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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・2 地獄のGW新歓合宿とサークルクラッシャー(物理)のカナタくん!そして時空歪曲の『ファーストキス』

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第41話 【悲報】シンデレラ襲来【馬車から飛び降りた】

 新宿の夜はどす黒く輝いている。俺は新宿にある新歓ウェルカムパーティーのイベント会場にやってきた。主催のケーカイ先輩のいるイベサー「インペリアル・都」はインカレのでかいサークルである。運営そのものは皇都大学の学生が中心だが、イベントそのものは何処の大学、短大、専門学校でもウェルカムである。チャラいと言えばチャラいのだが、運営そのものはクリーン。後ろ暗いところはないし、イベントの儲けを慈善事業に積極的に寄付してる。悪さをしている噂もないし、俺自身も前の世界含めて聞いたことはない。あまり繋がり、繋がり言うのは意識高くてどうかと思うのだが、ここらへんでいろんな人と顔見知りになっておくのは将来にとってマイナスにはならない。それに葉桐の問題もある。どうしても情報収集のための人的ネットワークは不可欠だ。だからイベントが始まってから、俺は意識高い系を装って様々な大学の連中に積極的に声をかけていった。今日のイベントは男はスーツ。女は晴着、ドレスのなんちゃってフォーマル風である。個人的なコツだが、スーツを着慣れていないのに、派手な感じな奴が狙い目。そういう子は懐柔しやすい。恩の売り方は簡単で、男子島と女子島で別れているところを俺のコミュ力で合体させればいい。それだけで男子からも女子からも尊敬を勝ち取れる。こういうイベントは出会い系そのものなのだ。男女ともにお互いを求めあってる。だからくっつけてやればいい。


「いやーカナタ君お疲れ様してるねー!あはは!ああいう男女で別れてる島を崩してくっつけられるの凄いね!」


 膝丈くらいのスカートの青いドレスを着たミランに会場の端っこで声をかけられた。銀髪に蒼いドレスは良く似合っていた。彼女はさっきまでステージでムーディーな歌とダンスを披露して、会場をしっとりと盛り上げていた。


「あはは。いや肩凝ったよ。だけどいい感じにアドレスゲットできてるし、さっきからお礼のメッセージが止まらない。ここからうまく葉桐の陰に迫れる線が見つかるといいんだけどね。ミランも楪もまだあいつに狙われてる。早く奴の目的を突き止めないと」


「そうだね。葉桐はボクにも楪ちゃんにもまだ執着してる。いったいボクと楪ちゃんの何が彼の目的に必要なんだろうね。よくわかんないよ。カナタ君がいなかったらボクたちきっとロクでもないことに巻き込まれてたんだろうね。ほんとカナタ君には感謝しかないよ」


 なにもここに来たのは青春的にチャラいことしたかっただけじゃない。葉桐のネットワークを探る為でもある。他の大学にも奴の手は広がっているそうだ。こういうイベントに出入りしていれば思わぬところからあいつの正体につながるヒントが出てくるかもしれないのだ。


「あのさ。感謝の気持ちっていうかさ。その。ボクと踊らない?ほらあれ」


 ミランが少し頬を染めて指さす先に、社交ダンスの輪が出来ていた。今日の会場は豪華で広い。映画に出てきそうなパーティーホールそのものの雰囲気。田舎から出てきたばかりの大学生たちにとってここは夢の空間そのものである。前の世界でこういうのに縁がなかった俺もこういう世界には憧れがある。


「ボクはこれでも結構有名人だし。一緒に踊ってるところを見たら、色んな人が君との繋がりを求めてくれると思うんだ。きっと助けになれると思う…どうかな?えへへ」


 健気で同時に言い訳臭過ぎてなんか童貞っぽい誘い方だと思う。だけどいつもの凛とした感じでない、女の子っぽいモジモジした感じが可愛らしいから。俺はミランの手を取った。


「お付き合いくださいお嬢さん」


「ええ、よろこんで!」


 俺とミランも社交ダンスの輪に混ざる。ステップはそこそこ知ってる。今日の為に練習はしてきた。


「上手上手。ボクがリードする必要なかったね。ふふ」


「そりゃ俺だって男の子だよ。むしろリードしたいよ。こんな感じに」


 俺はミランを胸元に引き寄せる。そして二人で一回転。そのまま、輪の中心に空いた空間に入り込む。社交ダンスの輪が俺とミランを囲むような感じになった。


「わお!なんて出しゃばりなんだろう!いいねこういうの!」


「主役の座は奪うものだ。じゃなきゃリードできないだろ」


「うふふ。じゃあ君に身を委ねてもいいかな?」


「いいよ。いくらでもどうぞ」


 ミランがより体を密着させてくる。柔らかさと熱とを感じる。その熱こそが次の戦いへの活力になると思う。俺とミランは人々の中心で踊る。時に派手に、でも優雅に舞った。会場の人たちの視線が集まってるのを感じる。あと写真を撮ってる人たちも沢山いた。是非ともSNSにアップして欲しい。そして葉桐のところまで俺たちの姿を届けて欲しい。お前のものにはならないと見せつけてやるのだ。




 踊り終わった俺たちは多くの人たちに囲まれた。それらと会話を楽しみ、好感を持ってくれるように懐柔する。この人たちがいずれ来る葉桐との対決で味方になってくれるように振る舞うように心がけた。


