第32話 こいつら、こんなんでもこの国で一番偏差値高いんだぜ?バカだろう?
ミランはライブが終わった後、俺たちのテーブルにやってきた。アイドルっぽい服からミニのプリーツにへそ出しなタンクトップの実にチャラい感じの服に着替えていた。
「やあ、おまたせ!どうだったボクのライブ!楽しかっでしょ!あはは!あれだけ多くの人を巻き込めるんだからもう童貞とは言わせないよ!あはは!あはははは!!」
ミランはとても自信に満ちた笑顔を浮かべている。だが綾城大先生によれば、誰も彼もをファンとして受け入れることができる理想主義とは、ビッチと付き合う童貞のような理解ある彼くん的仕草なので、ミランは結局童貞のままである。だが綾城は分別のある女なので。
「そうね。あなたはこれからは非童貞女(童貞を捨てられたとは言ってない)と名乗りなさい。それくらい素敵なライブだったわ。打ち上げのスタートダッシュには素晴らしいものだったわよ」
「ふふふ!だよね!ボクは非童貞女なんだよ!あはは!あははは!」
童貞女も謎いが非童貞女はもっと謎い。むしろ何が出来たら女は童貞を捨てられるんだろう?すごく興味深いです。
「じゃあ全員揃ったし、そろそろ始めようか!全員グラスを持ていぃぃ!」
「「「うぇーいーーーーーーー!!!」」」
俺は立ち上がり、シャンディガフの入ったグラスを掲げる。綾城はワイン、楪は焼酎、ミランはストレートジンのグラスをそれぞれ掲げ。
「ミランお疲れさまでしたぁ!おめでとう!!かんぱーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」
「「「かんぱーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーー」」」
全員で乾杯をし、それぞれがそれを一気に飲み干す。
「「「「ふぁああああああああああああああああああああ!!!!いいぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」
ここはクラブ。五月蠅くしたって誰も俺たちをかまったりしない。DJの爆音がすべての喧騒を流し去ってくれる。やっとアルコールの入った俺たちはそれぞれにハイタッチして、テーブルに並べた様々な酒を次々と飲んでいく。そしてアルコールは俺たちに素晴らしい一時の楽園を見せてくれたのだ。
***皆さんアルコールが入っております!キャラがぶっ壊れてますよ!ひゃははは!!***
「葉桐のあの顔最高だったよ!!ボクはあの顔だけでテキーラ3杯はいけるねぇ!!テキーラぁあああ!」
「だよなぁ!俺もあいつの顔を思い出すだけでマジでテキーラぁあああ!!」
おれとミランは、5やたらと気取ったポーズを取りながら、500円玉を親指で弾いてスタッフに渡す。そしてスタッフもまたかっこよく500円玉をキャッチして、すぐさまテキーラのショットを二つ出してきた。俺とミランは腕を組んで、互いの手のグラスからテキーラを飲みさせ合う。心地よく喉の灼ける快感がとっても気持ちいいです!
「綾城さん!私もあれやりたいです!」
「いいわねぇ!でもあたしはあれね!ごにょごにょ」
「きゃーーーーーーーーーー!やりますぅ!!テキーラ一つぅ!!」
楪はテキーラを頼み、そのショットグラスをなんと胸の谷間に挟み込み、綾城はそこに口をつける。
「ひゃははは!バカ!マジで馬鹿!!ひーははは!!」
俺はスマホでその様を動画に取る。素面になったら絶対に弄ってやるんだ!
「数学科のくせにまじでばかwwwww!!ボクもちゅーちゅーしたいです!!!」
綾城と交代して楪の谷間のグラスからテキーラをチューチューするミラン。だからって童貞臭いんだな!
「もう2人とも!赤ちゃんですかぁ!ていうかわたしこれじゃぁ飲めないじゃないですかぁ!!あはは!あはは!」
テキーラは最高のお酒です!てきーら!てきーら!てきーーーーらーーーーーー!。
***皆さんテキーラ入りました!!テキーラ!***
ミランが楪にダンスのやり方を教えていた。俺と綾城は隣でベリーダンスを踊っている。
「いいかい?重心は気持ち低くして」
「それって具体的にはどれくらいですか?!ちゃん厳密な定義で答えてください!!この世界はすべて数字にちゃんと変換できるんですよ!!」
2人は重心を低くしながら何かを言い合っている。どうせ馬鹿な話だ。俺と綾城はベリーダンスをさらにベリーにしていく。
「出たぁ!理系ハラスメントだぁ!ふぉう!だからあれだよ!あれ!気持ちなんだって!低い気持ちなんだって!」
「低い気持ち…。アハハ…わたしなんて…オタサーの姫にもなれない程度のぶちゃいくなんで…ははは、はははは!」
楪は陰キャな引き笑いを浮かべたたと思ったらすぐにハイな笑顔を浮かべる。俺と綾城はベリーダンスからヘッドバンドに切り替えた。
「それ陰キャ!低いんじゃなくて!暗いやつぅ!!ひゃはは!いいかい!腰はこうだよこうだよ!腰をsin,cosみたいなカーブ意識して魅せつけるんだよ!!!」
「あー!わたしの数学ネタ取った!私のキャラ取らないでくださいィ!わたしから数学とったらおっπしか残んないんですよ!3.1415P!!!3.1415P!!」
「そこはゆとり仕様でいいでしょ!3p!!3p!!3p!」
やっとこさ楪も腰の振り方がわかったらしい。2人はリズムに合わせて腰を振ってセクシーに踊る。ついでに楪はおっぱいも揺れる。ところで3.1415Pってどんなプレイ?小数点以下の人は何者?俺と綾城は社交ダンス風ヒップホップベリーダンスを踊った。せかいはこんらんしている!!
