
ようやく終了。
【地獄周回:5回目完了。業ポイント+300(ボーナス+100)。】
【異世界に戻ります。】
戻ると、狼の前に。
今度は先制。短剣で喉を切り、棍棒で頭を潰す。
リリアが驚く。「え、太郎さん……急に強くなった?」
「ま、運が良かっただけ。」
全滅。クエスト完了。
ギルドに戻る。報酬ゲット。
リリアが喜ぶ。「これで宿代出せます! ありがとう!」
俺は笑う。でも、心の中は複雑。
死ぬたびに強くなるけど、リリアを失いたくない。
「次はもっと安全なクエストにしよう。」
夜、宿でステータス確認。
【名前:佐藤太郎】
【レベル:7】
【スキル:地獄周回者(5/100)】
【業ポイント:1200】
【業火耐性Lv1】
【黒縄耐性Lv1】
【衆合耐性Lv1】
【叫喚耐性Lv1】
【大叫喚耐性Lv1(新規)】
大叫喚耐性……叫びや精神攻撃に強くなるのか。
「これで、少しはメンタル耐えられるかも。」
でも、次は焦熱地獄。焼かれる系の上位版。
「まだ95回……。地獄は続く。」
リリアが隣の部屋から声をかける。「おやすみ、太郎さん。」
「おやすみ。」
異世界が、少しずつ楽しくなってきた。
でも、地獄の記憶は消えない。
100回まで、耐え抜くしかない。
(つづく)