「いや。ステージから人たちに見られるのと違って、本当に会話は疲れるね。それにパフォーマンスよりも緊張したよ。不思議だね」


 パーティー会場にあるステップフロアに設けられた運営サイドの休憩所兼VIPフロアのソファーでミランがグでんと横になる。頭を俺の膝の上に預けてる。普通逆じゃないかなって思ったけど。悪くはない。


「まあ慣れないとなかなかね。会話や対面のコミュニケーションって心が直接ぶつかるからね。どうしても疲れちゃうのは仕方がないよ」


 俺はミランの頭を撫でる。ミランはくすぐったそうに微笑する。


「そう言えばさ思い出したんだけど、五十嵐さんは人と喋るときいつも堂々としてるんだよね。ボク驚いたよ。テレビで見た事ある経済界のお偉い人とか相手にちっとも緊張しないでのほほんとしてるの。一体あの鋼のメンタルはなんなんだろうね?」


「うーん。何にも考えてないだけだと思うけどね。五十嵐は相手に興味がないんじゃないかな?」


 鋼のメンタルはそうだと思う。どんな相手でもいつも堂々、というかのほほんとしている。誰が相手でもちっとも動じない。前の世界ではその性格が重宝されていたらしく、有名人へのインタビューによく駆り出されていた。そして大抵その日には向こうからお付き合いの申し出の連絡が来る。葉桐との浮気以外は、そういう連絡が来るとすぐに俺に報告に来た。元カレから交際時にやらかしたスキャンダルのネタで復縁や金銭目当ての脅迫が来た時もその日のうちに俺に報告してくれた。スキャンダルネタはかなりえげつないものだったけど、俺にはちゃんと全てを隠さずに話してくれた。普通の男だったらそれで別れてるようなネタなのに。俺は聞いた。『どうして隠そうとしなかった?怖くなかったの?』と。五十嵐理織世は、『あなたを信じてるから』と、それだけ言った。だからこそ葉桐との浮気はショックだった。隠し事をしない女が唯一隠し事をしたのが、葉桐との浮気だったのだから。だから俺の衝撃は大きかった。立ち直れないくらいに。


「なるほどなぁ。…じゃあどうして彼女はキミに興味があるんだろうね?綾城さんはカナタ君三人目の幼馴染説とかいう陰謀論を推測してたけど?」


「それは残念ながらガセネタです。知り合ったのは大学の後だよ。それは本当」


「そっか。まあ人にはいろいろあるよね。話したくなったら教えてよ。その時は聞くからさ」


 ミランはふっと微笑んでくれた。何処か頼りがいのある凛とした笑み。俺もつられて笑顔になる。その時だった。


『『『『うおおおおおおおおおおお!!』』』』


 大きな歓声が響いてきた。何かのイベントだろうか。と思って手すり越しにフロアを見下ろした。人混みの中心にテーブルがあって、そこにビールの入ったコップが並べられていた。そしていかにもチャラそうな男と、赤いドレスの女がテーブル越しに向かい合わせに立っている。そして回り男女が手を叩いて囃し立てている。赤いドレスの女の顔はこちらからはよくわからない。ライトの当たり方も絶妙で髪の色も茶色っぽいことしかわからなかった。


「俺は速応大学最速のパリピなんだぜ。ふっ!」


「ふっ!私なんか最速の…催促…そう言えば図書館の本返し忘れてた!やばい!そう!私は皇都大学催促のガール!!」


 全然話つながってねぇ。だけど周りの歓声のボルテージは上がっていく。そこにどこから持ってきたのか、シンバルを持った奴が現れて、それを思い切り打ち鳴らした。そして2人はコップを次々と飲み干していく。


『『『『『『『『わああああああああああああああああ!!』』』』』』』


 確かに男の方の一気飲みは早かった。だけどそれ以上に女の方が超速かった。


「ば、ばかな?!この俺が早さで圧倒されるなんて?!」


「なにこれ?発泡酒じゃないの。せめてビールにしてほしいなぁ。ぬるい!!」


 女はさらにペースを上げていく。そして最後はピッチャーそのものを飲み干してしまう。そこでシンバルが鳴り響く。女は両手でピースしてた。そして四方八方に投げキスして勝利をアピールしていた。こちらにもいっしゅんだけど顔を向けた。それでやっとその正体がわかった。


「…ねぇカナタ君。あの子…?!」


 ミランは赤いドレスの女にドン引きしている。俺もドン引きしてる。


「……ちょっと行ってくる」


「…いってらしゃい。…頑張って…」


 ミランは引き笑いを浮かべて俺を見送った。そして俺は下のフロアに下りて、赤いドレスの女のところへ歩いていく。彼女は沢山の男たちに囲まれている。そしてテーブルの上に置かれている様々な酒のグラスを次々と一瞬で飲み干していく。男たちの分厚い層を掻き分けて、俺はとうとう女のいるところに辿り着いた。


「あ!常盤くん!やっほー!げんきー?あはは!あはははは!」


「何やってんのお前?」


 トロ酔い顔は相変わらず美人だけど、どことなくエロい。俺を見ながら舌で唇をぺろりと舐めた。すごくエッチな雰囲気を醸してる。


「美味しいお酒を飲みに来るために!魔法の馬車から飛び降りてきたシンデレラちゃんでーす!よろぴくー!」


 ここにいるはずがない五十嵐がそこにはいた。何がどう狂ってこの女はここに来てしまったんだろう?明らかなカオスに突入したことに俺は頭痛が痛くなりそうだった。


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