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【超短編小説】404error 17番目のコードに致命的なエラーがあります

掲載日:2025/12/26

 萬太郎が死んだと聞いたのは、実際に彼が死んで随分と経ってからだった。

 必要な荷物(それが何であるかは重要でないので割愛する)を取りに、久しぶりに実家へ立ち寄った時に親から聴かされた。

 別にそれが衝撃と言うことは無い。

 彼は産まれた時から酷く重たい障害を抱えていた。ひとりで立って歩く事はもちろん、意志の疎通もできない。


 彼とは同じ幼稚園に通っていた。

 しかし集合写真でしか彼を見た記憶は無い。

 だが、幼い時分に見た萬太郎と言う存在を忘れる事は出来なかった。


 彼自身が何かを考えることが出来たのかは分からない。

 俺は萬太郎の父親が勤めている病院に通っていたので、何度か様子を尋ねた事がある。

 萬太郎の父親はいつも「あぁ、元気にしているよ。ありがとう」と言っていたのを憶えている。

 萬太郎、または萬太郎の父親にとって元気と言うのがどのような状態を示すのかは不明だ。


 元気に生きると言うのは、五体満足であることや意志の疎通がはかれることを言うのだろう。

 呆けて寝たきりになった俺の祖母に置き換えて、どの状態を元気も言えるか考えたが、精々ミトンを付けた手で全身を掻きむしろうとしている痛々しい姿だ。

 祖母は元気と言えるのか?

 食卓を挟んで向いに座っている親もいつかそうなる可能性がある。

 無論、俺自身だってそうだ。

 それが老化なのか、または事故なのかは分からない。

 脳とが臓器不全になるより先に生命を終えられるならまずまずの幸福と言えるだろう。

 ピンピンコロリ、ピンコロリ。



 だがそんなものは望むべくもない。

 俺は俺の死を死ねるのか?恐らくそうはならないだろう。

 俺はエア拳銃自殺を繰り返す。

 それは願いだ。

 もちろん脳漿が飛び散ったりしない。俺は部屋の真ん中で人差し指をコメカミに当てているだけだ。

 再び親指の撃鉄を起こす。


 バン


「なにそれ」

 喪服を着たお前が言う。

 お前の撮った俺の遺影に向かって言うんだ。

「なにそれ」

 俺は微笑む。


 バン


 何度やっても指から弾丸は飛び出さない。

 俺の遺伝子には17番目の書き込みに傷がある。

 そしてそれはコピーされる。再生産されるべきではない存在だ。だから人より少ない寿命をどうにか楽しく生きるしかない。

 楽しくい生きなきゃならないのに、考えるのはそんな事ばかりだ。

 ピンピンコロリピンコロリ。



 俺もいつか死ぬ。

 そしてそれをお前らが聞くのは俺が死んでしばらく経ってからだろう。

 お前らは俺に興味が無いし、俺もお前らに興味が無いからな。

 それが世界の正しい姿だ。

 毎日が誰かの誕生日で毎日が誰かの命日だ、仕方ないしそう言うものだ。



 俺はまた親指を起こす。


 バン!

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