***世界がグルグルと回るような酔いっていいよね!***
綾城がどこからか扇子を手に入れてきて、女子しか立ってはいけないお立ち台のところでソロダンスしてた。男たちがめっちゃ群がってたがクラブのルールで触れるとアウトなので、みんな触らず近くで踊るだけ。
「バブルよもう一度!!国民一人一人に扇子を配ってバブルな扇子ダンスをやりましょう!ボディコン!肩パットスーツにしゃぶしゃぶ!ウーパールーパー!スキー!DJ!懐メロプリーズ!!」
ザ綾城ゾーンって感じな空間が出来てた。そこだけ懐かしきバブルな日本の風景があったように感じられた。地雷系とかいう現代の闇ファッションを好んでいるくせに、昭和好きなのか?!あいつまじで謎である。そろそろあいつのことをもっと深く知りたいとそう思ったのだった。
***恒例のネタ行ってみようか!!***
夜も3時を回ってきたくらいの頃だ。俺たちはテーブルに戻ってちびちびと酒を愉しんでた。さっきからやってた馬鹿なことを振り返る時間がとても愛おしい。
「人生で初めて陽キャになった気がします!とても楽しかったです!!」
「そうね。楽しかったわね。楪は成長したわね。流石あたしの弟子ね。ほめてあげりゅぅ」
綾城は楪を胸に抱きよせてナデナデしてる。
「そういえば美魁も授業で男に声をよくかけられるんじゃない?」
「あー。うん。すごく多いね。困るんだよね。あはは。僕けっこう授業は真面目に受けてるから邪魔で仕方ないんだよね。あいつ等のせいで女子たちにもなんか睨まれがちだしね。アハハ…いやわりとシャレにならないな…」
ミランさんが若干暗い顔を浮かべる。そんな顔を見ながら綾城はニチャニチャとした実に悪そうな笑顔を浮かべる。
「そんなあなたにお勧めの商品がこちら!常盤奏久くん!マフィアがおぉおおん!!」
まるで可愛いライオンのように吠える綾城。そして胸に警報音のなる俺。
「美魁!すぐに常盤の膝の上に腰掛けなさい!そして腕をそいつの首に絡めて!!いますぐに!!」
「う、うん!?わかった。えーっと失礼します…!」
ミランはおそるおそると俺の膝の上に腰掛けて腕を俺の首に絡めてくる。膝のお尻の感触と俺に触れる胸の感触が柔らか気持ちいい。
「いいわね!どう楪?!いい感じでしょう?!」
「あーこれはいいですねぇ!ベガスで大勝ちした一匹狼アウトローとバニーちゃんみたいな感じでとてもグーですねぇ!!エロエモです!!」
俺の属性がドンドン盛られていくよ。俺って頑張って大学デビューした彼女が出来たキョロ充位のポジションになるのが関の山だと最初は思ってたのにどうしてこうなった?
「美魁ちゃぁん!ほらほら!エッチな顔して!はやくぅはやくぅ!役者魂!見せてみろぉ!きゃははは!!」
スマホを構えた綾城はミランを煽る。
「言ったねぇ!!魅せてあげるよ!!ボクの演技を!!カナタくぅううん!しゅきぃぃぃあへ!」
ミランは媚び媚びでとってもエッチな発情した笑みを浮かべる。なのにあいも変わらず清潔感のある何処か矛盾しただけどとても美しい笑みを浮かべた。これが天決先生の見込んだ才能である!
「いい顔よ!はーいちーずぅうううううう!」
パシャリとそのミランの笑顔と俺の姿があっさりと写真になってしまった。
「この写真で近寄る男たちを追っ払いなさい。ボクはこの人のダーリンなの!ってね!!!」
綾城さんは俺のことを何だと思ってるんだろう?
