第2話:二回目の地獄は縄で縛られて斬られるってマジかよ
森の中を慎重に進む。木々の間を覗き、音に耳を澄ます。
さっきのゴブリンはどこに行ったんだ? もしかして、俺が死んだ(地獄行った)間に逃げたのか?
いや、そんなことより、このスキル。
【業火耐性Lv1】
何の役に立つんだ? 炎系の攻撃に少し耐えやすくなるくらいか。
でも、地獄のあの熱い鉄の床を思い出すだけで、体が震える。あれをまた味わうなんて、絶対ごめんだ。
「死なないように生き延びる。それが最優先だな。」
少し歩くと、小川が見えた。水を飲んで体力を回復しよう。
辺りを見回して安全を確認。よし、誰もいない。
膝をついて水をすくう。冷たくてうまい。異世界の水って、なんか特別に美味い気がする。
ガサガサ。
またかよ!
振り返ると、今度は二匹のゴブリン。棍棒持ってるし、さっきよりデカい。
「くそっ、レベル1じゃ無理だろ……!」
逃げようとしたが、囲まれてる。一匹が棍棒を振り下ろす。
咄嗟に腕でガード。痛いが、耐えられる。
「え? 意外と……」
社畜時代に鍛えられた根性か? いや、地獄の余波でメンタルが少しタフになったのかも。
でも、二匹目が横から棍棒を叩き込んでくる。
頭に直撃。視界が揺れる。
【HP:0】
また死んだ。
転生して二度目の死。
暗転。
今度の地獄は、さっきと違う。
黒い縄が無数に張り巡らされた空間。空は暗く、遠くで金属の音が響く。
「ここは……黒縄地獄?」
八大地獄の二番目。縄で縛られて斬られるやつだ。
日本人の地獄イメージそのまんま。神様、なんでこんなスキルくれたんだよ……。
体が浮き上がり、黒い縄に絡め取られる。
「うわっ、放せ!」
縄が体を締め上げる。息が苦しい。皮膚が擦り切れる痛み。
そして、虚空から現れた鬼みたいなヤツが、巨大な剣を構える。
赤い肌、角が生えた頭。目がギラギラ光ってる。
「罪人よ、斬られるがいい。」
剣が振り下ろされる。
体が真っ二つに。痛い。内臓が飛び出る感覚。血が噴き出す。
「ぐああああ!」
でも、死なない。体が再生して、また縄に縛られる。
斬られる。再生。斬られる。
何度も、何度も。
痛みの波が永遠に続く。最初は叫んでたけど、途中から声が出なくなった。
前世の業って何だ? 残業? 上司の悪口? そんなんでここ送りかよ……。
ようやく、痛みが止む。体が再生しきって、視界がぼやける。
【地獄周回:2回目完了。業ポイント+150。】
【異世界に戻ります。】
光が包む。
目覚めると、また森の小川のそば。
体を触る。無傷。縄の跡すらない。
「はあ……はあ……二回目か。まだ98回残ってるのかよ。」
ステータス確認。
【名前:佐藤太郎】
【レベル:1】
【スキル:地獄周回者(2/100)】
【業ポイント:250】
【業火耐性Lv1】
【新規スキル:黒縄耐性Lv1】
黒縄耐性……? 縄や拘束系の攻撃に耐えやすくなるのか。
「これ、地獄ごとにスキルが増えるパターンか。100回やったら、どんなチートになるんだ……。」
でも、今はそんなことより。
さっきのゴブリン二匹、まだ近くにいるかも。
「死に戻りみたいに、死ぬ前の場所に戻るのか。なら、対策考えないと。」
周りを見回す。木の枝を拾って、即席の棍棒にする。
「よし、次は戦うぞ。」
少し待つと、案の定、二匹のゴブリンが現れた。
「来いよ!」
一匹が棍棒を振り上げる。俺も枝でカウンター。
ガキン! 枝が折れたけど、相手の棍棒を弾いた。
「え? 力が増してる?」
地獄の影響か、体が少し軽い。痛みへの耐性も上がってる気がする。
二匹目を蹴り飛ばす。転がったところを、落ちてる石で頭を叩く。
グシャ。緑の血が飛び散る。
【経験値獲得。レベルアップ!】
レベル2になった。ステータスが少し上がる。
残りの一匹も、慌てて逃げようとするのを追いかけて仕留める。
「ふう……勝てた。」
初めての勝利。異世界でモンスター倒したぜ。
でも、喜びより疲労が大きい。地獄の記憶がフラッシュバックする。
「これをあと98回……。マジで地獄だな。」
業ポイントが250。
心の中で「業ポイント交換」と唱えてみる。なんとなく。
すると、ウィンドウが開く。
【業ポイント交換所】
• 体力ポーション:50ポイント
• スキル強化:100ポイント(対象スキル選択)
• 情報開示:200ポイント(地獄のヒントなど)……他にも色々。
「お、交換できるのか。じゃあ、体力ポーション二つ。」
ポイント消費。ポーションが手元に現れる。
飲むと、体力が回復。いい感じ。
「これで少し楽になるかも。」
森を進む。街を探さないと。
でも、心のどこかで思う。
次に死んだら、三回目の地獄。次は叫喚地獄か? 熱い鉄の棒で殴られるやつ……。
「死なないように、絶対死なないように。」
でも、異世界はそんなに甘くない。
遠くから、狼の群れの遠吠えが聞こえてきた。
(つづく)