「いいねそれ!ボク、その写真ガンガン使わせてもらうよ!!アハハ!!」
ミランは写真を見ながらケラケラと笑う。セフレ→セカンド→ダーリン。基準がよくわかりません!
「え?ダーリンって女の人にも使えるんですか?女の子ならハニーじゃないんですか?」
楪が首を傾げている。俺もそう思うのだが。
「ダーリンは女への呼びかけにも使うのよ。これだから理系は困るわね!!ロマンがないわロマンが!!きゃはは!」
「文系ハラスメントだ!!!ふわっとした雑学許せない!!数学を勉強しろ!三角関数を知らない人間なんて大嫌いだー!」
綾城の煽りは理系の俺たちには大ダメージだった。これだから文系は!理系と文系はきっと相いれないのだ。
「さて、そろそろ出ようか。閉店は4時くらいだけど、それだと混んじゃうんだよね。その前に出ないとね…チラ」
「そっかーでなきゃ駄目なんですかぁ。すごく楽しかったなぁ。わたし、とっても楽しかったなぁ。でもこれでお終いですかぁ。ちら」
「そうね。全ての物事には終わりが来る。だけどきっと思い出は残るのよ。でもまだこの熱は消えない。そう消えてはくれない。ぱんちら」
女子たちが俺の方を何か期待するような眼差しを向けている。仲間になりたいのかな?もう仲間だよ。まあ要は二次会を期待しているのだろう。始発まで時間はあるし。
「そうだな!踊ったし、次は歌うか!カラオケにでも行こうぜ!」
「「「いええええええええええええぃ!!」」」
正解だったらしい女子たちは楽し気にハイタッチしてた。こういう時は男がリードしないとね。そして俺たちはクラブを出た。
***問題です!円山町の名物を答えなさい!!ヒント、カラオケ!***
渋谷の街は坂だらけだ。アップダウンがなかなか足にくる。コンビニで持ち込み用の酒を買った後、俺は缶ビールを飲みながらカラオケの方へ歩いていった。女子たちがなんか酒を飲みながらスマホを見て、何かお喋りしていた。
「カラオケ屋を調べたらね。これが…」
「あ!そう言えばそうだ!たしかにカラオケもあるって聞いたことあるよ!」
「ひぇええ!!マジですかぁ!?でもこの人数でも、え?複数ってオーケーなんだ。3.1415P?」
「それに今からカラオケ行っても正味二時間くらいしかいれないわよね?それははなはだわろしじゃない?いとおかしく時間をすごしたいわ」
「文系ハラスメント!たしかに六時で終わりらしいですし、でももっと歌いたいですよね」
「それに部屋も綺麗だし、ソファーもベットもあるし、あり?」
「ありですねぇ」
「ありよね」
「「「ありありありありあり!!」」」
何あの魔女会議?なにを決めちゃったの?そして楪がとてとてと俺の前まで歩いてきて。
「わたし、すごく疲れました…休憩したいです…!」
さらにミランも俺のそばにやってきて。
「ボク、落ち着ける場所に行きたいなぁ」
そして綾城が俺の肩を叩いて。
「さきちょだけ!さきっちょだけ!天井の染み数えてるうちに終わるからさぁ!!なぁなぁ!!なんもしないって!最近はあれだよ!映画も見れるんだってカラオケもあるし!ちょっと高い満喫みたいなもんだって!って感じどうかしら?」
とラブホの看板を見ながら宣い始める。ああ、まあ、ありますよねカラオケも。
「ほんとにカラオケだけ?なにもしない?」
「しないしない!大丈夫!何もしないから!ね?ね?いいでしょ!?」
綾城はニチャニチャと笑ってる。楽しくて仕方が無さそう。下ネタ女王ならラブホには興味があるだろう。
「カナタさん!!わたしは!今日!トラウマを乗り越えます!!」
そっかー楪は自分の力でトラウマを乗り越えちゃったかぁ!強い子になったねぇ。
「これはあれだから!役作りの一環だから!!別に何もしないって!大丈夫だよ!あれだから!こんなのただのカラオケルームと変わんないよ!アハハ!」
ミランさんの必死さが童貞臭い。やっぱり童貞を卒業できてなかった。いとあわれなりけり。
「まあ、今からカラオケ屋に行ってもあんまり歌えないしな。何もしないならここでもいいか」
女子ーずは無言でハイタッチをキメている。そんなに楽しみなのかラブホテル。まあ陽キャのグループとかは終電逃したときにラブホに泊まったりするって聞いたことあるし、そんなもんかもしれん。俺たちはそのまま近くのラブホに入った。とくに咎められることもなく部屋を取り、無事に部屋に辿り着いてしまったのである。…なんぞこれ?




